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乾燥機付き洗濯機を買ったら文章力が落ちた話

2021年はインプットの質が変わった一年だったと言える。

今思えば、きっかけは一年前の正月に導入した乾燥機付き洗濯機だったのかもしれない。

洗濯機がインプットにどう影響するんだと思うかもしれないけれど、まぁちょっと聞いてほしい。

オンオフの切り替えが難しいフリーランスになって9年。
いつも仕事をしていたい私に完全なオフというものはほぼなく、それでも仕事が少なかった時には映画や本や展覧会などいろいろなところから刺激を受けていたように思う。
ありがたいことにここ数年は沢山の依頼をいただけるようになって一年中閑散期というものがなくなり、洗濯物を干したり畳んだりする時間が唯一TV画面を観る時間だった。

ところが、その唯一の時間もなくなった。

昨年のお正月に、全自動乾燥機付き洗濯機を買ったからだ。

以来私は本来かけない方が良いとされている物にまで何でもかんでも乾燥機を使い、「洗濯物を干す」というタスクは完全に生活の中から消滅した。

ほぼ同時期に導入した食洗機と床拭きロボットにも助けられて家事は格段に楽になったけれど、引き換えに朝ドラも良質なドキュメンタリーも集中して観る機会がなくなった。

代わりに増えたのは仕事をしながらできるインプットだ。

YouTube、Podcast、Voicy、radiko。
どれもほぼ耳しか使わないコンテンツを中心にハマっていく。
去年の2月から始めた毎朝5:55からのclubhouse朝活も、編集作業をしながらできる音声メディアだ。

音声メディアの手軽さを知ってしまうと仕事の時間だけでなく、移動中もジムでのランの時間もついつい摂取するようになる。

まとまった時間と視覚、集中力が要求される「作品」は心と時間に余裕ができた時に、と後回しにしていった結果、Amazon prime videoのウォッチリストと、TVの未視聴録画、買うだけ買って読んではいない「積ん読」本が溜まっていく。

最近ハマっているYouTubeチャンネル「ゆる言語学ラジオ」(Podcastバージョンもある)の中で「コンテンツ奴隷」というミームを提唱していたのだけれど(#71 意図せずメタ認知が暴走する悲しき怪物【ミーム提唱委員会2】)、「生活の中で何かしら常にインプットしていないと不安になる」「でも集中力の必要なものは疲れるから頭を使わないコンテンツをめちゃくちゃ摂取してしまう」というこの状態がまさに今の私だなと、おおいに共感してしまった。

困ったことにこの状況は、単に観たいはず読みたいはずのものがいつまでも摂取できないというだけでなく、明らかに自分の能力面に悪影響を及ぼしている。

手軽に娯楽の得られるコンテンツばかりに触れるようになって、頭脳的に疲れることを後回しにする癖が大きくなり、集中してまとまったものをアウトプットする力が極端に衰えたのだ。

地域新聞で二年半の間連載を担当していた月1回の写真コラムのお仕事が休刊により無くなったのも大きい。毎月締切に苦しんでいたけれど、無くなって思うのは締切の有り難さだ。
思えばこの一年、過去あんなに力を入れていたブログを13本しか書いてない。しかもそのうち3分の1はコラム部分をほとんど含まないお知らせメインの記事だ。

書いたものも何かしっくりこない。自分のものとは思えない借り物の言葉しか浮かんでこない。

ああ、これは、私の中の言葉の泉が枯れかけているのだな。

もっと、ちゃんとしたインプットをしなければいけない。

それは、映画を観るとか読書をするとか展覧会に行くとかの疲れるけれど良質なコンテンツに触れるという意味だけではなく、気分の赴くままに旅行するとか、子どもたちと思いっきり遊ぶとか、友人と心ゆくまで話すとか、そういうあらゆる体験にどっぷりと心身をうずめることを含む。

「イビピーオ」だ!
(アマゾンに暮らすピダハンという人々の言葉で「直接体験」を表す概念。ゆる言語学ラジオ#35 「吉幾三的な言語と、その本質「イビピーオ」の幸福度がすごい【ピダハン後編】より)

そう、洗濯機で浮いた時間は、そういうことに充てなければいけなかったのだ。

このことに私は、2021年12月31日の23:50頃、年内に総括ブログを書かなくてはとWord pressの編集画面を開きながら、文章が全く湧いてこない状況に絶望しながらたどり着いた。

私の結論はこうだ。

2022年は全身全霊で体験する。

「ながら」はほどほどに、仕事も遊びも一人の時間も、その瞬間は目の前の一つのことに集中していきたい。

外に出たら光の暖かさを堪能し、電車に乗ったら車窓に目を向け、ジムでは僧帽筋が収縮するさまを頭に思い描く。

まずはそんなところからでも一歩ずつ。

来年の今頃、この文章をどんな気持ちで見返すことになるのかは今からの私次第だと思いながら、今日も洗濯機にラグを詰めて回す。

さぁスマホを置いて、今から何をしようか。

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