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Ned Doheny「Hard Candy」(1976)

AORファンにとってはマストアイテムである本作。ウエストコーストのSSW系の人脈の源流にいたネッドですが、驚くほど寡作で、商業的なヒットにも恵まれていない方。それでもセレブ一族に生まれ育った故か、彼に焦りは全く感じられない。

ビバリーヒルズにはドヒニー・マンションという豪邸が存在しますが、彼はそこの元所有者の親族。石油王となったエドワード・L・ドヒニーはネッドの曽祖父にあたる方。そのエドワードが息子の結婚祝いにプレゼントした豪邸が、そのドヒニー・マンション(ネット検索すると直ぐに出てきます)。スケールが大き過ぎる話ですよね。

もともとネッド・ドヒニーはアサイラム第一期生として、ジャクソン・ブラウンと共に売り出されたフォーキーなシンガーで、1973年に発表したファーストアルバムは、随所にソウルフリークなネッドらしさが出ていたものの、商業的にはあまりパッとしませんでした。
そして本作。コロンビアへ移籍し、プロデューサーにはあのスティーヴ・クロッパーを迎えて白人スウィートソウルらしく纏まった作品となったのです。ジャケットも見ているだけでワクワクしてきますね~。

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ネッドというと本作収録の③「Each Time You Pray」や⑤「A Love Of Your Own」が代表曲。ネッド初心者の私でもこの2曲はよく知っておりました。特に「A Love Of Your Own」はアヴェレイジ・ホワイト・バンドのヴァージョンも有名で、ネッド=ポップ色の薄い白人ソウルというイメージがありました。

ただポップスが好きな私としては②「If You Should Fall」の撥ねるようなポップなメロディ・・・、それでいてしっかりソウル色もまぶされているこの楽曲にノックアウトされてしまいました。                バックヴォーカルはイーグルスのグレン・フライとドン・ヘンリー。サックスはトム・スコット。ちなみに本作のキーボードは全てデヴィッド・フォスターです。後のフォスター節と云われる趣は、本作ではあまり感じられませんが。

ネッドのことを語っている記事を読むと、「切なくも甘酸っぱい・・・」といった形容詞で語られることが多く、③「Each Time You Pray」や⑤「A Love Of Your Own」を聴く限り、その雰囲気は全く感じられなかったのですが、④「When Love Hangs In The Balance」は正にそういった楽曲ですね。この曲を自分の青春時代に重ねていたら、きっと思い出深い曲になっていたと思われます。ネッドの線の細いハイトーンヴォイスは、個人的にはソウルに合っていないと感じていますが、こうした楽曲にはぴったりですね。楽曲もほろ苦いし、大好きな1曲です。この曲のバックコーラスはリンダ・ロンシュタット、J.D.サウザー等が参加してます。

イントロのアコギのカッティングがかっこいい⑦「On The Swingshift」は、ネッドの代表曲「Whatcha Gonna Do For Me?」を連想させるファンク・チューン。ホーンはタワー・オブ・パワーです。ファンキーなドラムはGary Mallaberなる人物。正直あまり認識していなかったのですが、スティーヴ・ミラー・バンドのドラマーとして著名で、ベン・シドラン、ジャクソン・ブラウンなど多くのセッションに参加している名ドラマーです。ここでも軽快なドラミングを聴かせてくれます。

誰もが青春の思い出のように語っている名曲⑨「Valentine (I Was Wrong About You)」。ちょっとジャージーなバラード。実に雰囲気がありますね。夏の終わりに聴いていたい1曲。

ライナーノーツによると、ネッド自身は、本作をAORのレッテルを貼り、商品以外のなにものでもないように扱われたことに落胆せざるを得なかったと感じていたらしいです。

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上の写真、右端がネッド、他のメンバーが誰か、ご存知ですよね。ネッドは純粋に音楽を楽しんでいたのかもしれません。この写真は、アサイラムのメンバーの結束の堅さ、そして音楽を楽しもうという姿勢がよく現れた1枚だと思います。いいスナップ写真ですね。

本作、自身が大好きであったソウルをうまく昇華した名作。同じ年にボズの超名作が発表されたことは偶然ではないでしょう。時代がAORを生み出していったのですね。

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