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The Band「Stage Fright」(1970)

ザ・バンドのサードアルバム「Stage Fright」発売50周年盤発売

昨日、本作の50周年記念盤が発売されたらしい。私はあまりこうしたリイシューには興味がないので、何が目玉なのかよく分かりませんが。 

ザ・バンドの1970年発表の3作目。ザ・バンドといえばファーストとセカンドがあまりにも名盤過ぎて、この3作目がすっかり目立たない存在となってしまってます。また、もともとウッドストックの劇場に観客を入れたライブ録音を目論んだものの、そのライブは中止。結局、観客を入れない形でのスタジオ一発録音で完成。メンバーの健康も決して良好とはいえず、あまりいい状態ではなかったということもあったでしょう。
またファーストとセカンドがアメリカン・ルーツ・ミュージック的、かなりスワンプ臭を漂わせたものである一方、本作はより洗練されたポップナンバー、ロックナンバーが揃っていることも、ファンを戸惑わせた要因かもしれません。

でも私は本作、結構好きです。ザ・バンドとしては一番ストレートなロックが楽しめるアルバムだし、やっぱりメンバー間の楽器の使い方とか、それぞれの味わい深いヴォーカルが堪能出来ますしね。

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アルバムトップナンバー①「Strawberry Wine」からご機嫌なナンバーです。ヴォーカルはレヴォン・ヘルム。ここではドラムのレヴォンが、この曲をロビー・ロバートソンと共作したためかギターを弾き、その代わりピアノのリチャード・マニュエルがドラムを叩いてます。意外とリチャードのドラム、ねちっこくていいですね。ストレートなロックに乗っかる、ガース・ハドソンが弾くオルガンの音色がいい味出してます。

ザ・バンドの作品中、屈指の名バラードが②「Sleeping」。リチャードがロビーと共作した作品。そのリチャードが素晴らしいヴォーカルを聞かせてくれます。レヴォンに「ザ・バンドのリード・ヴォーカルはずっとリチャードだと思っていた」と言わしめたほどの熟成されたヴォーカル。そのヴォーカルが美しいワルツに舞っているようです。素晴らしいメロディとリリカルなピアノ。こんな素晴らしいミュージシャンなのに、リチャードは酒とドラッグに溺れてしまい(ザ・バンドの解散の一因でもありますが)、1986年3月自殺してしまいます。そんなことに思い馳せると、この曲、切ないですね。

③「Time To Kill」ではベースのリック・ダンコがリードヴォーカルを務めます。セカンドリードはリチャード。これも軽快なロックで、リックのベースが曲を引っ張ります。ここでのドラムもリチャードですね。

④「Just Another Whistle Stop」もスワンプ系ロック。イントロのギターなんかは、ビートルズのホワイトアルバムに出て来そうなトーン。これもリチャードのリードヴォーカルです。途中7拍子なんかも出てきますが、ザ・バンドの曲って、よく聞くとホント凝ってますね。ロビーの才能には脱帽です。
ここでライブ映像をアップしておきます。最初のインストではガースおじさんがサックスを吹いてます。またベースのリックなんかは、愛らしいですね。

そして本作中、一番のお気に入りが⑥「The Shape I'm In」。この曲大好き!って方、多いのでは??
リチャードの弾くクラビネットが、この曲のシャープなロックのイメージを引き立ててますね。そしてここでのリチャードのヴォーカル、最高です。またリックのグイグイ押し込んでくるベースも大好き。確かにこの曲はファーストやセカンドの土臭いロックからは、ちょっと遠いシャープなロックですね。アップした映像は映画「ラストワルツ」からのシーン。おそらくメンバー間では嫌悪感漂うムードだった筈なのに、ここでの演奏は実に楽しそう。

⑦「The W.S.Walcott Medicine Show」はヘビーでありながら、ちょっとディキシー・ランド・ジャズの香りも感じさせるナンバー。レヴォンとリックのヴォーカルの掛け合いが堪能できます。アップした映像でもそれは確認出来ますね。それにしてもこのグルーヴ感はザ・バンドならではですね。

ここでようやく初期の香りを感じさせる⑧「Daniel And The Sacred Harp」が登場します。レヴォンとリチャードの強力な2人のヴォーカル。12弦ギターはレヴォン、ロビーはオートハープを弾いてます。ヴァイオリンはリックです。アメリカン・ルーツ・ミュージック的なサウンドですね。

アルバムタイトルトラックの⑨「Stage Fright」。Stage Flightではありません(笑)。ステージ恐怖症…ですね。この曲も洗練されたロックです。リフは軽快なピアノが奏で、リックのヴォーカルもスワンプ指数の低い、サラッとした歌い方。ここも「ラスト・ワルツ」の演奏シーンをアップしておきます。

ザ・バンドがファースト、セカンドでルーツミュージックを追求し、そこから次に求めたものがロックンロールだった訳で、深遠なロックを期待したファンからはスルーされてしまったサードアルバム。でも洗練されたロックがそこには見出され、個人的にはとても大好きな1枚。

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