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The Doobie Brothers「Takin' It to the Streets」(1976)

イーグルスに、サウンド的に前期後期があるように、ドゥービー・ブラザーズにも前期後期がありますね。どちらが好みか…は結構意見が分かれるところじゃないでしょうか。私はAORが好きなので、後期(マイケル・マクドナルド)派ですが、やっぱりたまには前期(トム・ジョンストン)も聴きたくなります。そんな時は本作を好んで聴きますね。

ドゥービー・ブラザーズのリーダーであったトム・ジョンストンが、健康上の理由でツアーを断念せざる負えなくなったのが1975年の夏。そこでメンバーのジェフ・バクスタースティーリー・ダン時代に一緒だったマイケル・マクドナルドに代役として声を掛け、マイケルはそのツアーに参加。他のメンバーもマイケルの才能に惚れこみ、マイケルはドゥービーのメンバーにそのまま加わることになります。これが後のドゥービーを大きく、大きく変えることになります。
そして発表されたのが本作。前期と後期の狭間に発表された貴重な1枚で、両方の良さが楽しめます。

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1曲目の①「Wheels of Fortune」から興奮してきます。ここでのドラムはリトル・フィートのリッチー・ヘイワードとメンバーのジョン・ハートマン。強烈なグルーヴのツイン・ドラムです。そしてサウンドは初期ドゥービーが得意としたギターのカッティングがベースとなっているものの、かなりファンキーな仕上がり。キーとなっているタイラン・ポーターのグルーヴィーなベースが個人的には大好き。特に後期ドゥービーはマイケルの活躍が目立ちますが、サウンド的にはタイランの貢献も大きいものと思ってます。
アルバム全体に通じて言えますが、マイケル・マクドナルドのソウルフルな作風とタイランのベースは実はウマが合っていたのではないかと思えますね。

この1曲目の興奮冷めやらぬなか、マイケル節が炸裂した②「Takin' It to the Streets」へ。
この曲、大好きなんですよ。後期ドゥービーの代表曲「What a Fool Believes」より好きかもしれません。なんと言ってもそのグルーヴィーなノリ、初期ドゥービーの豪快さが程よく残っている感じが最高です。もちろんマイケルのスモーキー・ヴォイスがキーなのですが、ここでもタイランのベースがいぶし銀のように光ってます。

このノリをダイレクトに伝える最高な映像がありました!!!
メンバーはマイケル以外はあまり映っていないのですが、セカンドヴァースを歌っているのは・・・、なんとジェームス・テイラーです!!! しかもサビの豪快なコーラスにはジャクソン・ブラウングラハム・ナッシュジョン・ホールカーリー・サイモンボニー・レイット等が・・・。皆、めっちゃ楽しそう。すごいメンバーです。この映像のエンディングのコーラス、ゴスペルタッチですごい圧巻ですよね。この楽曲のファンキーでグルーヴィーなノリをよく伝えております。

トムと共にドゥービーを支えたパット・シモンズも黙ってはいません。③「8th Avenue Shuffle」はパットのオリジナル。メンフィス・ソウル的なホーンが、これまたグルーヴ感を煽ります。

ジェフ・バクスターとパットの共作である⑤「Rio」は2人がマイケルに影響を受けたのか、かなりシティ感覚溢れるフュージョンタッチのナンバー。リズムパターンも凝っており、従来のドゥービーファンは面食らったのではないでしょうか? マイケルの作品なら理解出来ますが、パットの作品ですからね。パットは見事に時代の波を吸収していったのですね。

タイラン作の⑥「For Someone Special」はスティーリー・ダン的な、ちょっとブルージーなナンバー。かなり渋いですね。タイランがヴォーカルを取るスタジオライブ映像がありました。ジェフ・バクスターは相変わらず容姿が怖いですね(笑)。

このアルバムのなかで悲しいかな、異色作に聴こえてしまうのが唯一のトム・ジョンストン作の⑧「Turn It Loose」。初期ドゥービーが復活?? といった趣のハードなナンバー。やっぱりかっこいいですね。個人的にはシティ感覚溢れる後期ドゥービーが大好きなんですが、このナンバーを聴いてしまうと自然に体が立てノリしてしまい、「やっぱり初期ドゥービーも魅力的だなあ」と思ってしまいます。
貴重な映像がありました。スタジオバージョンよりかなりテンポアップ、豪快な演奏が楽しめます。

ラストはパット、マイケル、ジェフの共作による⑨「Carry Me Away」。メンフィス・ソウル・ナンバーですね。この曲を聴くと、マイケルはやっぱりこうしたソウルナンバーが好きだったんだなあと思ってしまいます。またこのスモーキーヴォイスは誰にも真似出来ないし、この声を聴いたら皆惚れ惚れしますよね。

このアルバムでマイケル・マクドナルドはドゥービーの方向性を変えてしまい、トム・ジョンストンは静かに去っていくのでした。そしてAORのどの楽曲にも、この「Carry Me Away」でも聴けるマイケルのキーボード・リフが組み込まれていくのでした…。

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