君の寝顔

僕はいつも凛より早く起きている。
この寝顔を堪能して幸せに浸るためだ。
「本当に綺麗だなぁ。」
起きてる時は険しい顔も寝てる時はあどけない少女みたいな顔で眠る。
短めに切り揃えられた髪。
閉じられた綺麗な瞼に長い睫毛。
スラっとした鼻筋。
思わずキスをしたくなるような艶やかな唇
ひとたび触れればそのまま離れたくなくなる綺麗な肌
「本当に君が大好きだ。」
全てが愛おしい最愛の彼女。

「…起きてる時はずっと尻に引かれてるからなぁ…」
俺はこっそり呟いて苦笑する。
それはそれで楽しんでいるから不満があるわけではないけども。
こういう時ぐらい可愛い君を独り占めしてもいいでしょう。
僕にしか見せないその顔を、朝のひと時だけでも楽しみたい。
「君が朝に弱くてよかったよ。」
でもそろそろ起きなきゃ大学に遅れてしまうから起こさなければいけないな。
幸せなひと時は儚く短い。
さて。いつもの日常を君と楽しむことにしよう。
僕はいつもの儀式のように凛の額にキスをする。
「起きて。そろそろ時間だよ。」

……………………


私はいつも同じ時間に目が覚める。
体内時計がしっかりしてるせいかいつも朝7時には起きてしまう。
しかし講義の時間までには少し早過ぎるのでいつもは二度寝してしまう。
でも最近は二度寝ではなく違う楽しみが増えた。
優紀の寝顔を見ることだ。
もみくちゃになって寝癖の付いた髪
だらしなーく空いた口
ギュって私の裾を握ってる手
はだけた上着から見える鎖骨
気持ちよさそうに寝てる幸せそうな顔
その全てが愛おしい。
…実家の犬もこんな感じに気持ちよさそうに寝てたかな?ってふと思い出し笑みが溢れる。
私にしか見せないこの顔をいつまでも独占していたい。
このまま時が止まってほしいとも思う。
いつまでも、いつまでもこの至福のひとときが続きますように。
でもそんな時間も終わりが来る。
そろそろ目覚ましが鳴って彼が起きる頃だ。
…ここでもう一つの楽しみが始まる。
私はこのまま目を瞑って彼が起こしてくれるのを待つ。
彼が私の寝顔を見て堪能してる姿を楽しむのだ。
私が眠ってる事を良いことに恥ずかしくて言えないようなことも言ってくれて嬉しくなる。
さぁアラームが鳴る。
私は目を瞑った。

「本当に綺麗だなぁ。」
当たり前でしょ。貴方のために努力してるんだもの。

「本当に君が大好きだ。」
私もよ。直接貴方には恥ずかしくて言えないけど…本当に大好き。

「…起きてる時はずっと尻に引かれてるからなぁ…」
…むぅ。それは貴方がシャキッとしないからよ!もぅ…!

「君が朝に弱くてよかったよ。」
…残念でした。朝は強いよ私。
今からネタばらしした時の驚く顔が楽しみだわ。
…まぁそれはまだまだ先の話でしょうけど。

「起きて。そろそろ時間だよ。」
…いつもそうやってカッコよくキスしてくれたら良いのに…
本当にもう…
君が起きてても男らしくなるまで尻に引いてやりますよーだ!バーカ!

そうして二人の朝がいつものように始まる。
慌ただしくも幸せな毎日が。

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