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笠井紀美子 「We Can Fall in Love」 (1976)

笠井紀美子・・・。すごく気になる存在でしたが、正直じっくり聴いたのは本作が最初なんです。
京都生まれ。1964年に上京して、以降、多くの巨匠と共演してきたジャズ・ヴォーカリスト。

本作は1976年発表の和製レア・グルーヴな名盤として名高い作品。自らもテナー・サックス奏者で、マイルス・デイビスの殆どの作品のプロデューサーとして知られるテオ・マセロがプロデュースを担当。アレンジは、シカゴ・ジャズ・ファンク界の重鎮のリチャード・エヴァンスが担当。そしてフォトグラファーには篠山紀信を迎えて制作。

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全8曲。クールなフュージョン、場合によってはジャージーに。とても演奏がシャープです。それにしても不思議なのは、こんなに素晴らしい演奏をしているのに、演奏者のクレジットが一切ないこと。レーベルとの契約の関係で、敢えて名前が出せなかったのでしょうか。キーボード奏者のテニソン・スティーブンスの楽曲が2曲収録されているので、キーボードは彼でしょうか。テニソンといえば、本作発表の前年に、フィル・アップチャーチと共同名義でアルバムを発表してます。ってことはギターはフィルでしょうか。ちなみにそのアルバムにはエリック・ゲイルスティーヴ・ガッドラルフ・マクドナルドデヴィッド・サンボーン等が参加してます。ひょっとしたらこんなメンツが本作に参加しているのかもしれませんね。

さて、本作のオープニングトラック、①「We Can Fall In Love」、シャープなギターカッティングと16ビートのハイハットが心地よいイントロから、シンコペーションの効いたアレンジ、グルーヴィーにビートが疾走するナンバーです。クールなギターソロ、ミュートの効いたトランペットソロとか、実にオシャレなサウンド。個人的には本作No.1の作品。そして本作のみが笠井紀美子自身が書いたオリジナル作。

④「This Masquerade」は、あの有名なレオン・ラッセルの名作。この当時だとジョージ・ベンソンのメロウなバージョンが有名だったかも。それをここでは大胆にレゲエ・タッチにアレンジしてます。

⑤「God Bless The Child」はビリー・ホリディの代表作。これを洒落た演奏にアレンジし直してカバーしております。

⑥「Being In Love」はリチャード・エバンスのオリジナル作品。トランペットが洒落ている、小粋な4ビートジャズ。オープニング・ナンバーの和ディスコな雰囲気とは全く違います。でもこっちが本来の笠井紀美子なのでしょうね。

リチャード・エバンス作のクールなジャズ・チューンの⑦「Along The Nile」。どこか都会の夜を思わせるような、バックの演奏はアジムスのような浮遊感を感じさせる名演奏。

笠井紀美子は翌年にはこれまた超名盤の「Tokyo Special」を発表。このファースト・トラックの「バイブレイション」は山下達郎さんの作品(作詞・安井かずみ / 作曲・山下達郎 / 編曲・鈴木宏昌)。この曲、もともとは達郎さんが、LINDA CARRIEREというアーチストに提供した楽曲。ただしそのアルバムはお蔵入りとなってしまい、巡り巡って笠井紀美子がカバーをしたというもの。実にグルーヴィーでファンキーな作品です!


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