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The Doobie Brothers「Livin' on the Fault Line」(1977)

1976年にマイケル・マクドナルドが参加して発表したアルバム「Takin' It to the Streets」は、もともとのドゥービーファンを多いに困惑させたに違いありません。トム・ジョンストンを中心とした豪快なギターバンドであったドゥービーが、キーボード中心の洗練されたサウンドに変貌してしまったのですから。

そして発表された本作。古くからのドゥービーファンからは総スカンをくらったことでしょう。しかしAORファンからは本作、非常に高い評価を受けることになります。
実は私はマイケルの居るドゥービーが大好きです。音の変貌という意味で、ドゥービーと比較されるのがイーグルスですが、イーグルスはカントリータッチの初期が、でもドゥービーはAORタッチの後期が好きなんです。なぜと言われても困ってしまいますが、やはりスモーキー・ヴォイスのマイケルには魅力を感じます。

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本作は、翌年発表された大ヒットアルバム「Minute By Minute」の影に隠れて地味な印象ですが、よく出来たアルバムだと思います。

初期ファンは1曲目から嫌いという反応を示すでしょうね。①「You're Made That Way」、もう完全にマイケル節全開です。シンコペーションの効いたマイケル独特のキーボードリフ。そして彼のスモーキーヴォイス。ワンアンドオンリーの存在感ですね。
ドゥービーの面子はバンドマンとして器用な連中が揃っていたので、この大変革にも実にスムーズに対応してます。ですからバンドとしての纏まりも随一だと思ってます。

そのバンドとしての魅力が現れたのがパット・シモンズ作②「Echoes of Love」と③「Little Darling (I Need You)」。ミーハーなもので、この2曲は大好きです。
特に「Echoes of Love」はパットとマイケルの魅力がうまくブレンドされた素晴らしい楽曲だと思います。まずは↓をご覧下さい。こちらはマイケルのパートをポインターシスターズが熱唱してますね。

パットがリードヴォーカルを務める佳曲ですが、ご覧の通り、ドゥービーらしいハーモニーとポップな楽曲がポイントです。そしてやたらと演奏がうまい!特にベースのタイラン・ポーターとギターのジェフ・バクスター。タイランは初期からのメンバーですが、結構腰のあるベースを弾く人物で、実はドゥービーサウンドの影の核ではないか?と思ってます。あとジェフはご存知の通り、マイケルと共にスティーリーダンに在籍していた経歴の持ち主で、かなりのテクニシャンです。

それから③「Little Darling (I Need You)」を知らない方のために、こちらも上と同じ時期のライブをアップしておきます。この曲はもともとはマーヴィン・ゲイの初期のヒット曲なんですが、このソウルを見事にドゥービーサウンドに仕立ててます。マイケルって、やはりソウルの人ですね~。明らかにマイケルの選曲と思われます。これも大好きな1曲です。

この②③、これだけでOKだと思いませんか(笑)。
もちろんAORファンであれば④「You Belong to Me」も外せません。カーリー・サイモンのカバーで有名ですよね。カーリーと言えばJT。当時の夫のジェームス・テイラーですが、彼も1975年にマーヴィン・ゲイの楽曲(「How Sweet It Is」)をカバーしてますね。この辺の人脈は繋がってますね。マイケルもJTのカバーを意識していたかもしれません。

それからクールな⑥「Nothin' But a Heartache」なんかもいいですね。ドゥービーなんでドラムが重たいですが、ジェフ・ポーカロなんかが叩けば完全にAORですね。

マイケルばっかり書いてしまいましたが、このアルバム、最後にパットの小作品が収録されてます。それが⑩「Larry the Logger Two-Step」。カントリー好きな私としては、こうしたギター1本の小作品が大好きです。パットの面目躍如といったところでしょうか?

この当時のパットについて、何を考えているんだ!といった批判もあったようですが、個人的には彼は結構楽しんでいたのでは?と思ってます。トムとは違い器用な一面もあるので、いい意味でマイケルから刺激を受けていたのではないでしょうか?

このアルバム、AOR好きにとってはかなり楽しめるアルバムです。「Minute By Minute」しか知らないAORファンは是非聴いてみて下さい。


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