見出し画像

すぐ話しかけられる

めったに外に出ない私だが、たまに外出すると、80パーセントくらいの確率で話しかけられる。そんな人いるだろうか。

昔から、道は聞かれまくっている。慣れない場所でも、だ。昔、大学受験の際に田舎から一人上京し、ビビりまくりながら成城学園前駅付近を歩いていたら「すみません、このあたりに○○ってお店ありませんか?」とマダムに聞かれ「ヒィィ!わ、わかりませぬ!」と心底情けない声を出して逃げた。その後冷静になり、「もしや……私、世田谷在住の女子高生と思われたってわけ!?」と無駄にテンションがあがったことを覚えている。

道を聞かれるだけでなく、テーマパークでは、写真もよく頼まれる。しかし快く撮った写真を見せると少々不服そうな顔をされる。そのたびに、「なんだか申し訳ないなぁ……写真の練習しようかな」と思うが、よく考えると、頼まれて撮ってやってるだけでもありがたく思ってほしいし、私が写真の練習をする義理もない。

この間、駅構内を歩いていたら「すみません、今って外、雨降っていますか?」と30~40代くらいの女性に話しかけられた。何気ない会話から宗教や何かの勧誘につなげたいのだろうか……とも勘ぐってみたが、「パラパラ降っていましたが、近距離なら傘が無くても大丈夫かもです」と答えると、ありがとう、と去っていった。何だったんだろうか……。

私がよく話しかけられる理由の一つとして「なんか、怒らなさそう」「小さいから、万が一襲い掛かってきてもどうにかなりそう」という点が挙げられるのではないかと思う。しかし、「社会やものごとをよく知っていそうな、常識的な人の見た目か」というと、話が違う。

3カ月ほど前も、旅行先で「すみません、この電車は○○駅行きますか?」とホームでこれまたマダムに話しかけられた。この日は旅行ということでいつも以上に張り切っており、フリフリリボンのドレスにボリューミーなパニエを装着し、旅情や乙女チックさを演出するため季節外れの麦わら帽子をかぶっていた。誰がどう見てもチグハグな出立ちで、当然街に溶け込んでおらず「ちょっと風変りな人」の服装だった。もっと言うと、大きなトランクも持っていたので、明らかに遠方から来し者だ。

幸い、私はその土地の電車について予習をしっかりしていたため「○○駅には行きますが、途中で車両の切り離しがあるので、5両目から前に乗ってください。そうすれば途中で移動をすることなく、座ったまま到着できますよ」と答えた。マダムは、ありがとう、と言って前の方の車両の扉へ向かった。マダムはなぜ、常識的ではない服装に身を包んだ風変わりな旅行者が、旅先の路線事情までしっかり予習していたことを見抜けたのだろうか……。

先日、友人に「私、めっちゃ道とか聞かれるんだけどなんでだと思う?」と聞いてみた。「わからないね……。だって私だったら、ゆうちゃんに道ですれ違って、何か聞こうと思わないもん。もっとちゃんとしてそうな人に聞くよ」と言われた。私も、そう思う。