儲からないと言われると必死にビジネスモデルを考えてしまう病

オートクチュールをやりたいという人の話を聞いてた。私はアパレルについては極めて疎いのだけど、彼らがいうには相当お高いブランドでも儲けという部分は小さいらしい。

その上、オートクチュールをやりたいというのは、よく知らない私から見ると、どう見ても零戦に片道燃料を積んでるのと同じことだろうなと感じる。

だってさ、アートと衣服の中間地点みたいなところでオーダーされて作るっていうやつだっけ?生計が成り立つほどお客さんいるの?ちょっと考えにくい市場じゃないかなあって。

素人考えなので、アッパークラスはそれがほとんど普通ですのよ、外商カードでお買い物ですのよホホホホって世界かもわからないけど。

そんな話を聞くと、反射的にその中でもなんとかうまくやれるビジネスモデルを考えてしまうのは、私の生存本能なのではないかと思う。

もしくは病。

私の考えたオートクチュールビジネスは「成長し、変化していく服」

お客さんはベースとなる1着を購入し、期間でいくらという契約を結ぶ。
例えばベースになるワンピースがあって、夏はビジューを縫い付け、冬はビジューを取り外してファーを付け直す。
体型に合わせて縫い直し、好みに染め直しも追加パーツもつける。
飽きたら返却する。クリーニングもお直し時にやってしまうからお客としては丸投げできる。
追加料金で別のアイテムを購入したり、アレンジ不要だと思えば契約を終了する。

荒いアイディアだけど、これなら高級素材のパーツも無駄なく回収できるし「売ったら終わり」ではない。
服を買うのは初期投資の高さがネックだけど、そこを抑えることができて、メンテナンスもしてもらえる。
形が古くならないのも資産価値が減るしかない服という財産に対するリスクヘッジになる。

作り手も「今年の服」としてディテールを発表して、それを選んでもらうなどのセミオーダー的なこともできる。

服のメンテナンスで儲ける、パーツの回収、仕立て直しという贅沢な素材を無駄にしないことで一部値段を抑えられる可能性が考えられるし、その人に合わせてつくるオートクチュールの醍醐味もあるし(たぶん)。

みたいなことをオートクチュール志望の人に話したら、「あー、確かにね。知らない人だから出てくるアイディアってあるよね」って。

私が知らない事というのは「その素材をクリーニングできる人って日本に数人しかいない」とか「ほどいて直す強度のある服はほとんどない」とか、そういう事らしい。

いやでもさ?
作り手としてその芸術性を買ってもらえばいいのかもしれないけど、売り手としてはアフターケアも金になるならすべきだし、ていうかクリーニングさえできないようなものを売っていいのかい?

強度がないというなら、強度をつけた構造を考え出す事こそ作り手の持てる力であるし、そこをさっさと放棄して「オリジナリティと美しさを打ち出せばそれが最終的に売上にもつながっていくと考えている」っていうのは、おいらがマネージャーやってたら「そんなんだから!服で食っていけないんだよ!せっかくの才能が泣いているぞ」と見えないところで机を蹴飛ばしている(が、別にわたしの仕事じゃないから今は「ふーん」って感じでビジネスのネタをひとつ思いついたからラッキーという感じだ)。

でもね、お金の力はすごいと思う。
それはすごい肯定の力なんだ。抗う事が難しい力だ。
どれほど「これは俺が作りたいものじゃない!」と言っていても、「ここの素材とか、値段感がよかったんだよ、だから売れてる」という事実を伝えていけば、それに抗える人はほとんどいない。
もしそれに抗って、それでいて多くの人にこれが欲しかったのだと言われるようなものを作り出す人がいたとしたら、それが天才だ。(意外にも天才は結構あちこちにいる)

作ることは何より重要なことだけれど、売ることはそれに匹敵する。

売ることは作ることを多くの人にリスペクトさせる事だし、売ることを作ることがないがしろにしてしまうのはよろしくない。(それを忘れて好き勝手に無駄遣いとかするとか、生産性を度外視するっていうのも、最終的な生産性を落とさないために重要なことなのでそれを含めて生産性だとおもう。売り手はそこも含めて作り手をリスペクトしてある程度自由にやってもらうのも重要なことだと思う)

売れるという事を、運みたいなものだと思っている人がすごく多い気がするけど、そういうものじゃない。

もし運だというなら、徹底的に運にのれるようにしたらいい。
努力できる範囲が少ないと思う事がおかしい。
ムリかもって思いながらやるのもおかしい。
あと、「これをやればこうなる」という条件付けに頼りすぎるのも危険だ。

大体、売れない商売というのは、外部要因に大きく頼っていることがよくある。人通りに頼る喫茶店、大きな会社のそばのお弁当屋さん、みたいな。
そこは「利用する」のであって、そこの一部として動いてはいけない。
利用するという事は、動かせるものは動かすという事だと思う。

ちなみに、芸術家肌の人は言っても動かないけど、先に情報をいくつか渡しておくと、状況が来た時に渡されていた情報を自ら見つけたもののように面白がって「これやろうよ」などと言い出してくるので、それまで情報や栄養を与えて待つのがよいと思う。
「ふーん、いいよ」みたいな感じになるけど、こっちは内心(遅いよ、やっとかよ)と思っている訳です。


個人のマガジンに追加する場合は、課金をお願いします。

ここから先は

0字

¥ 150

期間限定 PayPay支払いすると抽選でお得に!

つよく生きていきたい。