貯金を作っている間に失うモノ

ゼロ円からスタートした今回の起業。

ゼロ円って、つまり手持ち資金をほとんど用意せずに、最初に必要なものをクレジットカード決済で準備して、できたものの売上で支払って、次の制作販売の資金に充てたというしくみです。実際最初に用意した金額ってほんとうにわずかだったのです。

派遣社員で働きながら、じわじわと2年くらいかけて進めてきました。

ゼロ円で始めたので、最初はマイナスに振ったものを取り戻すために右往左往していましたが、それも1年以内にマイナスは取り戻せて、手元にキャッシュができるようになり、それを使って現金支払いじゃないとやってくれないところで製造をして、という形で転がしてきました。

確定申告的には赤字だったんですけど、今年あの手この手を使っても黒になりそうだ。手元のキャッシュも100万円あたりを右往左往する状態になりました。

普通に考えて、100万円ってそんな大きなお金じゃないです。でもここまで2年かけて育ててきたので、ほんとマイラブリースイート100万円です。(ここでまたガツッとクオリティUPのための製造資金に充てることになります)

働きながら切り詰めて貯金をして100万円の運転資金を貯めるのではなく、すでに2年間の実績とリピーター顧客といくつかのしっかりした取引先をゲットして、メディア露出もほんの少しある状態というのでは、同じ100万円が手元ある状態でも相当アドバンテージ変わってくると思います。

わたしの借金苦からビジネスを叩き上げた経験からすると、貯金ができるのを待っている時間なんてないんですよね。
金がなくてもできる事はあるので、それをさっさとやる。
金がなくてもできる事は、結局金があってもやらなきゃいけない事なので、どっちにせよやるんです。
だから、お金ができるまで待つ、なんてことはしません。
むしろやりながら金ができるのを待つのです。

でも、これは相当強心臓じゃないと厳しいかとも思う。家族がいるからできないという人も多いと思います。
わたしはそれができるように身軽にしているし、自力で起業するのも2度目になるからまあまあ周りが見えるという部分はあるにせよ、実際にやっていることは、別に強心臓じゃなくてもできる。お金がなくてもできる事をやっているのだから、当たり前です。
でも、その一歩を踏み出す覚悟は、強心臓のなせる業だと思う(わたしは実家の借金を返さなきゃいけなかったから考えている暇はなかった)。
起業したいとか言って結局なにもできない人の賢明な判断も、わかるっちゃわかる。

こうやって書くと、「僕も同じです!」とか「独立起業する覚悟って大事ですよね!」みたいな、会社員辞めた僕たちってちょっと特別な他とはちがう選ばれし人間だよね的なコメントをあちこちに残していく人がいるんだけど、独立して起業した人間がほかの人間とどれだけ違うかなんて事を競っている時点で、アウトなんだと思う。

なぜなら、結局のところ、お客さんになる人は平均的な人なのだ。
平均的な人の欲しがるものをちゃんと作るには、平均的な部分をちゃんと使っていかなきゃいけない。エッジの効いた、尖った才能は実入りが悪い。エッジが立っていることが権威となって引き付けるのは一般的・平均的な人々なんです、残念なことに。

「自分が特別だから起業した」と思うのは、不安を払しょくしたいからだと思う。でも起業した(する)不安をマスキングするために選民思想を持ってみても、周りから白い目で見られるくらいしか効果はない。

起業は、ものすごい不安だし、実際ものすごい危険だ。
わたしは会社に通う事をやめたら毎日夏休みかと思ったら、真逆だった。
好きなだけ寝ていられるけど、休みが1秒たりともない。好きなだけ寝ていられるけど、仕事はその分進まないし、やったことが評価されなきゃお金も入ってこない。
常に、寝ても覚めても仕事の途中。土日も定時もない。定時を自分で作っても、そう簡単に意識は変わらない。
それが24時間365日最低数年間は続く。
だから、その不安は正しい。

そんなこともあって、起業したいなーという人は、貯金をしたり準備したりしている。

でもそれがねえ、わたしは損失だと思うんですよ。特に貯金。

貯金をするためによくあるパターンは、生活費を削る。あるいはもっとたくさん仕事をしたりする。そうすると、時間が減ったり我慢しなきゃいけないことが増えて、身動きは取りにくくなっていく。
起業したいという事は自分のやりたい仕事がある訳で、身動きが取れないとそれができなくなるという事です。

本当は自分の仕事=起業をすべきなのに、別の仕事をして疲弊するなんて、損失も損失です。なぜなら自分の考えやセンスや体力が最初の仕事を作るのに、それをしないで別の事をして疲れ果てるなんて!

そうやって作った貯金は、本当に実際に自分の仕事をして得られたものと釣り合うでしょうか?
たとえ5万円しか手に入らなかったとしても、そこには顧客と実績がついてくるのに、貯金のために違う仕事をしていたら10万円入ってきても自分の仕事に実績なんかひとつもできやしない。

もしかしたら、10万円の貯金を作ることで30万円くらいの自分の売上の損失が起きているかもしれないという事です。平たく言うと、その10万円の貯金は20万円のマイナスの可能性があるという事です。

特に最初の頃は実績がないのです。この事実の重さは、始めてみないとわからないかもしれません。もしかして今までの仕事を引き継いで独立するというのなら、ある程度は見込めますが、ご祝儀的な依頼がなくなった後、新規を取るのにどれほど大変かちょっと考えてみるといいと思います。

最初の段階の実績作りは、買ってでもするべきものです。
お金にならなくても、実績のために仕事をするなんてよくある話です。そこで買いたたかれるって事もあるんですけどね、それでもやらないとダメなことっていくつかあります。

実績作りのための儲からない仕事をしていたら、一生懸命貯めたお金もあっという間に減っていきます。仕事をしてもお金にならないどころか減っていく。
しかも、まだそれでも仕事があればいいですけどね、くらいの話です。

貯金は必要ですが、それを別の仕事で稼ぐ事は、その時に失うものがあるという事を自覚して天秤にかけて選ぶべきだと思います。
借入金を増やせばいいってもんでもないんですが、お金を作ってから始めようというのはとんでもない損失を抱えてスタートするという事です。

実績を作っていくほうが貯金を作るよりよっぽど重要なんです。
お金っていうのは、実績にくっついてくるんだからね!

お金を作るにはある程度時間がかかります。(ぽんと入ってくるケースもあるから、そうなるように祈っておくのも大事。祈るのはタダだから)
その時間は別の仕事をしていたらキャリアにならないけど、自分の仕事をしていたら実績が作れるんですよ。
貯金を作る間に仕事をしないと、実績を失う事になります。

商売において、お金というのは時間とセットで考えるべき概念です。
今ここで使った1万円が、1年後に10万円になっているとか、ここで使った50万円が3年後に1億円になるビジネスを作り出したとか、そういう事が普通にあるのです。それを見据えて動いていくのが、商売です。
それは、稼ぐために投資するお金だけではなく、損に見えるお金にもそれが発生しているという目で見ていないとダメです。1万円にしかならないけど、それによって名前を知ってもらえるならそれでもいいとか。そして、その先で確実に回収するにはここで損をしても、半年後にガッツリ回収できると見込んで動くとか。(普通に仕事をしているとそういう事ができるのに、自分の仕事=起業となると全然できなくなるというのはよくあります。別に能力が低いからではなくよく起きる事象です)

目先の金額だけを考えてはいけません。
同時に、ちゃちなプライドのための小さな勝ちを取って、もっと金銭的にもポジション的にも大きな勝ちを捨てるなんてダメです。(経歴詐称して仕事を取るとか、人のコンテンツでPV稼ぐような事です)
ちゃっちゃと有名になりたいとか、簡単に自尊心を満たしたいというのは商売に向いていません。お金が絡まない場所でやったほうがうまくいきます。

本当に自分が損をしているのは何なのか、よく考えて。
その答えが正しいとは限らないという不安しかないけれど、それでも考えて、精一杯的確な選択をするべきです。

そして!
使ったお金は絶対に何があっても回収すべきです!
最初に稼げなくても、売上が伸びなくても、確実に実績を積み上げて、最終的に利益を上げるところまで、絶対に何があっても持っていく覚悟を決めて下さい。
最初の貯金をしていない分絶対に利益を出すのが最低条件であるという事です。ここはもう、なまはげもビビって逃げるくらいの本気度で当たらなくてはならない部分です。貯金と違うのは、回収しないとあとがないってことです。

回収の目途が立たなくなって、いつか返ってくるなんて甘っちょろい「負けのカード」をそこで切るなんて馬鹿げています。金はきっちり回収!プライドの部分で「負けのカード」を切る=勝ちを譲るっていうのはいいですけどね、実利を取った上で使うカードですからね!負けのカードは贅沢品。勝ちのカードより体力が必要なんですよ。

借金地獄出身は、そこらへん相当厳しいのです。
なんつったって地獄の沙汰も金次第ですからな。


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