はちみつぱい「センチメンタル通り」(1973)
はっぴいえんどと双璧を成す筈だった名アルバム
上のカバー写真、意味分からないですよね(苦笑)。先日、どうしてもその日しか都合が付かず、緊急事態宣言下でしたが、渋谷の老舗ロックバー「B.Y.G」で食事をしました。このロックバー、1969年からこの場所で営んでおり、多くのロックスターが地下のライブハウスで演奏しております。この写真はサイン色紙代わりになってしまっている「B.Y.G」の壁なんです。そこにひときわ目立つ「はちみつぱい」の文字(他にも星野源や細野さん、泉谷さん、錚々たる方々のサインが…)。
70年代前半、はっぴいえんどとはちみつぱい、という妙に似たような名前のバンドがおりました。両バンドとも日本語の歌詞を大事にする雰囲気を持っていましたが、後世、どちらかというと大滝詠一、松本隆、細野晴臣、鈴木茂といった有名ミュージシャンが在籍していたはっぴいえんどが語り継がれ、ひょっとしたら、はちみつぱいはそれほど多くの方には知られていないのかもしれません。
実は私もはちみつぱいの存在は知っていても、そのサウンドは最近までじっくり聴いたことがなかったのでした。
はちみつぱい、メンバーは鈴木慶一(ヴォーカル、ギター、ピアノ)、本多信介(ギター)、武川雅寛(ヴァイオリン)、和田博巳(ベース)、かしぶち哲郎(ドラムス)、駒沢裕城(ペダルスティール)、岡田徹(キーボード)。本作は彼等の唯一のオリジナルアルバムです。
一般的にはのちに鈴木慶一が結成したムーンライダースの前身バンドといったらいいでしょうか。個人的にはかしぶち哲郎氏が在籍していたことに驚きを覚えました。彼は一時期岡田有希子に多くの楽曲を提供し、かつアレンジも手掛けてました。その彼がドラマーだったとは・・・。
はちみつぱいもまた、ザ・バンドから影響を受けたような土臭い香りのする音を聴かせます。これがまたシブくていいんですね。1曲目の①「塀の上で」から、なんだかエンディングのようないぶし銀的楽曲。正直、好き嫌いが大きく分かれそう…。
とてもフォーキーでメロディが染み入る③「ぼくの倖せ」。ヴァイオリンをフューチャーするはちみつぱいのサウンドを端的に表す楽曲ですね。このヴァイオリンが切なさをアピールします。
素晴らしいインストナンバーの⑥「ヒッチハイク」。ヴァイオリン+スティール・ギターが大活躍するカントリー・フレイヴァーたっぷりのナンバー。カントリー好きの私にとっては嬉しい1曲ですね。この曲が好きだ、という物好きはそうそういないと思いますが(苦笑)。
最後に車の遠ざかる音が収録されてます。ヒッチハイクは失敗したのでしょうか。
せっかくなので更にシブい1曲、⑦「月夜のドライヴを」。この土臭く、歌詞が情景として思い浮かんでくる素晴らしい楽曲、けっしてポップではないのですが、非常にクオリティ高い楽曲だと思います。
1973年、日本のロックバンドも決して洋楽に負けていなかった・・・。
はちみつぱいは1974年10月、スティールギターの駒沢氏が精神的な落ち込みから小笠原諸島へ失踪してしまい、11月、解散に至ります。
彼等の唯一のシングルは「君と旅行鞄」。そのB面の「酔いどれダンス・ミュージック」も本アルバムにCD化されるに際して収録されてますが、これがまたかっこいい。ちょっとポップで、彼等らしい凝ったアレンジが秀逸です。
たまにはこうした歴史に残る日本のロック黎明期のアルバムを聴くのもいいものです。
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