経営者と営業マンと商売人

「御社には商売人がいない気がする」
「うちの社長は商売っていうか、どっちかっていうと経営のほうに燃えるタイプっぽい」
「元コンサルだもんね。商売人ぽいのって、●●さんとかかな」
「あの人は、どっちかっていうと広報マンというか」

なんて話を、以前働いてた職場の友人とした。

うまくいえないんだけど、商売には経営という面と、営業力というか「売っていく力」みたいなモノがあって、ほかにも商品開発とか、交渉とか、いろいろな力を使って進めていくゲームだと思うんだけれど。

その時に、同じ会社を作ってビジネスをやっている人にも、「経営者」視線の人と「商売人」視線の人がいるっぽいな、と思った。さらに「営業マン」というポジションの人もいる。

一番わかりやすいのは営業マン。とにかく売る。たくさん売る。売り力高い。かなり高い。ハイプレッシャー。
売るのが目的なので、利益率とかそれを売ると結果会社がどうなるのかとかは、どっちかというと二の次。
売れればよい。売りやすいのがよい。いい商品であることより、売りやすい商品であることが重要。
売上に執着するので、会社としてはうまくいくと思う。
売上がなくては話にならないから。そういう意味では生命力高め。もともと営業がうまくて、独立して会社はじめましたっていう人が結構多いから、ビジネスやってる人の中に占める割合は高いような気がする。

同じ感じで経営者というのは、それこそビジネススクール出身みたいな、経営とは、マネジメントとは、みたいな理論を学んで、最初から「経営するための会社」を作るようなイメージで起業してしまう感じなのかも。
こちらも正統派ビジネスエリートなので、メインストリームとなっていると思う。それにそういう人が書いたハウツーが経営本になっているから、何気なくみんなそれを目指してしまっているとも思う。
営業マンは経営者スタイルに結構憧れている。
経営者は営業マンの単細胞ぶりを嫌いながら、それができない自分を少々恥じている、みたいな図も見えたり見えなかったり。

このふたつが、ビジネス現場の多くを占めているような気がしている。

だけど、私はどうもそういうメインストリームから外れたところで、「とりあえず何とかしなきゃ!死ぬじゃろ!」という感じでビジネスを叩き上げたので、目指すべきポジションは「商売人」に設定していた。

今更ビジネスノウハウやマネジメントを学んでいる余裕はないし、マネジメントする対象もそもそもない。だから「経営者」スタイルは却下。時代がいかにもしドラとか言ってドラッガー最高とか言っていても、そんな夢を見ている暇はなかった。

かといって、営業マンになって押せ押せに行く事も、できなかった。
だって、営業かける先がないんだもん!
口説き落とせば何とかなるとかいうのは、可能性がある先があるからやる訳で、こっちは誰に何を売っていいかってところからやり始めなきゃいけないんだよね。それに営業かけてまわるだけの体力はこっちにはない。死にそうなんだからね。崖っぷちを甘く見るんじゃない。

という事で、既存のビジネススタイルが選べなかったことから、もっと古いスタイルに戻そうと考えて「商売人」というスタンスを発見した、という訳です。

この商売人というのが、実にしっくりきまして。

ビジネスって、会社があって、そこで社員として働いてスキルを磨いて、そこからビジネスを創造するという順番で始まっていることが多いのだけど、それのよくないところは、総合的な視点が欠けてしまいがちという事じゃないかと思う。

だから、経営者とか営業マンとか優秀な生産者(IT技術者やデザイナーとかもここにはいるかも)というひとつの強力な武器を得るだけで、そこそこビジネスができるのだけれど、どれかが欠けている。
大抵、経営者スタンスを持ち合わせている人がほどんどだとは思うんだけど、それぞれを別パーツでとらえてしまうっていうのは、違和感がある気もする。

ビジネスの中に、商売人という一つの人格を持つって、大事なんじゃないかなと個人的には思っている。
それは対外的なものじゃなくて、自分自身にとって。あるいは社内的な人格というか。社風?なんだろう、うまくいえない。
会社としてどうありたいのか、という理想的な人格が「商売人」じゃないかなと思っている。

だから経営者でもあるし、営業マンでもあるし、生産者でもある。

最初に出てきた会話で、いつも思っていたのは、営業部隊を持たない会社の業績が落ちていて、かといって営業マンを配置するような事業内容でもないので、つまりそこに足りていないのは商売人じゃないのかと思ったのだ。
その時に友人が「社長は経営が好き」といっていたので、あー経営者と商売人はちょっと違うんだなって、はっきり感じたのです。

商売人スタンスがあれば何でもうまくいくっていうものでもないけれど、経営者の知識や箔がなくても、営業マンみたいな押しの強さとか営業先がなくても、商売人はどんな場所でもどんな状況でも商売をします。
そういう人格にたどり着けたのは、その後の私のビジネスを大きく動かしていったように思う。

なんだかうまくまとまらないんだけど、そんな事をモニョモニョ考えている師走。

(おわり)

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