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Tommy Bolin「Teaser」(1975)

トミー・ボーリンという悲劇のギタリストをご存じでしょうか?あのジェフ・ベックにも影響を与えたというギタリスト。ディープ・パープルをダメにした男というレッテルを貼られてしまいましたが、私は素晴らしいギタリストだったと断言します。

トミー・ボーリンを一躍有名にしたのが、1973年発表のビリー・コブハム「Spectrum」でのプレイ。そのぶっ飛んだプレイにジェフ・ベックが感化されたのは有名な話。その後、ジェイムス・ギャングに加入するも、1974年7月に脱退。本作の制作に取り掛かります。ちなみにトミーがリッチー・ブラックモアの後任としてディープ・パープルに加入するのが1975年6月。結局本作が発表されたのが1975年11月。つまりトミーがディープ・パープルに加入した後に発表されてます。

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参加ミュージシャンはジェフ・ポーカロデヴィッド・フォスタースタンリー・シェルドン(ピーター・フランプトンとのコラボで有名)、ポール・ストールワース(のちにフォスターとアティチュードを結成)、ヤン・ハマーナラダ・マイケル・ウォルデンデヴィッド・サンボーン…、そしてなぜかフィル・コリンズまで参加しているんですよ。いかにトミーがミュージシャンズ・ミュージシャンだったか、よく分かります。③以外全曲トミー作。

まずはオープニングの①「The Grind」。かなり黒いファンク・チューンです。ギターのリフも黒い!ここでのピアノは意外にもデヴィッド・フォスター、ドラムはジェフ・ポーカロ。彼のスネアの音って、もうちょっとカラッとしているのですが、ここではちょっとファンクっぽく叩いてます。フォスターも、後のフォスターっぽいプレイではなく、意外にもファンク的なプレイ。随所に出てくるスライドも心地いいですね。特にエンディングでのプレイは素晴らしい!

恐らくトミーをハードロックという括りで捉えてしまうと④「Savannah Woman」は、ズッコケてしまいます(笑)。なんとサルサのリズムを取り入れたマイナーチューン。サンタナ⁇ って思っちゃいますね。ここではトミーの絶品のギターソロが素晴らしい(←こればっかりですが)。トミー・ボーリンはやっぱりパープルに加入すべきではなかったかも。

アルバムタイトル・トラックの⑤「Teaser」。これもファンクですね。ギターリフが実にネチッこい。これもドラムはジェフ・ポーカロ。ジェフがこうしたハードなファンクチューンを叩くのって、珍しいですね。ハイハットワークはジェフらしい。途中途中でギターのブッ飛んだ音が聴こえます。間奏で、一旦曲が静かになり、段々と盛り上がってくるところなんか、ジェフのハイハットワークとトミーのギタープレイのコラボ、スリリングで実にカッコいい。

ジェフ・ベックの先をいった⑦「Marching Powder」。ジェフの有名なアルバム「Blow By Blow」は発表こそ本作より少し先ですが、 トミーのプレイにインスパイアされた制作されたもの。そしてこの「Marching Powder」は元祖トミー流のクロスオーバーミュージック。もちろんバックはヤン・ハマー(Key)とマイケル・ウォルデン(Ds)。ここでのサックスは意外にもデヴィッド・サンボーン。後の洒落たサンボーンとは違う、熱いプレイです。マイケルのドラムといい、トミーのギターといい、縦横無尽に暴れまくってますね~。

恐らく本作中、一番人気の高いナンバーと思われる⑧「Wild Dogs」。トミーのソングライティングのセンス、そしてトミーのヴォーカルも素晴らしいのです。なんとなくツェッペリンがやりそうな哀愁漂うバラード。とにかく楽曲が素晴らしい。トミーのヴォーカルと対を成すギター、やっぱり彼のスライドもカッコいい。中間からエンディングに向かうアレンジ、ギターソロも絶品…。

前述の通り、本作制作中にトミーは1975年6月にディープ・パープルに加入。偶然か、故意か分かりませんが、パープルの「Come Taste The Bamd」と本作は同じ月に発表されてます。この「Come Taste The Band」も賛否両論、巻き起こりました(むしろ否という意見が多かったかも)。私はグレン・ヒューズとトミーのコラボは大好きですが…。
で、権利問題の関係でクレジットされてませんが、実は本作の③「Dreamer」の最後のフレーズを歌っているヴォーカルはグレン・ヒューズなんです。グレンとトミーは音楽嗜好も合っていたし、仲が良かったんですよね。この曲、バラードとしても一級品の楽曲。なぜこうした曲が埋もれてしまっているんでしょう。グレンが歌いだすところなんか鳥肌モノです。

本作、ご紹介出来なかった楽曲も捨て曲なし。バラエティに富み過ぎて、かついぶし銀的な楽曲が多いので、如何にもマニア好みのアルバム。こうしたアルバム、私的には大好きですね。トミー・ボーリンとジェフ・ポーカロのコラボっていうのも意外だし。

トミーはディープ・パープルの重荷に耐えられなかったのかなあと。リッチー・ブラックモアとはあまりにも対極的なプレイだったし、トミーは抜群に器用なミュージシャンだったんですよね。彼の早逝があまりにも残念。存命されていたら、相当名作を残していった方じゃないかなと。

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