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マネタイズの呪い

簡単にお金を稼ぐ手段がある。それも悪い事じゃない、楽しいいい事だという印象がだんだん浸透してきて以降、大きな苦しみを生み出している状況ができている。と最近思う。

副業とか、ちょっとだけ稼ぐっていう事が当たり前に受け止められるようになってきたからこそ、誰もかれもが「自分の活動でお金が稼げていないというのは、二流なのではないか?」というような思いに囚われてしまっているような気がする。
そういう事を質問してくる人もいた。
「こんなに誰でも簡単に月に3万円は稼げるとかいうのに私は全然そんな気配さえない。そんな簡単な事もできないほど劣っているのだろうか」って。

今までは、趣味の活動に「お金が稼げてない」みたいなことをで引け目を感じる人なんて、いただろうか!?

ブログ書いているけど収入ほとんどない、みたいなこと、今まで評価軸にあっただろうか?

確かにマネタイズ=収益化は大事だ。
というか、ビジネスはマネタイズが目的であるし、そのためにすべてがあるともいえる。
でも、実際には、ありとあらゆる活動の結果の副産物としてお金が残る。

お金は、残ったお金しか人は見ようとしない。
その途中で支払ったお金については、マイナスとして受け止められる。
でもビジネスをする時に「どこにどれだけ支払えたのか」というのは、非常に重要なことだ。

稼ぐというのは、最後にお金が残っている状況であって、そこにいくらあるかをビジネスに興味のないお金だけに興味のある消費者は見ようとする。
そうじゃない、ということは、会計にまつわる知識がある人はすぐにわかるし、商売をやっている人はもっと体感的に分かる。金が残る事よりも先に「今月も滞りなく支払いができる」事に安堵と誇りを覚える。
だけどそういう事がわかるようになるのは、それなりにお金を回し続けた経験があってからの事なのかもしれないと最近思うようになった。
だって私も最初は本当に、手元に残るお金を追いかけていた。

けど、本当にお金が欲しいと思った時に、手元に残るお金というのは、何かの残滓でしかないのだとなんとなく分かっていった。
お金を使うほどお金が入ってくるようになるのがビジネスなので、まずはお金を使わないといけない。
お金の循環というものがあって、一番端っこにいる消費者は使えば終わるけど、循環の内側にいるビジネスをしている人たちはお金は使えば使っただけ帰ってくるし、場合によってはもっとたくさん増えて戻ってくる。ちゃんとその循環の内側に適切にポジションを取る事がビジネスだ。
(そんな事を書いたnoteはこちら)

こうなるには、とにかく「まず使う」というか、先に出すお金、支出になるお金がとても大事になる。
本当に問われるのは、ビジネスの心臓になるのは、支出なのだ。

だから残ったお金、利益は残滓でしかない。
残りかす、搾りかすみたいなもの。

もちろん、我々はリッチな搾りかすを残そうと、絞り方に心を砕く。
でもそういうのも、たっぷり絞れるほどお金が動いているからこそだ。
最初から利益=美味しい搾りかすを狙っていては、絞る前の、たとえばワインとか日本酒を発酵させるような大事なステップをすっかり飛ばしている。
ちゃんとそろえた材料を清潔な環境と適切な温度で発酵させタイミングを見てちゃんと絞る、という作業がないと、美味しい搾りかすはできない。
そして絶対条件として、絞らないといけない!全部ほしいと思ってもダメだ、ちゃんと美味しいお酒は提供しないと、搾りかすもできない。

むしろ、きっちりと酒を絞り切った搾りかすじゃないと、意味がなかったりする。たっぷりとさけの残ったカスは、すぐに腐り、これから作る酒の酛(もと)まで腐ってしまう。

美味しいお酒もちゃんと醸している、でも搾りかすができないという人は、ある程度活動しているけどマネタイズできてないということなので、絞り方をもう少し考えようよって事になると思う。そういう時はちゃんといいお酒を提供できていないことも多い。
きっちり絞ったいい酒が作れなければ、リッチな搾りかすも何もないのだ。

でもそれよりも前の段階の「何をしたらいいのかわからないんですが、お金は欲しい」というのでは、絞るものがない。
絞るものがないのに「ほーらこんなに簡単に搾りかすが手に入るんですよ!」っていわれて、「えっ?えっ?」ってなっちゃってる。

何者であるかを問う時に、どれだけ稼げているかを問われる(ような気になって、しり込みする)状況が起きているというのは、ほんとに起業を気軽に煽るメディアの悪影響だなあとつくづく思う。

そしてたいして面白くもないブログや、これでお金取るのねみたいな謎サービスの乱立が生まれている気もする。
「最近、友達がみんな占い師になっちゃったんですよねー」なんて話し、よく聞く。あれも、簡単に人からお金を取るサービスとして敷居がめっちゃ低いから……。

それもきっとマネタイズの呪いなんじゃないかなと思う。

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マネタイズの呪いから、我々は逃げられるのだろうか。

お金なんてあとで儲かればいいやという後回し思考しか対策がないのだろうか?でもそんな心構えで生き馬の目を抜くこのフルスピードビジネスレースをやっていけるなんて全然思えないんだけど……
今のところ、私にはよくわからない。
ただ、とりあえずいえるのは「均等に金を稼ぎ続けるのは捨てて、稼ぐタイミングがムラになる事を受け入れる」というのはいいやり方かなと思う。

つまり、たとえばnoteでもすべての記事に課金してもらおうと思わないということだ。
・いくつかの「よく売れる記事」に働いてもらえればいい
・それも別に自分が書きたいと思った事で売れなくてもいい
・PVと売上は別に考える
・主張と売上はイコールでつながってなくてもいい
という、理想とは相反する矛盾とばらつきを受け入れるということ。
うまくできるなら、そこをある程度仕組み化というか、ある程度誘導できるルートを作ってしまえれば、いい線行く。

いつも稼げなくてもいいが、ちゃんと稼ぐということをあきらめない。

そう思う覚悟がある計画を組めていれば、稼げていない時期も焦って自己否定に走るという一番大事な自分のエネルギーを失う愚かな事をしないですむ。

自分である程度は計画を動かしているという自己効力感=自分がやっていることがちゃんと自分のやっているように動いているという実感が少しでもあれば、人間ある程度のところまでは耐えられるし、変な判断に迷う事もなくなる。

……そして、そういう自己効力感がお金に対しては全く持てない人、ギャンブルさえできない人たちには、マネタイズの呪いは非常によく効いてしまうのかもしれないなと、思ったりもします。

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