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Carpenters 「Lovelines」(1989)

カーペンターズのカレン・カーペンターは1983年2月に亡くなられてますが、彼女の死後、数枚、カーペンターズとしての作品が発表されてます。本作は1989年、カレンの死後発表されたアルバムとしては3枚目の作品です。

カレンはフィル・ラモーンのプロデュースによる初のソロアルバムを1980年に制作。ただしその作品はA&Mやリチャードの反対もあり、発表には至りませんでした。本作はその作品から4曲、TV番組用に制作された2曲、1977年~1980年までのアウトテイク等で構成されてます。言ってみれば音源蔵出し作品ということなのですが、フィル・ラモーン制作の4曲を軸に、結構内容の濃いアルバムとなっております。

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やはりアルバムトップ、かつタイトルトラックの軽快なナンバーの①「Lovelines」が素晴らしい。これは前述のフィル・ラモーンのプロデュースの1曲。マイケル・ジャクソンの「オフ・ザ・ウォール」に楽曲を提供していたロッド・テンパートンのペンによるもの。ロッドはヒートウェイブのキーボーディストでしたが、クィンシー・ジョーンズに認められ、作曲家に転進。この当時は頭角を現していた頃。非常にリズミカルな「Lovelines」、ベースはルイス・ジョンソン、ドラムはジョン・ロビンソンという強力なメンバー。非常にAORテイスト溢れる仕上がりです。

⑤「When I Fall In Love」はスタンダードナンバーとしても有名ですよね。イントロはどことなくカーペンターズの代表作「I Need To Be In Love」にそっくり。①のフィル・ラモーンのモダンなサウンドとは間逆の、オーケストラをバックとした、古き良きナンバーといった感じ。クリスマスにじっくり聴きたいアレンジですね。こうした楽曲をカレンに歌わせたら、右に出るものはいません。素晴らしい!
アップした映像はこの音源の元となったTV番組かと思われます。それにしてもカレン、痩せ過ぎですね。もうこの当時から、調子が悪かったのでしょう。それでもこんな素敵な歌声を出せていたんですね。

⑥「Kiss Me the Way You Did Last Night」は昔ながらのカーペンターズサウンド。一発で彼と分かる骨太なベースはジョー・オズボーン。ってことはドラムはロン・タットでしょうか。美しいメロディ、ハーモニー・・・。そしてこれも彼と分かる特徴あるギターソロは、トニー・ペルーソですね。

軽快なポップスの⑦「Remember When Lovin' Took All Night」。こちらはオリビア・ニュートンジョンとのコラボで著名なジョン・ファーラーの楽曲。この曲もフィル・ラモーンのプロデュース作品です。ドラムはリバティ・ディビート、ベースはダグ・ステッグマイヤー・・・、つまりビリー・ジョエル・バンドの2人ですね。この曲の軽快感はこの2人のリズム隊に拠るところが大きいです。
この曲の聴き所はやっぱりエンディングのボブ・ジェームスのキーボード・ソロ、そして2人のリズム隊のグルーヴ感、バックにはカレンの分厚いコーラス・・・、最高です。

最後はカレンらしいスタンダードナンバーのカバーの⑫「Little Girl Blue」。1935年の映画「ジャンボ」で使われた名曲。これも⑤「When I Fall In Love」と同様に、TV番組のために収録されたナンバーです。カレンって、本当に歌の巧いシンガーだったんだなあと、つくづく思います。

本作はフィル・ラモーンによって変貌を遂げたシティポップスとしての歌い手のカレンと、スタンダードなナンバーを歌うカレン、カーペンターズ・サウンドを歌うカレンと、それぞれがうまく編集された素敵なアルバムです。70年代のカーペンターズしか知らない方でも楽しめるアルバムと思います。

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