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Ben Sidran 「The Cat and the Hat」 (1979)

ベン・シドランをご存じの方がどれだけいらっしゃるでしょう。日本では全く知名度のないDr.JAZZこと、ベン・シドラン。

私はJAZZやAORに夢中になりだした頃、ベン・シドランの音楽にも随分のめり込んでいきました。特に今回ご紹介する「The Cat and the Hat」というアルバムが私のお気に入りです。本作は、JAZZやスタンダードナンバーを見事なアレンジで聞かせてしまうベンの卓越したセンスと、バックミュージシャンの演奏力が聴くものを虜にしてしまうアルバムで、ベンの全作品の中でも個人的NO.1の作品なんです。なかでもアルバムの最後に収録されているマイルス・デイビスのカバーの「Seven Steps To Heaven」、このスティーヴ・ガッドのドラミングが強烈で、最初に聴いたとき、あまりの手数の多さと迫力に圧倒されてしまいました。

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ベンの料理にお付き合い頂いたメンバーは以下の通り。

Ben Sidran Piano, Vocals
Steve Gadd Drums
Abe Laborie Bass
Mike Mainieri Vibraphone
Lee Ritenour Guitar
Michael Brecker Saxophone
Joe Henderson Saxophone
Tom Harrell Trumpet
Buzzy Feiten Guitar
Luther Van Dross Vocals
Paulinho Da Costa Percussion
Don Grolnick Organ
Tom Scott Saxophone
Pete Christlieb Saxophone
Jim Horn Saxophone
Jerry Hey Trumpet
Frank Floyd Vocals
Mike Finnegan Vocals

この当時のフュージョン界の売れっ子ミュージシャンを揃えた訳で、恐らく参加ミュージシャンも料理人としてのベンのセンスに惚れ込み、皆、楽しくプレイしたのではないでしょうか。

まずはアルバムトップを飾る①「Hi Fly」。Randy Westonというジャズ・ピアニストの楽曲で、原曲は1959年のビバップなジャズ。確かにメロディは一緒ですが、この原曲、こうアレンジしますか~っていうくらいに大胆に解釈。フィリー・ソウルというか、当時流行ったボズ・スキャッグスのような音といったらいいでしょうか。ここでの肝はエイブ・ラボリエルのファンキーなベースとスティーヴ・ガッドのタイトなドラムのリズム隊でしょう。正直カバーというよりも、ベンのオリジナルとして捉えた方がいいかも。マイケル・ブレッカーのソロも最高です。

セロニアス・モンクのカバーの②「Ask Me Now」。これまたカバーの領域からは完全に逸脱した(もちろんいい意味で)名演。ちょっとレイジーな演奏が、投げやりに歌うベンのスタイルにぴったり。ベンのエレピ(フェンダー?)が実に心地いい。

本作中、唯一のベンのオリジナル作品の④「Give It To The Kids」。ベンお得意のファンク・チューン。オーケストラも効果的に使った、ちょっとポップなチューンでもあります。ここでのブロウするマイケル・ブレッカーのテナー・ソロもかっこいい!!でもこの曲のハイライトは後段の子供のコーラス(笑)。なかなかいい味付けです。

⑤「Minority」はサックス奏者のジジ・クライスって方のカバー。原曲はハードバップなジャズですが、これを超ファンクに仕上げてます。ハッキリ言えば、原曲のイメージはここには全くありません。

⑧「Girl Talk」のオリジナルは映画に用いられたスタンダードナンバー。原曲はスローなバラード。これをメロウな雰囲気は残しつつ、洒落たアレンジでベンが小粋に歌ってます。リー・リトナーのギターがカッコイイ。

そして冒頭申し上げた⑨「Seven Steps To Heaven」。マイルスのバージョンもかっこいいのですが、それを上回るレベルを行くアレンジ。まずはマイルス・バージョンをアップしておきます。

オリジナルもイントロからスリリングです。バックのドラムも疾走感が半端ない。このドラムはトニー・ウィリアムス。ベースはロン・カーター、そしてピアノはハービー・ハンコックという超スター選手揃いのナンバー。それをカバーするっていうんですから、相当な自信がないとカバーなんかできませんよね。
そしてアップしたのがベンのバージョン。イントロからスティーヴ・ガッドのドラムソロ!もうガッドのための曲って感じ。この時期、ガッドはスティーリー・ダンの「Aja」って曲でも名演を残していますが、個人的にはこっちの方がスゴイ独創性に溢れていて大好きです。

ベン・シドランって、どうも日本では知名度が今一つですね。でも彼の、特に70年代に発表したアルバムはどれもおススメ。博識高い彼の音楽は、どこまでも素晴らしいのです。

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