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Ben Sidran「Dylan Different」(2009)

私の中のカバーの名手といえばケニー・ランキンベン・シドラン。残念ながら日本では御両名、知名度は今一つですが、とにかく洒落たアルバムを発表する方々です。ケニーは故人となってしまいましたが、ベンはもちろんまだまだ現役。今回ご紹介するアルバムはベンがボブ・ディランの名曲をカバーしたアルバム。もちろんアルバムタイトル通り、ディランの楽曲をベン流に大胆にアレンジしたカバー集です。発表当時、少し話題になりました。

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まず最初は、オリジナルはディランにしてロックチューンの①「Everything Is Broken」。1989年発表の「Oh,Mercy」に収録されていたナンバー。ちょっとブルージーなロックンロールを、ベンは予想通り、超クールにアレンジしてます。そもそもベンのヴォーカルも熱唱スタイルでない淡々と歌うスタイルですからね。もしこのアレンジがお気に召せば、本アルバムも「買い」だし、他のベンのアルバムもおススメします。

原曲はディランにしては陽気な楽曲の⑤「Rainy Day Woman」。
こちらも完全にベン・シドランの世界。オリジナルの陽気さは影を潜めて、あくまでもクールに…。アクセントのオルガンだけがちょっと陽気な雰囲気。コーラス隊も気だるい感じを醸しだしてますね。

多くの方がにカバーされている名曲⑧「Knockin' On Heaven's Door」。
村上春樹氏の「村上RADIO」でもオンエアされました。その時の村上さんのコメント…。
「ベン・シドランとはコペンハーゲンのジャズクラブで会って仲良くなったんですよ。カフェ・モンマルトルという古いジャズクラブがあって、ベン・シドランがライブに出ているというので聴きに行ったんだけど、向こうも僕のことをたまたま知っていて、休憩時間に二人でずっと話してました。けっこう趣味が合うんです。」
あ~、ベンと村上さん、如何にも趣味が合いそう(笑)。その後、ベンは村上さんにCDを送ったそうです。その中にこのアルバムもあり、村上さんは「Knockin' On Heaven's Door」が一番のお気に入りとのこと。私がとやかくコメントするより、村上春樹さんの一番お気に入りといえば、それで十分でしょう(笑)。イントロのクールなトランペットはマイルスの世界。最初のヴォーカルはJorge Drexlerって方。めちゃくちゃいいですよ、このカバー。

オリジナルは紙芝居のように歌詞の単語をペラペラめくるPVで有名な⑨「Subterranean Homesick Blues」。
これをベンはどう料理するのかなあと思ったら、やっぱり原曲とは違うアプローチ。クールでカッコいいなあ。これ、パッと聴いただけでは「Subterranean Homesick Blues」って分からないですね。ただ、ちょっとラップみたいな歌詞が「もしや?」と思わせるところかも。

⑨「Subterranean Homesick Blues」同様に名盤「Bringing It All Back Home」に収録されていた⑩「On The Road Again」。
オリジナルはロック色の強い力強いナンバーですが、これもベン流に料理してますね~。確かに歌詞は一緒ですが、原曲をよく知らなければカバーとは分かりませんね。

最後は超有名曲の⑫「Blowin' In The Wind」。
個人的にはこのアレンジ、あまりベンらしくないなあと感じます。静かなピアノだけのイントロからは「風に吹かれて」とは全く分かりませんが、ベンが歌いだすとカバーだと分かります。ベンにしては珍しく、一聴してカバーと分かるアレンジ。これはこの曲の持つ普遍性を意識して、敢えてこうしたアレンジにしたのかもしれません。崩すに崩せないほどの名曲ということでしょうか。

もちろんベン・シドランはまだ現役。彼の70年代に発表したアルバムはどれもおススメですが、今も相変わらず洒落た音楽をやっております。

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