死が二人を別つまで(中編)

現場は路地裏の奥。
いかにもな場所で行われたようだ。
もう既に片付けられていて黄色いテープが張り巡らされている。
「さてさて。なにかしら手がかりがあるかな?」
「あるわよ。私がいるのよ。さぁあんたの力を貸しなさい。」
「これ疲れるから嫌なんだがなぁ…」
「そうしないと始まらないんだから早くしなさいよ!」
「分かったからそう焦んなって」
アイリは何か呟き俺の手を握る。
そうするとアイリの周りの空気が変わる。
急に空気が冷え始め、目の前の空間が歪み始める。
歪んだ空間から一人の女性が歩いてくる。
虚げな目をしている。
俺はその女性に依頼された書類に添付された様々な容疑者の写真を見せる。
女性はほとんどの容疑者に首を横に振っていたが、ある人物に対してはコクリと縦に首を振る。そして怒り悲しみ色んな感情をない混ぜにした表情をしている。
「なるほど。こいつか。辛かったろうに。ありがとうな。仇は打つよ。」
女性は少しだけ朗らかな表情をして歪みの中に戻っていった。

…これがアイリの力
死を感じ取り、死者との対話を可能とする。
とは言ってもこちらの質問に首を振る程度の意思疎通しか出来ない。
まぁそれだけでも国からの情報などがあれば有益な情報を聞き出せるわけだがな

…今の世界は様々な超能力で溢れてる。
発火能力に念動力、身体強化、ゴーレムを生み出したり、人を洗脳したり、その能力は多岐に渡る。
発動する条件は能力者同士で接触すること。
そのエネルギーは…手を繋いだ相手の生命力。
これを持つものは天性の物で持てる者と持たざる者で別れている。
持てる者は国が保有する協会に保護…いや徴収され軍で働く事を余儀なくされる。
そこに拒否権はない。
そのため能力者は全て短命で終わる。

さてこれで標的は判明した。
後は抹殺するのみ。
ここからは俺の仕事だ。


…「はぁ!はぁ!」
なんで私がこんな目に。
ただ今日は仕事が少し遅くなっただけなのに。
少しでも早く帰ろうとショートカットしようと人が少ない道を選んだがために。
こんな化け物に襲われ…
「ひぃ!」
化物が目の前に飛んできた。
さっきまで後ろにいたのに…
「やめて!助けて!」
化物は私を追いかけ回して楽しんでるかのようににじり寄ってくる。
…まだ遊び足りないとでも言いたげな行動。
徐々に恐怖で心がすり切れていく。
私はまた駆け出した。
弄ぶかのように追いかけ回される。
人気のない場所に追い込まれていく。
疲れからか何かにつまづき派手に転ぶ。
私の心が耐えられれなくなり、立ち上がれなくなる。
化物は満足したのかゆったりとこちらに向かう。
あぁ…私の人生こんなところで終わるのか…
もっとやりたいこともあったのに。
誰か助けて…
化物が襲い掛かる。
恐怖に体がすくみ目を閉じた。
しかしその瞬間水のような液体が自分に降り掛かる。
私は目を開けるとそこには一人の男と化物が斬りつけていた。
私に飛んだのは化物の血が飛んでいたのだ。
「今のうちに早く逃げろ」
私はその男の言ってる事が理解できず呆然と見上げる。
逃げ…る…?
「その先に軍の駐屯所がある。そこで助けを求めろ。行け!」
私はやっとそこでハッとなり。駆け出した。
心の中で助けてくれた人にお礼を言いながら。

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