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大貫妙子「SUNSHOWER」(1977)

山下達郎さんと組んでいたシュガーベイブはポップスの名盤ですが、こちらは大貫妙子さんがバンド解散後、ソロとなって2枚目のアルバム。最近では海外でも70年代の日本のシティ・ミュージックが注目を集めてますが、以前記事にした松原みきさんと共に本作はその最右翼的存在の1枚。

当時はフュージョン・サウンドは、クロスオーバー・ミュージックって言い方をしていたらしいのですが、その代表格のバンドがStuff。当時のプロデューサーの国吉静治さんが述懐してましたが、レコーディング・スタッフで見に行った Stuff のコンサートで、このドラムがいい!彼を呼んで(大貫妙子の)アルバムを作ろう…ってことでその場で直接交渉し、クリス・パーカーを招聘したらしい。でも私なんかは、なぜStuffのもう一人のドラマーであるスティーヴ・ガッドじゃなかったのか、ひょっとしたらホントはスティーヴを招聘したかったのだが、ギャラが合わなかったのではないか…と勘繰ってしまいますが(苦笑)。

ってことで本作は全曲クリス・パーカーがドラムを叩いてます。彼の来日スケジュールに合わせて、レコーディングをしたもの。彼のドラムも素晴らしいのですが、それ以外の日本のメンバー、坂本龍一(Key)、今井裕(Key)、大村憲司(G)、松木恒秀(G)、渡辺香津美(G)、後藤次利(B)、細野晴臣(B)、クリス・パーカー(Ds)、斉藤ノブ(Per)、山下達郎(Cho)…etcと錚々たるメンバーが名を連ねております。この当時の最高のメンバーが作り上げたフュージョン・ライクなアルバムです。

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オープニングナンバーに相応しいイントロの①「Summer Connection」。この時代に流行っていたフィリーソウルっぽい。スムースなカッティングギターは松木恒秀。そしてカッコいいギターソロは大村憲司。彼のソロデビューはこの翌年ですから、彼のキャリアでは初期のプレイですね。

ちなみにこの楽曲はシングルとしても発表しており、そちらのバージョンは鈴木茂がギターソロを、村上ポンタ秀一がドラムを叩いているのですが、明らかに手数の多いポンタさんのドラムがこの曲には合ってます。イントロからドラムのフィルインで入ってきますからね。クリス・パーカーとも聴き比べてみてください。ポンタさんスゴイですね。

細野晴臣さんのトロピカル趣味が繁栄された②「くすりをたくさん」。もちろんベースは細野さん。細野さんはちょうどこの時期、1975年の「トロピカル・ダンディー」から1976年の「泰安洋行」1978年の「はらいそ」とトロピカル3部作を発表している時期。大貫さんもその影響を少しだけ受けたのでしょう。

クロスオーバーミュージックの典型例が③「何もいらない」。クールなシティ・ミュージックといった感じ。坂本龍一のフェンダーローズと、後藤次利のベースが効いてますね。エンディングのギターソロは渡辺香津美。これがまた絶品・余韻を残すようなギターソロです。

イントロがマーヴィン・ゲイの「What's Going On」を連想させるような展開の④「都会」。清水靖晃のソプラノ・サックスがいいですね。この楽曲のグルーヴ感も素晴らしい。クリス・パーカーのいぶし銀的なプレイが心地いいグルーヴ感を生んでます。

実にプログレッシブな⑥「Law Of Nature」。後にヨーロピアン3部作を発表するに至る大貫さんからは想像も出来ないフュージョン・サウンドです。ここでも渡辺香津美さんのギターソロが名演。

大貫さんの音楽はこの後、また変化していくのですが、本作はシティ・ミュージックの先駆け、フュージョンとニューミュージックの架け橋的なアルバム。聴き応えありますね。

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