ただ必死に護りたかった:「護られなかった者たちへ」中山七里

震災復興後の仙台で起こった連続餓死連続殺人。被害者は周囲の誰もが「善良な人」だったと口をそろえて称えられる人物ばかり。一体誰が犯行に及んだのか?何故餓死させられたのか?県警捜査一課の苫篠がたどり着いた真実は何だったのか。

捜査を続けていくうちに浮かび上がってきた生活保護や年金受給といった日本の社会保障制度の実情。ライフラインを止められるほど生活に困窮する人でさえ、生活保護を受けられるとは限らない。この現実が重たく突き刺さった。最低限の生活の保障をしてくれるはずの制度ではないのだろうか?最後の砦を無くしてしまったら誰が護ってくれるんだろうか。

社会保障費が年々減少しているのは、少子高齢化で働く人が減っていて仕方ない部分があるのかもしれない。不正受給がニュースで取り上げられたこともあるし、予算が限りあるのだってわかる。でも、だからって紙切れ1枚を破り捨てる事がそのまま命の切捨てに見えてしまって、どうしようもなく苦しくなってしまった。

「何を信じて、何を護るのか。かたちにならないものがかたちのあるものより大事になることがあるんだ」

読み応えありの1冊でした。この苫篠刑事の続編が「境界線」なんですね。内容を知らず予約していましたが、こちらも楽しみです。

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