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TOTO「Hydra」(1979)

TOTO流のAOR&ハードロックな名盤

個人的にはTOTOはデビューアルバムからビッグヒットした4枚目の「聖なる剣」までが大好きです。その初期4枚のアルバムはどれも個性的なんですが、このセカンドアルバム「ハイドラ」は今までずっと苦手意識が先行していました。
ファーストはどれもシングルヒット出来そうなキャッチーな曲が多く、サードはジャケットのユニークさと大好きな「グッバイ・エリノア」が収録されてますし、「聖なる剣」は言わずと知れた世紀の名盤。そうなるとこの「ハイドラ」はちょっと地味な印象なんですよね。アルバムも一聴しただけではピンと来ず、長らく私の記憶の片隅に追いやられていたのです。
それがちょっとした縁でじっくり聴く機会がありまして…。今更なんですがいいんですよね~。メンバー自身が「このアルバムがホントのTOTOのデビューアルバム」と語っていたらしいのですが、確かにバンドとしてのTOTOらしさが随所に溢れている名盤だと思います。

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そもそもこの1曲目の「Hydra」からして分かりづらい。ちょっとプログレッシブな展開(といってもプログレほど難解ではないのですが)は、キャッチーなファーストを好んでいたファンからすると、大いに戸惑ったのではないでしょうか。これを1曲目に持ってくることからして、TOTOの決意のほどがよく分かります。といってもよく聴くとTOTOらしいコーラスとハードな一面がよく現れた名曲なんですが・・・。こちらは珍しく、メンバー全員の共作です。

②「St. George and the Dragon」は今聴くと、キーボードが如何にもデヴィッド・フォスター風で、一瞬ホール&オーツかと・・・(笑)。でもギター&リズム隊は思いっきりヘビーです。AORでもハードロックでもない、これがTOTOの持ち味なのかもしれません。

このアルバムからシングルカットされた③「99」はスティーヴ・ルカサーの名ヴォーカルが光る美しい楽曲ですね。恐らくこの曲が「聖なる剣」に収録されていたら、もっとビッグヒットになった曲と思われます。絶妙なタイミングでカウベルを鳴らす私の敬愛するジェフ・ポーカロのドラミングが光ります。やっぱりジェフのプレイは素晴らしい。アイデアの宝庫です。

④「Lorraine」はアルバムのなかでは地味な曲かもしれませんが、実はこの曲のエンディングを聴いていて、ふっと「やっぱりこのアルバムいいなあ」と思った次第です。ここでもタイトなジェフのドラムがかっこいい。
そしてエンディングはヘビーなリフの繰り返しを変拍子を交えて展開していきます。このアレンジの秀逸さ、如何にもTOTOらしい展開なんですよね~。今までずっと聞き流していたのですが、改めて聴くといいなあと。

このアルバムで一番分かりやすい楽曲が⑤「All Us Boys」でしょうね。これは当初から大好きでした。TOTOはこうしたハードなナンバーがやりたかったのでしょう。確かにこうしたストレートなロックナンバーはファーストでは見当たりませんでした。
YouTubeに1980年の日本公演の貴重なライブ映像がアップされてましたが、これは当時某TV番組で放送されていたもので、どうも正式にはDVD化されていないようです。ちなみにサポートメンバー(Vo,G)はKeith Landryという方。ヴォーカルのボビーの一番Tシャツはご愛嬌にしても、とにかくスティーヴ・ルカサーがかっこいい。こんなにステージを動き回っていたんですね。この当時の彼のギターは最高です。エンディングにかけてはジェフのドラミングも相当熱が入ってきます。

ボビーの熱唱が光る⑥「Mama」。アダルトオリエンテッドなナンバーですが、このリズム、後にビッグヒットとなった「ロザーナ」とそっくりですね。ちなみに「ロザーナ」はジェフのシャッフルリズムが堪能できるナンバーで、ジェフ自身、これはジョン・ボーナムのリズムとバーナード・バーディのバーナードシャッフルを参考にしたと語ってます。つまり「Mama」で聞かれるシャッフルリズムも、この絶妙なグルーヴ感覚を堪能できるんですね。

本作中のハイライトナンバーは⑦「White Sister」でしょうね。これは鳥肌が立つくらいのスリリングなナンバー。イントロのデヴィッド・ペイチのキーボードから引き込まれます。ハイトーンのボビーのヴォーカル、あ~、これがTOTOなんだと。このスタジオ録音のヴァージョンのエンディングは、ジェフのドラミングが堪能できます。5分20秒くらいから、ともするとリズムを外すような怒涛の3連強烈なタム打ちが炸裂します。ジョン・ボーナムを彷彿させますね。あとサビに入る前のフィルインのタムの音、めちゃめちゃタイトですね。

う~ん、やっぱりいいアルバムですね。ネットで皆さんのご意見を拝見すると、実はこのアルバム、評価が高いんですね。商業的にはファーストの影に隠れてしまっているのですが、このアルバムが大好きだという方も結構いらっしゃいました。私もひょっとしたらバンドサウンドが堪能できるという意味で、TOTOのアルバムのなかで、一番好みかもしれません。

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