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100年前の貴方に恋した No.4

                            著:小松 郁

4.
 
 「貴方、良い相手は居ないの?」

 電話の奥から聞こえてくる母親の声はなにか悲しげでもあり諦めている風でもあった。
僕が到底かなわない恋をしていることなど当然ながら何も知らない。

 「いや、僕には研究があるから。」

 僕は何気ない素振りでそれに答えた。

 「研究も良いけど貴方もう少し先のことも考えたら?
私たちもいつまでも生きられるわけじゃないわよ。」

 諦めたような声は続く。
うちの母親は昔ながらの古風な側面を持っている。
大学も出る歳になればそろそろ結婚するのも当たり前のように考えているのだろう。

 僕はその長閑さに悔しさを募らせながら答える。
多分彼女もこんな悲しみの中に生きたんだ。
僕は唇を噛みしめて吐き捨てるように言う。

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