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ござさんソロコンサート「WinterSpecial」2023雑感(Twitterまとめ)

2023年1月15日に開催された、ピアニストござさんのソロコンサートに行ってきた感想です。思い出した都度つぶやいたり、ある程度の長さのツリーになっていたものに手を加えてまとめました。

 Twitterでは、#ござlive タグのおかげでみなさまの感想が読めて、後夜祭のように本当に楽しかったござさんのソロコンサート2023「WinterSpecial」。1月にしては暖かい日、コートの下は東北民の秋仕様で有楽町へ向かう。これは、前乗りしていた函館の友人からのアドバイス。

ソロコン用に雪の結晶をあしらって塗り絵しました。

 このコンサートには、わたしが知っているだけでいくつかドラマがあった。例えばある友人の1人は、直前にコロナウイルス(+)になり、泣く泣くコンサート参加を断念した。
 あらゆる障害を乗り越えて飛行場に辿り着いた別の友人は、航空機障害に遭ったものの奇跡的な機材変更で来日を果たし、初めてのござさんに遭遇することができた。
 アルバム「EnVision」をかけながらピアノ教室に通っていた娘さんを持つ父親は、ソロコンサート直前に一緒に行くはずだったお嬢さんが体調を崩してしまう。「EnVision発売ライブ」のときにもコロナウイルス隆盛を案じて取りやめたお嬢さんのため、急遽、看護する家族分のチケットを取ったという。
 どんな人にも大小様々なドラマがあって、それを乗り越えて集まっているのは奇跡だし、ござさんご自身にもドラマはあったろう。ござさんと観客のほのぼのしたやりとりには、なんとなくお互いを労わる雰囲気がある。どなたかが挙げてくださったスタンド花もまるで冬から春への2色。


 さて有楽町ホールへ。会場はシンプルな板の上にフルコンのスタインウェイ。タブレットなし。大黒幕が下がっていて、それだけ。会場に入って、生音?とびっくりするやら嬉しいやら!
 昼の部は前の方の列だったが若番だったので、ござさんの背中が見える位置。客入れSEはないけど会場のざわめきは静か。
 影アナと同時に、係の人がペットボトルを持ってきて…立ててた、よかった😂 以前のハプニング以来、なんとなく始まる前からほんわかする雰囲気。ただ2ベル直前に「2ベル入りまーす」の声が袖から聞こえるくらい、すでにシーンとしている。客電が落ちて舞台が明るくなると、すぐござさん登場。アースカラーの上下はお初でした。

お手振りシーンの塗り絵。

ござさん、三方に丁寧なお辞儀をした後で、胸の前で両手を合わせていた。感謝の気持ちが伝わってきてすでにうるうる🥹
座って、いきなり弾き出すのは弾いているうちに曲に入り込むからだろう。ペンタトニック風味で「島唄かな」と思った。



 「島唄」。イントロは真ん中でメロディ、とても丁寧に弾いている印象。日本遺産物語…の時にはスピーカーを通した迫力や色付きの照明の効果もあり、何かに抗うような猛々しさ・哀しみを感じたけれど、今回はナマの照明にピアノの生音で聴かせる「島唄」で、「祈り」の気持ちがより胸を打つ。88鍵どの鍵盤にも触れるような長い壮麗なアルペジオが、昼の部では特に丁寧だった。
 多分、スタインウェイとのコミュニケーションのためにもその壮麗なアルペジオは必要で、そのためにあえて難曲をはじめに置いている気がする。生音なので、わたしの座席からは圧倒されるような音量は感じなかったけれど、左手を特に丁寧に確認しながら弾いているなあという印象。
 ERAちゃんのキャスでも言ったように、鍵盤の幅の差から来る左手跳躍の命中率を確認しながらの1曲目なんだと思う。でも決して「置き」にはいかず、むしろ丁寧で一つ一つのタッチがよくわかる演奏。ござさんの慎重さでありプロとしての矜持を感じ、昼公演に来てよかったと思った瞬間だった。
 それで、わたしも自信はないが、トレモロの後「海よ宇宙よ」の大サビのところ、今まで(沖縄奄美コンサート、中孝介コンサートの2回)は、左手fff和音でメロディをなぞってましたよね??なんと説明していいかわからないけれど、
「う、み、よ、う、ちゅ、う、よ、か、み、よ、い、の、ち、よー!」
でしたよね?!(有識者の方ぁー教えてください!!!)歌詞の語音のまま全指が全力で歌うから、神様が訴えているような荒ぶる感じがあった。
 このソロコンver.では、「神よ命よ」のあたりは左手でベース音入れたアレンジだったから(多分)、ややソフトで神人の祝詞みたいな…それで「祈りだな」と。こんなふうに、直近のアレンジでも「表現したいこと」によってどんどんアレンジや奏法?を変えてくるところには、ござさんの本当の凄みがあると思っている。「島唄」好きすぎて語ってるけど、記憶に自信がないので、間違いがあったらご指摘いただけると嬉しいです。


 「昨年の振り返り」として2曲紹介の後「およげ!たい焼きくん」。動画にあがったのより、夜の部よりも早い早い(個人の感想)!心臓バクバクのままのスピードで、ジャズのアクセントをかなり強めに出してグルーブ感とスピード感を調整してジャズの指にしているのかもと思ったり。
 アドリブパートはややゆっくり目だけど左手強めウォークングベースでかっこよさマシマシ!ジャズのリズムの面白さ、パラパラする手の美しさが印象に残っている。頑張る背中に肩甲骨がくっきり見えた。2曲続けると思いきや立って礼をするところもござさんらしい。


 お辞儀を挟んで「Chopin syndrome」この難曲が3曲目。強力ラインナップという所以。これも昼の部は圧倒的な速さで弾いていて、ともかく度肝を抜かれた。最初のスケルツォ〜舟唄のところ、ジャズから切り替えたばかりの難しさもあるように思うのだけれど、速弾きの力強さ!過去絵どうぞ!

Youtubeのコメント欄のやり取りにインスパイアされました。

「Chopin syndrome」速弾きの反面レガートが美しく、それぞれの曲を愛してやまないござさんの気持ちが伝わってきた。陰でクラシックの練習をかなりなさったと思わせる凄みがある。Youtubeのコメント欄にも書いたように、この動画の発表時、ちょうどロシアのウクライナ侵攻が始まった頃に楽譜が上がったこともあって、ショパン自身が巻き込まれたヨーロッパ諸国の動乱を思わずにはいられなかった。あの時は、曲同士が平和になだらかに繋がるパッチワークの趣を感じ、Youtubeのコメント欄にそう書いた。
 ただこのソロコンver.では、重々しさよりも、曲の多様性を肯定するような前向きさが感じられたのだった。動画の時の、強靭な意志のある演奏を抑え、穏やかに豊かに演奏しているソロコンver。曲の多様性と驚くようなつなぎの面白さからさまざまに解釈されるであろう世界観を持つ楽曲を、若きピアニストが紡ぎ出しているところに、わたしは希望を覚える。それは最後のスケルツォの明るさでもある。
 そういえば、ショパンは別々の曲を繋ぎ数曲ずつまとめて作品番号を振っていたのではなかったか。それらショパンの曲のフレーズを組み替え、繋げ、新たなパッセージとして作品化した試みは、まさに「Chopin Syndrome」としか名づけ得ない遊び心じゃないのだろうか!こういうところに、わたしはござさんという人のクレバーさとお茶目さと、音楽への深い傾倒を感じるのである。


 ここで水分補給。いつも通り後ろを向いて片足を半歩進めて水を飲む後ろ姿にくすくす笑いが。直前にあんなすごい演奏をした人が、無器用な様子で水を飲むのが可笑しくて仕方ない。
 MC「曲名間違えてませんでした?」 演奏の時に間違えたのではないかと気になったそうだ。さらにトークの中で「たい焼きくん」がTwitter投稿だったことを説明するのに当たって「2015年くらい前に」と仰りすぐ訂正。会場はトークの間中、温かい笑いに満ちた。ござさんはこうしたファンとのやり取りの中で調子を上げているのかも。
 このMCの温かさを見ていると、冬の冷たさ寒さでなく、春のような温かさ、お日様に照らされているような温もりを感じる。名前こそWinter Specialだが、ござさんのお好きな春を思わせる温もりに満ちている。気温も11度を超えたこの日、本当に春待ちの気分にさせられるライブだった。


 初出し「悲愴」を軽やかでかっこいいジャズアレンジで。ともかく左手の強さが印象的だ。このライブでは本当に左手が素晴らしい仕事をしていた。メロディの美しさはそのまま右手に歌わせて、ごく低いところからのウォーキングベースがかっこよすぎる!
 クラシカルなパートはひそやかに、囁くように。わたしの席からは空調音に気がつくほどの微弱音。リハモの複雑な心地よさに加えて、クリシェで滑らかに下がっていく左手、保続音の安定感…そんな「悲愴ござスペシャル」。最後テンポを落として静かに弾き終わり、余韻の残る素晴らしいアレンジだった。


 「ロマンスの神様」。ご自身がずっと聞いていられると仰っていたお気に入りのアレンジをほぼ動画そのまま(多分)。弾き始める前に、右手で軽く1、2、3とテンポを刻んでから弾き始めたのがよかった。この辺りから、緊張がなりを潜めて心から楽しげに弾いているようにわたしには見えた。軽やかなジャズワルツでブルージーなキメも完璧だし、大サビのウォーキングベースも相変わらずカッコよかった。


 ここでまた息も切れ切れのMC。「悲愴は月ピで3ヶ月ずつアレンジをする曲を選んでいる中でやってみようかなと」「ガチなアレンジ」だと仰っていた。ロマンスの神様については「2022年9月ごろ季節感大事だと思い」アレンジしたという曲解説が披露された。
 さらにMC。「冬が苦手。冬から春へということで、言い訳もそこそこに3曲。「アネモネ」、瀧廉太郎さんの「花」、そしてジャズで「JOY SPRING」これはジャズサークルに入っていたときに『春だからやろっか』的な感じで仲間とセッションした思い出のある曲」…という様なことを仰っていた。

 「アネモネ」。前奏を聴いただけでほろり… メロディに美しい内声が寄り添って心打たれる。テンポ落とした展開部の、冬の冷たい風が吹いているようなところで誰かのすすり泣きが… わたしも堪えつつ、それがござさんの耳には届いているんじゃないかと思うほど感情が入り込んだサビ。…からのテンポを上げていのちを歌い上げていくピアノ!
 すでに書いたように出会いは一期一会。人の成長は遅いし人生には苦難もあるけど、季節に見守られて生きていると思わせられる美しい曲・アネモネ。2022年ござの日のあと、わたしはこんなことを書いていた。

Twitterリンクを写真に差し替えました(2023.7)

 念願かなって生のピアノで聴けてもうもうもう…
 ちなみに、わたしは今回、ござさんを見るのはほぼ初めての友人(厳密に言うとスタクラも観ている。わたしがコロナに罹患したため1人で観に行ってもらった)を誘っていったが、彼女はこの「アネモネ」と「清新の風」が好きだと言っていた。初めて聴く人にイメージをわかせる素敵な曲なんだなと感動あらた。

EnVision発表のお祝いに描いたもの。
冬から春に咲くアネモネのイメージを、蕾に託しました。

 「花」。変拍子のこの曲、昼公演はアルバムよりほんの少しテンポを落として演奏。アドリブ部分で「左手遊ばせTIME」があって自由に左手が歌っているのが生音だとよく聴こえた。夜公演とは違った気がするがどうだろう?このアドリブ部の変拍子を刻むのは右手で、左手の自由さが眩しかった。アドリブの時間も長く楽しく、戻ってこられるのと思うほどの闊達さ。アネモネがつとめて抑制的に叙情を歌っていたのと対照的な解放されたリズムと自由な演奏にまたときめく。昼公演の「花」かなりよかった。

不慣れな水彩画。「花」を心地よさそうに弾いていらした。



 「JOY SPRING」仲間とセッションした思い出の曲というだけあって、軽やかな春気分を満喫できる曲。ジャズのアクセントを強めに出しているから、ござさんの入っていたサークルのトリオなのかバンドなのか…はさぞかし合わせやすかっただろうなどと想像。重い曲の中で少しの憩いだったのかもしれないと思わせる軽やかで自由なアドリブ。


 お辞儀あとのここのMC、ハプニングがあって記憶が前後しているから、間違いあれば訂正を。水分補給後「やっと落ち着いて話できるようになりました。」と下手袖(のスタッフさん)に向かって「えーとMCあと1回ある予定でしたが、予定を変更します!」と伝える。体ごと下手側に向いての伝達で、微笑ましくもなんだか余裕が感じられる!
 観客席に向かい「これで残り3曲となりました」と切り出すとすかさず会場から「え~~」という声。きっと毎配信ごとにみんなそれぞれのPCやタブレットの前で言っていると思うのだが、直接ござさんに伝えられる状況なのが本当にうれしい。ござさんもうれしそう。
 「じゃあじゃあ、(時間的に)できそうなので今の気分を元ネタなしの即興で!」とおっしゃったので、まさかのことに歓喜の(小さな)声と満場の拍手が起こる。


「ござソロコン即興曲」 ワルツの好きなござさんらしいジャズワルツ。リラックスできる感じの可愛らしい曲。即興が得意だったというショパンも、こんな感じで演奏していたのだろうか?
 左手でベース、クラシカルな始まりから壮大なイメージに展開し、気持ちの高揚感が感じられる!完全即興なのが信じられないほど、迷いのない軽やかな指さばきで、ござさんの「今の気分」に寄り添うべく、観客もその魔法のワルツに酔いしれた即興曲だった…魔法の舞踏会はあっという間。何のベースもない、本物の即興演奏の凄み。ちなみに夜の部の即興演奏は昼ともまた違って、パラパラのビート効いたもの。本番の大きい舞台での2曲の即興。ご本人のツイートで「完全燃焼」とあったのも、わかる気がする。
 即興演奏が終わり、ニコニコしながらお辞儀しMC。「調子に乗ってまいりました!普段の配信っぽくなりましたが充分弾きましたね!」で万雷の拍手…もう胸がいっぱい。
 最後のMCと断ってから残り3曲の紹介。「幻想即興曲、夕さり、清新の風続けて…」そして弾き始める夕さり🥹
………んん?夕さり?
 美しいイントロが響く中、客席から「夕さり?」と(大きくはない)声が上がる。するとござさん演奏をやめて立ち上がり、もうなかったはずのMC!
「ありがとうございます!雰囲気で気づきました、夕さりでしたね!」会場中、ござさん肯定の大爆笑。結果的に、大サービスタイム。
 それにつけても、演奏中あんなに美しいイントロを弾きながら観客の声って聞こえるんだというところに感動。耳がいいのはもちろんとして、場を読むセンスが図抜けているんだろう。だからこそセッションもうまいし信頼されるんだと思い、ござさんファンとして勝手に満足した一場面だった。
 MC「ちょうどさっき言い忘れていたので」と観客への御礼を述べ、あらためてピアノに向かい「幻想即興曲」。あの難曲を、あのハプニングのあと座ってすぐ弾く強心臓よ!一体どれだけ練習してらっしゃるのか。スピードと勢いは、もうすっかりスタインウェイと仲良くなった証。


「幻想即興曲ジャズアレンジ」。跳ねる右手に左手ベースが後ノリするの、動画見る度感嘆するのだが、生音すごい。しかも転調するところですっと座り直してゆったりと弾くんだけど、いや演奏本当にどれだけ練習したんだろう。椅子に座り直す余裕があるんだなあ…
 そういえば幻想…はござさんが6歳?で初見で耳コピした曲。と考えると今回のセレクトは本当に好きな大事な曲をアレンジして披露してくれているんだと感慨深い。


 続けてと言ったけど、曲が終わって一礼。これね、クラシックコンサートなら考えにくいのかもしれないが、本当に素晴らしい演奏だったので、自然と拍手が起きるのだ。それはどうかという向きもあろうしわたしも少し躊躇はしたが、自然発生的な拍手であって曲の流れを止めるものではなかったと思っている。そして当のござさんは、その拍手にも丁寧にお辞儀をするのだった。
 長く配信上の「888888」や「👏」を画面上だけで見てきた人にとって、リアルの拍手への丁寧な礼は彼の真心だ。これからどうするかは別として、この「WinterSpecial」がそういう温かいコンサートであったことは、ここに記しておきたい。


「夕さり」。
 夕さりはジャズの進行をモチーフにしているから、ある程度自由の利く曲だが、ソロコンの「夕さり」はアドリブ部分が心持ち長く、聴き手としてハッとさせられるモチーフが多かった。まるでマジックアワーが長いみたいに、美しいパッセージが続いて感動的だった。この昼の部の「夕さり」はわたしは過去一好きだし、ERAちゃんもそう言っていたかも。
 マジックアワーが長めの「夕さり」は、ござさんが、ここから立ち去るのを少し先延ばししてくれているような、そんな魔法のときだった。キラキラのアウトロ中、左手がクロスして別の音が入ったなあと感じたら、いつの間にか「清新の風」になっていた。「夕さり」と「清新の風」が入れ替わり立ち替わり音にたちあらわれ、いつの間にか「清新の風」で船出。


 「清新の風」はたくさんの実演奏者様が弾いてらっしゃる愛され曲だし、ファンにはお馴染みの名曲だが、そのためかより複雑に音数が増えてる気がした。
 昼の部もご覧になったままくまさんとめぃりさんがTwitterで「鳥のイメージ」と書いていらしたが、実はわたしもこの昼の部の「清新の風」を聴きながら、俯瞰する鳥をイメージしていた。いつもは広々とした緑の丘や海原をイメージするのだが、船の水先案内をする鳥の視点で聴いたのは初めてだった。それでちょっと曲を離れるが考察してみたい。
 生「清新の風」はござの日2022とねぴふぁびの、弦楽編成・バンド編成以来。アンプを通さない「清新の風」はもちろん初めて。ところでホールはさまざまな反響板を経て聞こえるのだが、マイクで拾うとわりとどの席も包み込むようなサウンドになるはず。生の音+スピーカーの音で、豊かな音になると言われる。
 今回は生音だから、ピアノの筐体から聞こえてくる音+反響音。ピアノの屋根から響いてくる音をやや下側から聴く格好になる。これまで音に包み込まれていたから「自分が」船に乗っていた感覚だったが、今回は船の上にいる「鳥」のような気分になったのかも…屁理屈すみません。


 観客の喝采を浴び、ござさん満足げに三方に丁寧にお辞儀。もちろん立ってお見送りしたがそののちアンコールで再登場。もちろんかなりの数の方がスタオベでお出迎えした。
 ござさんMC「ありがとうございます!配信でコメント書いてる人たちは実在しているのかと一応思ったりするが」「対面できてうれしい」旨を話す。


 アンコール「Danny  Boy」とても軽やかなダニボ。ござさんの心の軽やかさなのかも。ブルージーに展開しトレモロで終息。正統派のダニボだった。笑顔で終演、本当に満足して再び立ってお見送りした昼の部だった。硬かったかなあという方もいたけれど、その緊張感を共有できたのが嬉しかった。


 みなさま拝見したと思われる「夜の部」について、Twitterでは触れなかったがここでは少し書きたい。
 去年、EnVisionコンサートの「夜の部」、最後は死力を尽くす感じがしたものだが、今回の夜の部は(乳酸溜まっていそうな、珍しいもたりはあったけど)スタミナがつき余裕すら感じる出来。常に向上心を持ったござさんらしい素晴らしいライブだった。
 何度も撮り直しをするとはいえ、普段の動画も「一発撮り」を旨としていることを、いみじくもこの夜の部で語っていらしたことから、一度限り、一期一会の演奏や縁を大事にされていることが伺われた。そういう緊張感を持った動画、配信ゆえに、進化を続けているのだとわたしは思っている。
 それから舞台の件。ERAちゃんツイキャスでも話したけど、ナマの照明でスピーカーなしのあの小屋のコンサート、ござさんのチャレンジの一つだったと思う。多分空調も最低限にしていたんじゃないだろうか。そこまでしてこだわりたかったのは、「一定数以上の人数にピアノの生音を聴かせる」ということ。そのピアニストとしての覚悟、矜持。そのためのフルコンであったはず。
(↓下のキャス、合言葉が必要です。お聞きになりたい方はERAちゃんまで)


 ただ、これもお邪魔したキャスで話したように、大黒幕や袖幕に音が吸われていて、細やかな響きが後ろまでは届かなかったかもしれないという一点のみ、本当に勿体無いと思った。演奏が完璧で、アレンジも即興演奏もあった今回のコンサートだからこそ、…できることなら、もっと反響板の整った会場で、ござさんの本当の生音に触れたかったなあ…と思ってしまう。

 ござさんは、いつも自分に課題を課してピアノに向かっているが、その姿勢が信頼できるしかっこいい。きっと、次こそという満を持して次に挑んでくるに違いない。
 最初に書いたように、人はそれぞれ何がしかの事情を抱えながら生きている。そしてそんな中でコンサートに向かう。
 ござさんがどういう人生経験からそうなったのかはわからないが、おそらくござさんは「一期一会」という機縁を信じて緊張感を持って演奏活動に向かっていらっしゃるとわたしには思えてならない。そんなピアニストと対峙するわたしたち観客もまた、一期一会の緊張感の中、ござという機縁に出会える人生を愛おしんでいるのかもしれない。

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