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Al Jarreau「All Fly Home」(1978)

黒人R&Bとは全く違う唄法のアル・ジャロウ。ジャズ・フュージョン色の強い音楽で、独特のジャンルを築き上げたヴォーカリストですね。

デビューは1975年。我々AORファンにとってはジェイ・グレイドンと組んだ1980年のアルバム「This Time」や1983年のAORヒット曲「Mornin」があまりにも有名で、アル=ジェイの強力コンビが連想されてしまいます。
でもそれ以前は、もうちょっとフュージョン色の強い曲もやっていました。
この1978年発表の本作はそんな一枚。リー・リトナーが全面参加した好盤です。

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プロデュースはデビューアルバムから御馴染みのアル・シュミット。エンジニアはモンキーズの仕事で有名なハンク・シカロ(!)。なんとなくこれらの名前で内容が想像できますね。
またこのアルバム、原題は「All Fly Home」ですが、なぜか邦題は「風のメルヘン」。恐らく印象深いメルヘンチックなジャケットから採られたものと思われます。またアルの多くのアルバムで、(多分)唯一本人が登場していないジャケットです。

アルバムトップを飾る①「Thinkin' About It Too」から軽快なポップソングです。
アルのしなやかなヴォーカルはこうした軽快な曲にはぴったりです。また撥ねまくっているジョー・コレロのドラムがとてもいいですね。アルとデビュー当時からの盟友であるトム・カニング(Key)の作品。

このアルバムのなかで特に私のお気に入りが②「I'm Home」。
ここで聴かれるフリューゲルホルンが最高なんですね~。とてもジャージーで、それに絡むソフトなアルのヴォーカルが何とも言えない芸術的な香りを放ってます。このホルンはジャズ界の御大、フレディ・ハーバード

ポップな①、ジャージーな②、そして3曲目はその中間(??)をいくようなソフトなAOR的楽曲の③「Brite 'N' Sunny Babe」。
この曲はアル単独作品です。アルの独壇場である素晴らしいスキャットが聴けます。
アルというとスキャット唄法ばかりが注目されがちですが、実はコンポーザーとしてもスゴイ人なんですよね。

このアルバムにはAORファンには堪らない名曲⑥「Wait a Little While」が収録されてます。
もちろんケニー・ロギンスのカバーですね。ケニーよりかなりポップな感じに仕上がってます。個人的にはやっぱりケニーのヴァージョンの方が好みですね。

カバーといえばもう2曲。ビートルズの⑦「She's Leaving Home」とオーティス・レディングの⑨「(Sittin' On) The Dock of the Bay」が収録されてます。
「She's Leaving Home」はかろうじて原曲のメロディが分かるくらいのジャージーなアレンジですが、⑨「(Sittin' On) The Dock of the Bay」となると原曲とは全く違う曲に変わっております。歌詞が同じであることは分かりますが(笑)。あのR&Bの名曲が、全く黒さが抜けており、完全にフュージョン的な1曲となってます。

この作品以降はジェイ・グレイドンがアルを完全にAORの世界へ誘ってしまい、アルは商業的な成功を収めていきます。本作はその前夜的なアルバム。地味なアルバムですが、確実にその萌芽が感じられるアルバムですね。

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