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腕を脱臼したのに

 虐待サバイバーのゆうかです。
 
 私が小学生の頃、父に激しく暴力を振るわれているときに、腕を強く引っ張られ、肩を脱臼したことがありました。腕をはだらんと力が入らなくなりました。

 私は激しい痛みに耐えられず、泣き叫びました。
 後に脱臼だったとわかるのですが、初めは何が起こったのか家族みんなが驚いていました。
 私があまりに激しく痛がるので、父は骨折したのではないかと焦っていました。

 そして、母に病院に行くよう命じました。
  
 私はすぐにいつもの小児科に連れて行かれました。
 先生は、ひと目見てから、「あ〜これね」と言うと、私の肩を持ち「ガク」とはめ込むと、ニッコリして「もう大丈夫」と言ってくれました。

 私は一瞬にして痛みから開放されました。
 先生は脱臼した肩をいとも簡単に、治してくれたんです。

 先生は母に質問をしていました。
 どんな状況でこうなったのかと。

 私は助けを求められるかもと淡い期待を持ちました。
 けれど、それは叶いませんでした。

 母は「夫が娘と遊んでいてちょっと強くひっぱったみたいです」と言っていました。
 
 せっかく病院にいくような怪我をしたのに、助けを求められないなんて、と失望しました。

 もちろん、先生に私から話すこともできましたが、母を裏切るようでできませんでした。

 肩を脱臼したのは父の誤算だったようです。いつも病院にはいかなくて済む方法で
わたし達に暴力を加えていたのですから。

 案外大したことなく、私が病院から戻ってきたことに安心したのでしょう。
 後に「あの時はあせったなぁ」とニヤリと笑って言っていましたから。

 そして、それ以降、脱臼はしたことはありません。
 もちろん、父の暴力が減ることもありませんでしたが。

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