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Carole Bayer Sager「SOMETIMES LATE AT NIGHT」(1981)

今月発売された「AOR AGE」という雑誌。1980年に発表された小説『なんとなく、クリスタル』の特集の中に、読者&識者アンケート企画:「たまらなく、クリスタルな1曲」という記事があるのですが、そこに私がピックアップした1曲とその曲のエピソードが掲載されてます。機会あれば是非ご覧ください。

ここの私のnote記事にはAORのアルバムは少ないのですが、私自身は大のAOR好き。そこで今回は「なんとなくクリスタル」の作者、田中康夫氏も大好きなキャロル・ベイヤー・セイガーの「真夜中にくちづけ」をピックアップ。

キャロル・ベイヤー・セイガーは作詞家として著名で、古くはモンキーズにも提供しております。自身は1977年にソロデビュー。デビューアルバム(「私自身」)も非常にクオリティが高いのですが、1981年に発表された本作品はAORの超名盤。後に旦那となるバート・バカラックとの共同作品で、オープニングの「Prologue」からエンディングの「Reprise」までメドレーで繋がっており、アルバム全体に一つの流れがある特筆すべき作品となっております。本作は一言でいうと、キャロルとバートの愛の物語…ですね。裏ジャケを先にアップしておきます。

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リチャード・ペイジスティーヴ・ジョージのペイジス組がコーラスで盛り立て、バックはデヴィッド・フォスタージェフ・ポーカロリー・リトナーリー・スカラー等当時のAORには必ず名を連ねる、凄腕メンバーが支えてます。プロデュースはバート・バカラックとブルックス・アーサー。
楽曲は極めてソフト。夜、一人で聞く音楽って感じでしょうか。

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①「Prologe」から続く②「I Won't Break」、リチャード・ペイジとスティーヴ・ジョージのコーラスが実にいい。サックスはジョージ・ヤング。実はこの曲のギターはリー・リトナー、ベースはリー・スカラー、ドラムはジェフ・ポーカロ。でも彼らの演奏とは分からないくらいオーケストラがあまりにもスィートなアレンジ。これがまたいいんですよね。

③「Just Friends」はバックヴォーカルになんとマイケル・ジャクソンが参加しております。しかもこの曲のみバート・バカラックと共にマイケルはプロデュースも手掛けてます。どことなくキャロルの声質にそっくり。一瞬、マイケル・ジャクソンなの?って思ってしまうくらい。サビに入る直前に、♪ I Wish You Understand ♪ と呟くその人こそマイケル・ジャクソン。          マイケルは「Off The Wall」でキャロルの「It's The Falling In Love」をカバーしてますね。その縁と思いますが、この曲もマイケルがスタジオに入ったその日に自分でコーラスをアレンジしたらしい。さすが天才!

私が大好きな楽曲がタイトルトラックの⑧「Sometimes Late At Night」、そして続く⑨「Wild Again」。両曲とも最高級のバラードです。このアルバムの特徴でもありますが、その華麗なバラードがメドレーで繋がれているのです。⑨はリチャード・ペイジがキャロルの頼りなげなボーカルをしっかりサポートしてます。田中康夫氏が本作を「飛行機の離陸時に聴くのがおすすめ」と評しておりますが、この⑧⑨はそんなイメージにピッタリ。

⑪「Sronger Than Before」はバートとキャロルに加えて、キャロルの盟友のブルース・ロバーツとの共作。ブルースはリチャード、スティーヴと共にコーラスで参加。そしてデヴィッド・フォスターがアレンジとキーボードで参加。フォスターは3曲に参加してますが、本作が一番フォスターらしさが出てますね。

この素晴らしい愛の物語も⑬「Reprise」で終着駅です…。素晴らしい作品、そして余韻を残すエンディング。

この作品発表後、バート・バカラックも復活。キャロルとバートは結婚しますが、後に離婚。それにしてもこの作品、制作中は二人が非常にホットな関係であったことがよく分かりますね。キャロルは以降、ソロアルバムは発表しておりませんが、個人的にはこの作品はAORの最高峰に位置する作品と思ってます。

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