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大滝詠一 「NIAGARA CONCERT '83」 (2019)

大滝さんが1981年3月21日に発表したアルバム『A LONG VACATION』の発売40周年記念アイテム『A LONG VACATION 40th Anniversary Edition』が2021年3月21日 にリリースされました。そして同時にナイアガラレーベル時代の全177曲がサブスク解禁となりました。

よく解禁になったなあと思いますね。そして今から2年前の同じく3月21日。こちらも当時驚いたのが、大滝先生のライブアルバム「NIAGARA CONCERT '83」の発表。今回のサブスクにもシッカリ配信されてます。なかなか面白いライブアルバムなので、当時私が聴いた感想をアップしておきます。

本作は1983年7月24日に西武球場で行われた「ASAHI BEER LIVE JAM」を収録したもの。当時の出演者はラッツ&スター、大滝詠一さん、サザンオールスターズという調豪華布陣。完璧主義者だった大滝さんのこと、こんなアルバム発売するなよ!って天国でボヤいていらっしゃるかもしれません。

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一聴して思ったのは、これライヴ⁇っていうくらい音の完成度が高いということ。特に40名の新日本フィルハーモニー・オーケストラの演奏の音が、室外だというのに実にクリアだということ。賛否両論、当時は絶対あっただろうなあと思った①~⑤。オケの調音から始まる①「夢で逢えたら」から⑤「カナリア諸島にて」まで、なんと大滝さんは登場せず(笑)。オケとバックバンドの演奏のみのインストなんですから。

このライヴに大滝さんを口説き落とした亀淵昭信さんの「あなたのストリングスを夕方の西武球場で聞きたいんだ」のひとことが象徴する選曲ですが、それにしてもラッツやサザンを見に来たファンからしたら、退屈で眠くなるようなイージーリスニングを聴かせやがって!なんて思った筈だし、ファンでさえも、次は大滝さんが出るのでは?と思わせて5曲もオケをやられてしまったら…(笑)。
ただし後から結果が分かっててコレを聴いている私たちからしたら、この5曲、ドリーミーなポップスを見事にオーケストラで表現している創造的な楽曲で、特に③「Water Color」なんかのパーカッションは、Pet Soundsを連想させるし、いいですね~。日曜日の午後、これらを聴いて昼寝したいです!

さて肝心の御大、大滝詠一さんは⑥「オリーブの午后」でようやく登場。⑦「ハートじかけのオレンジ」なんかでもよく分かりますが、島村英二のタイトなドラムスと、元SHOGUNの長岡道夫のグルーヴィーなベースが光ります。

このライヴ、時期的には1981年発表の「ロング・バケイション」、1982年発表の「ナイアガラ・トライアングル Voi.2」の後ということになります。本当は「イーチ・タイム」を1983年7月、つまりこのライヴに合わせて発表する筈だったのですが、それが遅れてしまったことで、ここでのライヴは発表された楽曲を中心にセレクトされてます。
⑥~⑧が「ナイアガラ・トライアングル Voi.2」、⑨「雨のウエンズデイ」が「ロンバケ」。そして⑩から3曲がセルフカバー・コーナー。

まず⑩「探偵物語」と⑪「すこしだけやさしく」が1983年5月に薬師丸ひろ子が発表したシングルのカバー。我々エイティーズ世代にとってはお馴染みの楽曲。もともとは「すこしだけやさしく」が「探偵物語」というタイトルだったとか…。
私は大滝サウンド全開の「すこしだけやさしく」の方が断然大好きです。このライヴでは吉川忠英さんを含む4人のアコギメンバーが参加してますが、40人の新日本フィルと4本のアコギ、パーカッションが奏でるナイアガラ・サウンド、なかなか豪快です。

この流れに乗る形で、これまた爽やかなナイアガラ・サウンドの⑫「夏のリビエラ」。これまた皆さん、よくご存じの1982年11月に森進一に提供した「冬のリビエラ」の英語&Summerバージョン。これもまた聴き応えがあります。

ラスト3曲は「ロンバケ」からの人気ナンバーの⑬「恋するカレン」、⑭「FUN×4」、⑮「Cider 83'~君は天然色」。私、「FUN×4」が大好きなんですよ。特にビーチボーイズが大好きだったんで、もちろんビーチボーイズの「Fun Fun Fun」やフォー・シーズンズなんかも好物だったもので…。で、ここでのライヴの「FUN×4」、最高ですよ~。タイトなドラムからスタートして、大滝さんが掛け声(奇声?)を上げてベースが入ってきて…。2小節毎に楽器が次々と加わってくる演出。そしてコーラスまでもが一人一人重なってくる仕掛。最後に大滝さんがコーラスに乗っかってくるポップな演出、いいですね~。
私、この当時の大滝さんプロデュースの最高傑作の松田聖子「風立ちぬ」のアルバムが大好きなんですが、こうした遊び心のある演出は、このアルバムの「いちご畑でつかまえて」って曲を彷彿させます。
(そういえば「風立ちぬ」も忠英さんを含む4人のアコギを掻き鳴らして、フィルスペクターサウンドを再現されてましたね)

本作では唯一、残念だったのは⑮「君は天然色」のサビに入る前の2拍3連のキメを、そのまま流していること(♪ 別れの気配を~ ♪のところ)。これはレココレ4月号の特集記事でも言及されてますが、これだけのプレイヤーだったら、出来ない訳がないんですけどね。下のアップしたライヴ(音悪いですが)ではしっかりやっているのですが。

本作はホントの最後、新日本フィル演奏の⑯「夢で逢えたら、もう一度」で、しっとりとクロージングされます。そして大滝詠一はこの演奏が、本当にライヴとしては最後の演奏となってしまいました。
(ちなみにYouTubeにはCD音源ではなく、ラジオ音源の一部抜粋の音源があったので、ご参考までにアップしておきます)


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