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母が私にしてくれたこと

 虐待サバイバーのゆうかです。

 父に怒鳴られ、殴られたあとに、外に出されることがよくありました。

 外に出されると、近所の人に見られるのが恥ずかしすぎて、私は必ず遊んでるふりをしました。夜でも不自然に思われないように、何か用事があるかのように、歩いたりもしました。
 完全に不自然だったと思います。

 ある真冬の寒い夜、私は父に殴られたあと、薄着のまま、玄関から外に出されました。外はもう真っ暗でした。私は怖くて寒くて…だけでなく、誰かに見られたら恥ずかしいと思い、玄関の近くで縮こまっていました。
 
 今なら、近所の人に助けを求めればよかったのかも、と思いますが、当時の私は全く思いつきもしませんでした。

 1時間以上そうしていると、玄関が開きました。また怒られると思い、小さく身を縮めました。

 すると、家から出てきたのは母でした。
 ゴミ出しの用事をわざわざ作り、父にバレないように、私に上着をそっと渡してくれたのです。

 普段、私をかばうことを、父に許されなかった母が私にしてくれたことは少なかったので、この時のことは忘れられません。

 赤と紺色のジャージの上着で、今もはっきり覚えています。
 薄手の上着でしたが、母が隠して持ち出すにはそれが精一杯だっだんだと思います。そして、それは、父に見つかったらひどい目に遭うことがわかっていた、母の命がけの行動だったと思います。

 凍えていた私には本当に嬉しかったです。
 今でもそのことを思うと涙が出ます。

 母にかばってもらえなかった記憶の中に、ひとつ、私の胸を熱くする思い出がありました。少し救われます。

 

 

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