橙色に染まる夕方、手を繋いで

夕暮れ時。
部活帰りに手を繋いで君と帰るのがここ最近の日課だ。
付き合ったばかりでお互いに少しばかり緊張している。
この面映い感じも悪くない。
「なぁ凛。今日もどっか寄ってこうぜー!少しでいいからさー!」
「最近日が暮れるの早いからダメよ。先生からも早く帰るよう言われてるでしょ。」
「それはそうなんだけどさー。…少しでも一緒にいたいし。(ぼそっ)」
「なに?なんか言った?」
「…なんでもない」
(もっと大きな声で言えば付き合ってあげるのに。素直じゃないんだから。)
「それじゃあ暗くなる前に帰るわよー。優記。」
「はいよー。」
自分の気恥ずかしさから素直になれず、本心を伝えられないまま帰り道を歩く。


何か話題を探して話すのも良いし、このまま無言でゆったり歩くのも悪く無いと思いながらふと凛の横顔が目に入る。
「それにしても凛って夕焼けが映えるな。」
「どうしたの?急に。」
「いやなんというか…肌が割と色白じゃん?夕焼けに照らされて頬が赤く染まってるのがこう綺麗で…かわい…くて…」
何も考えずに話してたけど恥ずかしい事言ってる事に気づいて尻すぼみに声が小さくなった。
しまった。存外に恥ずかしいぞこれ。
「…!?」
あっ。今度は耳まで赤くなった。
「ありがと…」
「あぁ…いや…うん…」
「…あっ。寄るところ思い出したからちょっとだけ付き合ってもらって良い?」
「えっ!うん!幾らでも付き合う!」
やった!これで少しでも長くいれる!
「一緒に入れるのが長くなって嬉しいって顔に出てるわよ?」
「!?…そんな事ない。」
「分かりやすいんだからそんな嘘つかなくていいのに。ダンディになるとか言ってたけど程遠いわね。」
ふふっと君は小さく笑う。
…いつかかっこいい大人になって見返してやるから覚えとけよなー…むう…


そんなこんなで他愛のない話をしながら彼女に引っ張られながらついて行く。
脇道を抜け、階段を上り、ちょっとした見晴らし台にたどり着く。
「こんな所あったのか。」
「夏になると花火が綺麗に見れるのよー。ちょっとした穴場スポットなのよ。」
「いいなぁ。絶対見に行こうぜ。浴衣姿とかめっちゃみたい」
「めんどいからやだ。」
「えー。」
(まぁ本当は準備してるだなんて言ってあげないけど。当日顔真っ赤になる所楽しみにしてるからね。)
「ほら!ここからの景色を堪能しましょう。風も気持ちいいし」
「ちょっ!そんな引っ張らなくても行くって!」
凛にぐっと引っ張られ柵の前まで連れてこられる。
眼前には自分の住んでる町が橙色に染まり、見慣れた町なのに幻想的な不思議な感覚に襲われる。
「綺麗だ。」
「でしょー!大切な人ができたらここでゆっくり見たかったの。」
不意に溢れた大切な人という言葉にドキッとしたのをバレないように平静を保つ。
「このままのんびりとずっと見ていたいなぁ。」
「暗くなるとお母さんに心配かけるから程々ににしなきゃダメ。」
「だよなぁ。…そろそろ行くかー。」
振り向きざまに凛を見る。
日に照らされたせいなのか少し頬を赤くしている彼女が見える。
彼女の雰囲気に、思わず口づけを交わす。
「…この雰囲気出すと毎回してくれるね。」
「そりゃあなぁ…彼氏だし彼女のしたいことなんざ分かるんだよ。」
「ふふっ!偉い!おかげで大変良い気分になりました!」
「それなら良かったよ」
俺もしたかったからね。
こんなこと言ってやらないが。
まだ気恥ずかしさが残るけど悪くない気分だ。
しばらくはこの面映い気持ちと共に彼女と過ごしていこう。
この気持ちも忘れずに大切にしていきたい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?