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【米国株】買いチャンスの判断

突然、株価が急落した時、どう判断すれば良いのでしょうか?

株価が下がっている場面では売りの圧力の方が強いです。その時は人々を売りに殺到させるそれっぽい理由が必ず存在しています。その理由の背景を分析して、これは大した理由ではないということを見抜けないと下落時に株を買う向かうことはできません。自分の分析に間違いがあれば大ヤラレになるリスクも伴いますが安値で株を買えるチャンスでもあります。周りのみんなが慌てている時ほど冷静に「何が起こっている?」と頭を働かせるのです。

【株価急落時の動き】
株価急落

①下落の理由を推定する

②下落理由の背景事情を分析する

③自分の考えをまとめる

④考えを点検する

投資行動(売り、買い、静観)

どの段階でもミスがあれば投資行動は失敗します。

①まず、下落理由の推定から始まります。金利や景気に関する報道があったか調べます。同業他社の決算ミス、ライバル台頭といった企業業績への投資家の見方に影響を与えるような報道があったか調べます。どの株が下がっていて、下がっていないかも重要です。同業種全体が下がっているのか、その株だけ下がっているのかは下げの理由を考える手がかりになります。どのタイミングで下げ始めたかも重要な情報です。この報道があった時は動かなかったが、こっちの報道があって下げ始めたなら、これが原因かという推測ができます。何の報道もなかった、だから理由が分からないということも重要です。その場合は買われ過ぎた株が売られたといった単なる需給面での理由かもしれません。

②下落理由に見当がついたなら、その背景事情を分析します。本当に深刻なことなのか判断します。関係がありそうな一次情報(事業内容、顧客事情、決算数字、決算カンファレンスコール)にあたります。

③自分の考えをまとめます。下落理由はこれ、そう判断する根拠はこれ、背景事情はこれ、根拠となる情報はこれ、結論はこれという風に書き出します。別に頭の中で完結できるなら書き出さなくてもいいです。

④全ての項目で考えがまとまったら、何回も自分の考えを点検します。「買いチャンスであって欲しい」「自分の考えがあっていて欲しい」「深刻な問題であって欲しくない」といった欲が常に判断を歪めようとしますが、失敗すれば大事故になるというリスクを意識して自分の考えの根拠を一個ずつ検証します。決算ミスしているのに、「売りであって欲しくない」という欲から、この数字は良いから決算は良いと判断する、投資ストーリーが有望に思えるから売りではない、といった判断を歪めることは最悪です。結局損するのは自分です。

株価下落時に買い向かうことはみんなとは逆方向に自分一人だけ動くことです。株価は直ぐには立ち直りません。たいていしばらくはぐわんぐわんに動きます。買い向かっても直ぐに利益は乗り始めません。数%〜10%くらいの含み損を食らうかもしれません。その時に狼狽して売ってしまうと何の意味もありません。それを防ぐためにしっかり自分の考えを検証して、自分が納得するまで考えるのです。そして考えの根拠は自分の憶測ではなく、再現性のある投資の経験則や一次情報であるべきだと個人的には考えています。僕は自分の憶測はお金をベットできるほど信じられませんが、そういったことは信じられるからです。

最後に最近の事例を取り上げてみます。

【事例1】NVDA

株価が上昇し始める前からNVDAは良い決算を出していました。しかし、株価は上がらずグダグダしていました。中国向けの売上が米国の規制のせいで消し飛んでいることが問題視されていました。しかし、決算では中国向けがなくても巨額の利益を上げていましたし、中国の売上を見込まないガイダンスは市場予想を大幅に上回っていました。中国の件は売り理由にはならないはずです。

もう一つの大きな理由として金利がありました。当時長期金利は5%を超え上昇していました。市場では更なる利上げを予想する動きもありました。しかし、インフレ率は下げトレンドを継続しており、根っこの生産者物価指数はほとんどインフレ終了を示す数値でした。再びインフレがオーバーシュートする確率は高いとは思えませんでした。いずれ金利の問題も解決すると考えられました。

つまり、市場参加者が心配する二つの理由はどれも深刻なものではなく、NVDAは買いだと判断できました。

〈売られた理由〉中国向けのビジネス規制、金利上昇
〈売り理由への反論〉中国なしでも決算クリア、インフレ鈍化
〈買い根拠〉決算クリア、鈍化傾向のCPI、PPI

【事例2】DUOL

DUOLは良い決算を出していましたが、ゴールドマン・サックスが売りに格下げしたことを受けて激しく売られました。そのレポートは「グーグルの英会話学習サービスによってDUOLのビジネスに下方圧力がかかる」という内容でした。ChatGPTを活用した英語学習法の登場もDUOLが投資家から不安視される理由となっていました。しかし、DUOLの学習サービスはゲーミフィケーションを取り入れたモチベーション維持に特化したものであり、その他多くの学習サービスのような無機質なものではありません。学習においてやる気の維持が一番ネックであることは多くの人が受験勉強などで痛感していると思います。グーグルは消費者との接点は多いですが、DUOLの強力なライバルとはなり得ないと思えました。また、DUOLでは英語の文法・文章作成・発音を学べます。グーグルの英会話学習サービスが登場したとしても消費者は両方使うのではとも思えました。

そもそもDUOLでは英語学習者が4割強と最も多いですが、その他の言語学習者が半分以上存在します。途上国の人々は英語だけでなく複数の言語も一度に学びます。その点、DUOLのプラットフォームは学習者のニーズにマッチしています。グーグルが登場したとしても彼ら彼女らがDUOLを解約するとは考えにくかったです。

ゴールドマン・サックスのアナリストの意見は実情に合っていないと判断して買い向かいました。

またChatGPTを活用した英語学習法も中身を見てみると学習意欲が高く、ある程度英語の知識を持った人がさらに効率的に英語を学習するといったものであり、ターゲット層がかなる限られていると思われました。

〈売られた理由〉格下げレポート、ChatGPT
〈売り理由への反論〉グーグルやGhatGPTは強敵とならない
〈買い根拠〉決算クリア、DUOLの学習サービスの特徴、学習者構成、学習者の実情

【事例3】S

コンセンサス数字の間違いによってSは決算をしくじったとの誤解が広がり株価は急落しました。しかし、修正後の数値では決算クリアとなり、Sに問題がないことは明白です。決算クリアなら売りとはなりません、買い向かいました。

〈売られた理由〉決算ミス
〈売り理由への反論〉決算ミスではない
〈買い根拠〉バロンズの報道(FactsetがSのコンセンサス予想数字を修正)

【失敗事例1】RCL

クルーズ銘柄のRCLはコロナショックで暴落しましたが、2021年にはワクチン普及で盛り返してきました。その最中の急落で買い向かいましたが儲かりませんでした。当時は急激な経済再開で原油価格が上昇しており、燃料費高騰がクルーズ企業のEPSに陰を落としていました。予約数の急上昇に目を奪われて原油価格高騰の影響を軽視していたため失敗しました。つまり、なぜ下げているかという分析が甘かったため、投資は失敗に終わったのです。原油価格が落ち着いた23年末からRCLは急騰しました。原油が株価のネックだった証拠です。

【失敗事例2】MDB

MDBは前回の決算で良い数字を出してきましたが株価は急落しました。これは来期の数字が投資家から不満に感じられたためです。しかし決算コールでは、これは会計上のアヤで数字が低く見えるだけであり、ビジネスの勢いは強いとアナウンスされました。これは買いだと判断して買い向かいましたが、最新の決算で数字をミスしました。AIの恩恵が出始めるにはあと1年かかることも言及されました。これは投資家が事前に知りようの無かったことです。理詰めで考えた結論でも、知りようのない情報が飛んできて計算が狂うこともあります。これは仕方がないことです。

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