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The Beach Boys「Love You」(1977)

暑くなってきましたね~。そんな中、私もついに1回目のワクチンの職域接種をする機会に恵まれました。副作用といわれる発熱・倦怠感は全くありませんが、腕が痛いのはしょうがないですね。

あとオリンピックは元サーファーの私としてはサーフィンを堪能。観戦していたら、ついついビーチボーイズが聴きたくなってきました。夏といえば60年代のビーチボーイズがピッタリですが、今回ご紹介したかったアルバムはビーチボーイズ低迷期の名作。恐らく「Love You」といって、ピンと来る方は殆どいないんじゃないでしょうか。でも実は埋没させてしまうにはあまりにももったいない作品なんです。

ビーチボーイズのリーダーであるブライアン・ウィルソンが精神状態が悪化していったのが1966年過ぎ。徐々に音楽活動にも支障をきたすようになり、ライブではブライアン以外のメンバーが奮起するも、アルバムのセールスには繋がらず、低迷期に陥ります。
そんな中、1974年に突然、初期のヒット曲を収録したベスト盤「エンドレス・サマー」がヒット、全米No.1を記録します。この勢いにより「ブライアン・イズ・バック」なるキャンペーンを展開し、発表されたアルバムが「15 Big Ones」。恐らくBBに求められていたニーズが初期サウンドであるから「Rock'n Roll Music」のコピーなんかをやったと思われますが、アルバムの内容としては今一つ。そこで奮起したのかどうかは分かりませんが、次作「Love You」では全作ブライアン・ウィルソンのオリジナル作品で揃え、「ペット・サウンズ」を彷彿させるような(特にB面)仕上がりとなりました。

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本作は特にB面のブライアンのアレンジが冴え渡っております。音作りは1人で考え抜いていたんでしょうね。ちょっと聴き苦しいのはベース・シンセ。当時の最先端の音だったのかもしれませんが、今聴くとかなり古臭い。あとやっぱり全く様変わりしてしまったブライアンの声…、まるでデニス・ウィルソンのようなシワ枯れ声なんですよね。

前作の流れを受け継ぐような往年のビーチボーイズらしい楽曲の⑥「Honkin' Down the Highway」。
このバックのオケはブライアンが一人ですべてを仕上げたらしい。リード・ヴォーカルはマイク・ラヴではなく、アル・ジャディーン。このテの歌はアルがピッタリかもしれません。前作の「Rock'n Roll Music」は能天気なマイクが歌い上げてましたが、こちらはやはりブライアンが書いた作品。彼の世界観からすると、マイクではなく、アルだったのでしょうね(笑)。

A面からのご紹介はこれくらいにして、以下はB面からの選曲。B面トップは海でも車でもなく、なんと太陽系の歌(!)。それが⑧「Solar System」。リード・ヴォーカルはブライアン自身。そしてこちらのバックトラックもブライアンの多重録音。優しいメロディはブライアンらしい。

⑨「The Night Was So Young」もいいんですよね。このアルバムのハイライトかもしれません。
こちらはリード・ヴォーカルはカール・ウィルソン。ここでのコーラスのなんと美しいことか…。そう思いませんか。
随所に印象的に鳴るギター…、オルガン…、そして大胆なコーラス、すべてのアレンジが天才ブライアンの為せる技。この曲なんかは「ペットサウンズ」に収録されていても違和感ないかもしれません。感傷的なメロディとイノセントな歌詞、すべてが美しい。

ブライアンの当時の奥さんマリリン・ウィルソンがデュエット相手の⑪「Let's Put Our Hearts Together」。
こちらもハートウォームなメロディですが、それをぶち壊すような(笑)、ブライアンのヴォーカル。本来ならカールなんかが歌ったら、もっと光った楽曲になったかもしれません。恐らくブライアンのヴォーカルを、奥さんのマリリンがカバーする…そういうサウンド構造があったのでしょうね。実際にマリリンのパートはなぜかホッさせられるような気がします。

ちょっと童謡的というか、子供向け楽曲的な⑫「I Wanna Pick You Up」。
ヴォーカルはデニス・ウィルソン。デニスは元々こうした声ですけどね。こちらもこういう曲調をデニスに歌わせたところにブライアンなりの考えがあったのかと思います。最後の最後でビーチボーイズらしいコーラスが聞けます。愛らしいポップスといった感じでしょうか。

最後にご紹介するのも秀逸なポップスの⑬「Airplane」。
最初にリードを取っているのはマイク。コーラスが相変わらず複雑でビーチボーイズらしい。あとハイハットとスネアの入り方が凝ってますね。叩いているのがデニスだったとしても、もちろんブライアンのアイデアでしょう

このアルバムで本格的にブライアンは文字通り「ブライアン・イズ・バック」を果たすことになるのですが、結果的に天才ブライアン・ウィルソンの力量が全作品に発揮されたアルバムは本作が最後となってしまいます…。
レココレ2016年7月号には「ビーチ・ボーイズ ベスト・ソングズ100」なる特集が組まれてますが、本作からは3曲がランクイン。ちなみに前作「15 Big Ones」からはゼロでした。この「Love You」、もう少し高く評価されてもいいかなと思ってます。皆さんはどう感じられたでしょうか?

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