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Brian Wilson「No Pier Pressure」(2015)

9月に入り急に涼しくなって、いわゆる「晩夏」の時期は過ぎてしまいましたが、この時期、いつもビーチボーイズを聴いて、過ぎ行く夏の季節を味わっております。ということで今回はブライアン・ウィルソンの現時点での最新作です。

2012年に行われたビーチボーイズ結成50周年ツアーは、日本にも幕張・名古屋・大阪に来てくれました。当時、1回目の名古屋単身生活を送っていた私は、ブライアンの在籍するビーチボーイズを生で見れる機会なんてもう2度とないと思い、名古屋公演に行きました。その時の前座はなんとアメリカ!幕張では当時は無名だった星野源も登場したらしい。でもその後、予想通りビーチボーイズは分裂。ブライアンはBBを離れてしまいます。ただし創造意欲は旺盛だったようで、その勢いでこのソロアルバムを作り上げたのでした。

ちなみに2013年9月には、ブライアンはジェフ・ベックとのジョイント・コンサートをやってます。どんな内容だったんでしょうね。音楽的には全く合わないと思うのですが。ブライアンはジェフとの共演音源もレコ―ディングしたのですが、結局発表は見送られました。
それにしてもこのアルバム、素晴らしい内容です。実はこのアルバムの存在は、恥ずかしながらあまり認識なかったんですけどね…。今の去り行く夏にピッタリと思い、ご紹介する次第です。

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プロデュースはブライアンとジョー・トーマス。新進気鋭の若手ミュージシャンとのコラボや、BBメンバーのアル・ジャーディンデヴィッド・マークスの参加…、当時は話題になりましたが、ブライアン流のメロディが現代風にアレンジされております。デヴィッド・マークスはBBには一瞬しか在籍していませんでしたが、50周年ツアー以降はブライアンやマイクと積極的にギタリストとして関与されてますね。

まずはオープニングの①「This Beautiful Day」をお聞き下さい。美しくも繊細なメロディに絶句…。
この温かみのあるアルバムのオープニングに相応しい序章曲。まだまだブライアンの想像力は枯渇しておりませんでした。最新のアレンジの中でも、やっぱりキーとなるのはコーラスですね。

ちょっと不意打ちを食らってしまう④「On The Island」はボサノバタッチの楽曲。
フューチャーリング、シー&ヒム。シー&ヒムとは女優のズーイ・デシャネルと、ノラ・ジョーンズへの作品提供で知られるシンガー・ソングライターのM・ウォードのデュオ。アップした映像のズーイ、愛らしいですね。ブライアンがこんな愛らしいボッサが書けるとは…、ちょっとビックリ。リラックス・ムード満点です。

⑦「The Right Time」は今のビーチボーイズ・サウンドといっていいでしょうね。少なくとも60~70年代のBBには、こうしたメロディはなかったかな。
イントロはサンタナっぽい雰囲気。でもアルが歌いだすと、そこはブライアンの世界。このサビは皆が待ち焦がれたブライアンのポップスですよね。間奏のコーラスアレンジも最高です~。
歌詞が出てくるこのPVもいいですね。ブライアンがベースのコーラスを歌っていたり、デヴィッドのブルージーなギターシーンとか。

⑩「Somewhere Quiet」は私の大好きなビーチボーイズのアルバム「Summer Nights」に収録されていたインストナンバーの「Summer Means New Love」をリメイクしたもの。これも素晴らしい!!
1965年に発表されたもともとのバージョンは、典型的な3連ロッカバラード調のメロウなインストナンバーで、ビーチボーイズのメンバーではブライアンだけがピアノで参加。印象深いリードギターはレッキング・クルーのトミー・テデスコが弾いておりました。夏の終わりを惜しむような切ないメロディが大好きなんですが、それをブライアンのヴォーカルを載せてリメイク…、感動モノですね。今年の晩夏はこの曲でキマリです!

ちょっとノスタルジックなメロディの⑫「Tell Me Why」。
近年のブライアンらしい楽曲。ブライアンのヴォーカルから引き継がれるように歌うアルのヴォーカルが素晴らしい。ブライアンからアルへ引き継がれる間をつなぐコーラスもまた泣かせます。これがブライアンの音楽なんですよね。このメロディ、コーラスを聴きたかった方、多いんじゃないでしょうか。

美しいバラードの⑭「One Kind Of Love」。このPVはブライアンの自伝的映画「Love & Mercy」の映像が使われてます。もちろん本作発表当時の73歳のブライアンも、ピアノの弾き語りやレコ―ディング模様がアップされてます。
オーケストラのアレンジや間奏のコーラスとか、ペットサウンズっぽいサウンドも聞かれますが、やっぱり丸くなったなあっていう印象。本作全体にもいえますが、決して尖がったところがあるわけではなく、万人受けするような美しいサウンドに仕上がってますね。

こういうポップスってつまらないって思われる方もいらっしゃると思いますが、私自身はポップスが大好きなので、このテの楽曲集は堪らなく好きです。特にブライアン・ウィルソンのポップスって、完全にカムバックした90年代以降、さらに冴えわたってきているような気がします。もうブライアンも79歳ですが、まだまだ素敵なポップスを発表してくれるんじゃないかと期待しております(もちろん来日も…)。


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