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Yes 「90125」 (1983)

私が洋楽を聴き始めた頃、大ヒットしていた曲がイエスの「ロンリーハート」でした。イエスではないイエスとも言われた本作、今回久しぶりにじっくり聴きました。「ロンリーハート」の印象が強烈だったので、その延長線上のものと捉えていたのですが、かなり練られた、素晴らしいアルバムだったんですね。

イエスは本作発表前、解散状態にありました。1980年に発表された「Drama」を最後にイエスは空中分解。そもそもその時点でイエスの看板ヴォーカリストのジョン・アンダーソンは居らず、クリス・スクワイアアラン・ホワイトスティーヴ・ハウのイエス残党組に、バグルズの二人(トレヴァー・ホーンジェフリー・ダウンズ)が加わり「Drama」は制作されたのですが、結局長続きはせず。トレヴァー・ホーンは自らのレコード会社(ZTTレコーズ)を設立。スティーヴ・ハウとジェフリー・ダウンズはジョン・ウェットン、カール・パーマーとエイジアを結成。残されたクリス・スクワイアとアラン・ホワイトは、ラビットを率いていたトレヴァー・ラビンを引き入れ、初代イエスのキーボーディストのトニー・ケイが加わり、シネマを結成。そこにプロデューサーにトレヴァー・ホーン、ヴォーカルにジョン・アンダーソンが加わり、新生イエスが誕生することになります(ややこしいですね~)。

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新生イエスのキーマンは何と言っても2人のトレヴァー、トレヴァー・レビントレヴァー・ホーンですね。いい意味でも悪い意味でも、この2人が従来のイエスを一新させたといえます。
その典型的な楽曲が皆さんよくご存じの①「Owner of a Lonely Heart」です。もうイントロからフェアライトを使ったオーケストラル・ヒットを用いて、度肝を抜かれます。トレヴァー・ホーンのお家芸といえますね。それからソリッドなギターにポップな楽曲。実質トレヴァー・レビンの作品なんですよね。トレヴァーのデモ・バージョンを聴いてみると、ギターが目立った産業ロックっぽい感じもしなくもありません。やっぱりジョン・アンダーソンの声と、トレヴァー・ホーンの大胆なアレンジが功を奏した1曲と言えるでしょう。

この流れでいくのかな~と思ったら、ロック寄りの3連のブルージーなナンバーの②「Hold On」。ここでもトレヴァーのギター、インパクトありますね。それから忘れてならないのは、ここでも美しいコーラスワークが健在ということ。イエスってデビュー当時、自らを「クリームのヘビー・サウンドにフィフス・ディメンションのコーラスを加えたもの」と表現していたことは有名ですね。

タブラとシタールがオリエンテッドな雰囲気を盛り上げる③「It Can Happen」。クリスのベースも際立っていてカッコいいですね。コーラスワークも美しいし、ポップなんですが、それぞれの楽器アレンジが凝っていて、新生イエスらしい楽曲です。

イントロから木琴みたいなサウンドが印象的な④「Changes」。変拍子を用いたスリリングな展開。ここはライブバージョンをアップしておきます。トレヴァーのギター、スゴイです!!あと、この曲では一部トレヴァーがリード・ヴォーカルを取っていたんですね。歌も上手いし、多彩な方です。

驚愕のアカペラの⑥「Leave It」。これもスゴイ。リード・ヴォーカル、これもトレヴァー・ラビン。

本作は初期イエスのファンからしたら、全くガッカリさせられる作品だったのかもしれませんが、プログレはちょっと苦手、でもロック・ポップスは大好きな私にとっては素晴らしい作品。オケヒを多用した「Owner of a Lonely Heart」ばかりの作品でもなく、どれもが凝った造りで、決して一筋縄ではいかないもの。80年代を代表するロックアルバムですね。


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