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Kenny Rankin「A Song For You」(2002)

ここ千葉県は朝、少し涼しく、いや寒くなってきました…。来週はまた少し気温が上がるみたいですが、少しずつ秋が近づいてきているようです。

この時期って妙にハートウォーミングな楽曲を聴きたくなってしまいます。今回は地味ですが、素晴らしいアルバムをご紹介致します。

ケニー・ランキン…、そもそもよく知っているって方も少ないと思いますし、知っているとしても70年代のケニーのアルバムしか知らないという方が大方かと思います。今日ご紹介するアルバムは、結果的には彼の遺作となってしまった2002年発表の作品
個人的には70~80年代に活躍したアーチストの、90~00年に発表した「この人久しぶり」的なアルバムにはあまり興味をそそられないのですが、この作品は久しぶりに「素晴らしい!」と思った1枚なんです。

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本作はスタンダードナンバーをケニーらしく(大胆に)アレンジした全10曲の珠玉の作品集で、プロデュースはトミー・リピューマアル・シュミットジャズの名門レーベル、ヴァーヴから発表されてます。ギターにはデヴィッド・スピノザが参加。ベースはクリスチャン・マクブライド、ドラムはルイス・ナッシュのリズム隊。

まずはジャズのスタンダートナンバーの①「When The Sun Comes Out」。エラ・フィッツジェラルドやジュディ・ガーランド、バーブラ・ストライザンド等、多くのカバーが存在しますが、ケニーは相変わらず素晴らしいアレンジでこのナンバーを料理してます。ちょっとボッサな雰囲気、間奏のクリス・ポッターのテナーサックスが素晴らしい。この時期に聴くにはぴったりなハートウォームな1曲。

これもアレンジにビックリ。セロニアス・モンクの名曲③「Round Midnight」。いや、これはケニーのオリジナル??って勘違いしてまうほどの名アレンジ。ここでのデヴィッド・スピノザのギターはエモーショナルで心地いい。

⑤「Spanish Harlem」。恐らくイントロを聴いて、ベン・E・キングの「スパニッシュ・ハーレム」と分かる人は皆無ではないでしょうか。ただ、Aメロに入ると「おっ、スパニッシュ・ハーレム!」て分かると思います。この曲が一番原曲に忠実じゃないでしょうか(でも全く忠実じゃないですが)。間奏のホーンアレンジは実に牧歌的、ピースフルな世界感を感じさせます。

恐らく本作のハイライトは⑧「I've Just Seen A Face」、もちろんビートルズの中期の影の名作「夢の人」のカバー。いや、これはカバーではありませんね。歌詞は確かに「夢の人」だし、メロディも断片的に「夢の人」と分かりますが、ケニーの解釈は実にクリエイティブ。これを超える「夢の人」のカバーは存在しないのではないでしょうか。「夢の人」ってこんなにメロウだったかなあ(笑)。イントロを聴いただけで素晴らしい曲!って感じさせます。そういえば原田知世もこの曲を素敵にカバーしていましたね。

ヴァーヴ・レーベルの敬意を表し、4ビートジャズを最後にアップしておきます。⑨「Love Walked In」。こちらはガーシュウィンの作品ですね。原曲は小粋なジャズですが、ここではケニーらしく静かに始まります。リズム隊が加わると静かにスウィングしていきます。こちらもクリス・ポッターのテナーが素晴らしい。

如何だったでしょうか。この時期に聴くにはぴったりの音楽かと思います。アルバムタイトル曲は当然、レオン・ラッセルの名曲ですし、他にも名アレンジが詰まってます。是非Spotifyで聴いてみて下さい。

あと彼の70年代に発表されたアルバムはどれも素晴らしい(いや、彼の発表したアルバムはどれもクオリティが高いですね)。オリジナル曲も素晴らしいし、昔から彼のカバーには定評がありました。2009年に亡くなられたことが悔やまれます。

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