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Boz Scaggs「My Time」(1972)

ボズ・スギャッグスというとAORというイメージが強いと思われます。彼がスティーヴ・ミラー・バンドに在籍していたとか、スワンプやR&Bをやっていたというと、多くの方が驚かれるでしょうね。
しかもボズの1969年に発表されたセカンド(スティーヴ・ミラー・バンド加入前にアルバムを1枚発表しているのでセカンド・・・ですが、実質的なファーストですね)アルバムはマッスル・ショールズ・サウンド・スタジオで収録されてます。マッスル・ショールズ・・・、アラバマにあるサザン・ソウルの聖地ですね。ボズのスタートはサザン・ソウルだったのです。

それから時が流れて1972年。ボズは再びマッスル・ショールズでアルバムを制作します。それが本作、「My Time」です。全10曲、6曲をマッスル・ショールズ、4曲を馴染みのバンドメンバーとサンフランシスコで収録しております。

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マッスル・ショールズというとロジャー・ホーキンス&デヴィッド・フッドのリズム隊があまりにも有名ですが、本作でもその2人がリズムを担ってます。
そのマッスル録音、かつ本作から唯一のシングルカットが①「Dinah Flo」。ボズ・オリジナルの作品です。このアルバムのなかでは一番垢抜けている曲といえます。ポップでありながらも、どこかサザン・ソウル的な味わいがありますね。

③「Full-Lock Power Slide」、これもサザンブキー的な要素を残しつつ、軽快なロックンロールに仕上がってます。カッコいいロックです。これはサンフランシスコ録音なので、ギターはボズ自身が弾いてます。

④「Old Time Lovin」はなんとアル・グリーンのカバーです。
しかもヴォーカルもなんとなくアルを真似ているように聞こえます。比較的原曲に忠実にカバーしてますね。これぞサザン・ソウル、R&Bの極みです。紳士然としたAORのボズしか知らない人にとっては、このカバー曲は極めて違和感のある楽曲に聞こえるかもしれません。でも当時のボズはR&Bフリークだった筈で、この他にアラン・トゥーサンのカバーも2曲収録されてます。それにしてもネチッこいグルーヴが堪りません。

せっかくなので、そのアランのカバーも1曲アップしておきます。これは私も結構気に入ってます。⑦「Freedom For The Stallion」。楽曲が持つ安堵感が心を落ち着かせてくれます。原曲はもうちょっとスローテンポで、やっぱりネチッこい(笑)。名曲なのか、スリードッグナイトもカバーしておりました。

最後にご紹介するのはボズお得意のシャッフルロックの⑨「We're Gonna Roll」。やっぱりこの当時からこういう曲を作ってたんですよね。アレンジはサザンソウルなんですが、この曲、TOTOにアレンジさせたら、やっぱりAOR風味に仕上がっていたと思うんですよね。だからボズとしては大きな変化を成し遂げたという訳ではないと思うんですよね。

この後ボズは1974年、ジョニー・ブリストルのプロデュースによる「Slow Dancer」を発表。そして1976年の例の名盤を発表するに至るのですが、その流れは脈々と本作から連なっているのでした。

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