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Alcatrazz「Disturbing the Peace」(1985)

中学時代、グラハム・ボネット率いるアルカトラスが大好きでした。もちろんファーストアルバム「No Parole from Rock‘n‘ Roll」は聴きまくりました。イングヴェイ・マルムスティーンの抒情的なギターがお気に入りでしたね。なのでイングヴェイ無き後のアルカトラスのセカンド「Disturbing the Peace」も速攻で購入して、速攻で購入したことを後悔してしまいました(笑)。あの当時、私のようなファンが多かったのではないでしょうか。イングヴェイと後釜のスティーヴ・ヴァイとでは、あまりにもスタイルが違い過ぎますし、スティーヴのプレイを理解するには、イングヴェイのような、つまりリッチー・ブラックモアのようなスタイルを好むファンにとっては難解だったと思われます。

そしてあれから36年振りにこのアルバムをチェックしてみたんですが、これがまたいいんですよね。後にグラハムも「ファーストはレインボーのようだが、セカンドはスティーヴの革新的なギタープレイに支えられた」ような発言をされていて、このセカンドがグラハムのお気に入りとのこと。よく分かります。
1984年1月にイングヴェイ擁するアルカトラスは初来日を果たしますが、イングヴェイは直ぐに脱退。オーディションの末にスティーヴ・ヴァイが加入します。

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何度も申しますが、当時の私は本作、完全に理解不能で駄作!と決めつけておりました。確か商業的にも失敗だった筈です。
グラハム・ボネットと鬼才スティーヴ・ヴァイのバトルが楽しめる1枚なんですけどね~。スティーヴ・ヴァイはバークリー音楽大学卒の秀才で、フランク・ザッパ・バンドに加入。その採譜能力はフランク・ザッパに認められる程でした。そんなスティーヴにとってもアルカトラス加入がひとつの飛躍となりました。加入して本作発表前、1984年10月に来日公演がありました。既にその公演では本作から数曲演奏されてますが、それらすべて(というかアルバム全作品)スティーヴが作曲しております。

まず1曲目の①「God Blessed Video」から理解不能でした。シングルカットされた楽曲かと思いますが、いきなりのタッピング奏法。
敢えてライブ映像をアップしておきます。多分当時はこの曲、披露されていなかったんじゃないですかね。観客もどうノッテいいのか戸惑っている感じも。Bメロのリズムを刻むところからタッピング。今、観ても斬新です。こんなプレイするギタリストのギターソロは…、おお~!これまた斬新。後にスティーヴ・ヴァイはデイヴ・リー・ロスのバンドで「Yankee Rose」って佳曲を披露しますが、そのギターソロを彷彿させる変態ギターソロ(笑)。しかもギターソロを披露中にグラハムとキーボードのジミー・ウォルド―は談笑(苦笑)。
イングヴェイ好きからするとこの曲、やっぱり超亜流に聴こえたんじゃないでしょうかね。今聴くと、超カッコいい…と思うのですが、皆さんはどうお感じでしょうか。

先に本作のキラーチューンをご紹介しておきます。それが⑥「Stripper」。これはスティーヴ版の「Jet To Jet」ですね。来日公演ではこの「Stripper」、まだタイトルが「Jack The Ripper」となってますが、楽曲はアルバム収録バージョンそのもの。この映像を見て改めて思うのはアルカトラスってスティーヴ・ヴァイ以外のメンバーも相当演奏力あるってこと。ギターソロへ入る前のバースもハードロックバンドっていうよりプログレ的。完全にスティーヴ・ヴァイの趣味だと思いますが…。そこからのギターソロも実にスリリング。唯一、グラハムがピンクのタオルを首にかけたマイペースなスタイルだけは勘弁してほしいと思うのですが(笑)。

③「Will You Be Home Tonight」のようなAOR的な楽曲もあったりしますが、この曲もBメロがスティーヴ・ヴァイらしい変わった展開。あと1番目はグラハムはオクターブ下げて歌ってますが、2番目はいつもの熱唱スタイル(笑)。この曲は敢えてアップしませんが、イングヴェイのアルカトラス・ファンからすれば、全く受け入れられない曲でしょうね。今、冷静に聴くと、結構いい曲であることに気付かされます。

ちょっとレインボーっぽい楽曲が④「Wire And Wood」。
このグラハムの唱法が好き嫌いあるでしょうね~。私なんかはグラハムらしくて大好きなんですが。この曲は恐らくスティーヴが「レインボーっぽい曲」を意識して作ったんじゃないかなと思います。ギターソロは相変わらず超速弾き。ギターソロの後の展開なんかは、この時期のアルカトラスらしい演奏。しっかりした演奏を聴かせてくれます。

⑦「Painted Lover」のイントロ、どこかのバンドに似てませんか?
そう、ヴァン・ヘイレンです。特にこのイントロはエディのギタープレイに似ていますね。エディが亡くなった時、スティーヴがローリングストーン誌のインタビューに答えた記事を読みましたが、いい友人関係だったんですね。もちろんこの時点では、スティーヴにとってエディは友人ではなく、単なる憧れの存在だったわけですが。
アップしたのは、こちらも来日公演の模様。スティーヴ、なんとミニギターを弾いてます。よりトリッキーな音が出せるから、ミニギターで弾いていると思われます。イングヴェイが北欧的サウンドなら、スティーヴは完全にアメリカンですね。

この「Painted Lover」の次に短い曲ながらも強力なインストの⑧「Lighter Shade Of Green」が収録されてます。
こんな曲が収録されていたなんて気付きませんでした(笑)。全く記憶ないですね~。当時本作を真っ先に購入したのに全然聴いていなかったんですね…。
これも明らかにエディを意識したプレイですね。スティーヴにしては控えめな、メロディ重視のプレイですが、もっと聴きたい…と思わせるギターインスト。

続く⑨「Sons And Lovers」はレインボーというよりも、ヴァン・ヘイレンに近いアメリカン・ハード・ロックな音。
サビでブレイクするところとか、アレンジ面での凝った工夫が見られますね。

今の時代にあっても本作は賛否両論あると思うのですが、個人的にはこのアルバム、かなりクオリティは高いんじゃないかなと思ってます。イングヴェイのファーストだけでなく、このアルバムももっと評価されてほしいですね。

結局、スティーヴ・ヴァイも本作のみで脱退、デイヴ・リー・ロスに引き抜かれ、ベースのビリー・シーンとの激しいバトルを生み出したデイヴ・リー・ロス・バンドで大活躍します。アルカトラスはサードアルバム発表後に解散しますが、グラハムのソロ活動の延長線上で2007年に再結成。ところが昨年、グラハムが脱退。脱退はいいのですが、そこでまたアルカトラスを名乗ることとなってしまい、現在アルカトラスは2つ存在するというややこしい事態になっております。
御年73歳、まだまだグラハム・ボネットらしい活動をしております(笑)。


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