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柱にくくりつけられた真夏

 虐待サバイバーのゆうかです。
 
 ある夏の暑い日でした。
 私は小学校3〜4年生だったと思います。

 父に激しく怒られ、殴られました。
 なぜか理由は覚えていません。
 おそらく大したことではなかったと思います。
 
 ただ、家族でお出かけをする直前だったことは覚えています。
 2階のその部屋には私と父のみ。

 他の家族は出かける準備をして1階にいたと思います。 

 父の怒りが激しすぎて、もはや私はどうすることもできませんでした。

 父は興奮して怒り狂いながら、私を後ろ手にし縄で縛りました。固く固く、締め上げました。
 そして、その私を柱にくくりつけたのです。座った状態でくくりつけられました。

 父にとても筋肉も力もありましたので、固く結ばれた腕は1ミリも身動きはできませんでした。

 この状態でも、じゅうぶんとんでもない状況なのに、父はその私を置いて他の家族と出かけてしまったのです。

 暑い夏の日、窓もしまっていて、もちろんエアコンはついていません。
 
 2階建ての集合住宅の2階の部屋が、真夏の日中は、サウナのように暑くなることをご存知の方もいらっしゃると思います。

 私はいつ帰って来るかわからない家族を待ちながら、暑さに耐えていました。決して動きませんでした。

 身動きをとって、もし手を縛られている縄が緩くなってしまったら、見つかった時にもっと恐ろしいことになるので、大人しくしていました。

 動かなくても縄はジワリジワリ締め付けられてきたのを覚えています。
 
 縛られている部分は汗をかき、手もぬるぬるでした。その時の感触を今でも忘れてません。
  
 今思えば、暑い部屋に、水も飲めず、トイレにも行けない、食べ物もない、そんな状況で数時間放置することは、親として絶対にしてはいけない行為だと思うのです。

 親としてだけでなく人間としてありえないと思います。

 家族が帰ってきたのは、陽も落ちて部屋の気温が下がってからでした。
 
 父は何も言わず、縄をほどきました。
 開放された私は、なぜこんなことをされなければならなかったのか、そして、なぜ許されたのか、全くわかりませんでした。

 当時もわかりませんでしたが、今考えるともっとわかりません。
 熱中症で死ぬこともあるような状況です。

 父が私を置いていったこと、私が縛られていることを、母が知っていたのか、知らないにしても小学生をひとりで家に置いてきたことはわかっていたはずです。

 私は、縛られて身体の自由を奪われた状態でいる自分を、とても恥ずかしく思い、大変屈辱的な気持ちになりました。

 小学生が感じた屈辱的な気持ちは、母にも姉妹にも誰にも言えず、結局誰にも伝えませんでした。

 父が、知ってか知らずかわかりませんが、屈辱的な気持ちにさせることで、人に話すことができない心境に、持っていったのかもしれません。

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