見出し画像

人が作れない美しさ:「八月の銀の雪」伊与原新

想像しない様な暮らしになってしまったこの1年が終わろうとしている。慌しい12月。いつもと違うことばかりで心身ともに参っている人が多くなっていると感じています。そんな今、この本を手にとってみてと薦めたい。

地球自然科学をテーマに書かれた短編集。前作「月まで3キロ」が心に残る温かさがあって良かったので、続編のこちらも迷わず読みました。

「八月の銀の雪」なぜ真夏に季節はずれの雪?私の住んでいるところは半年間、雪と共に生活する町。長い間雪景色のせいか、夏でも雪が積もった夢を見るんです。なぜか毎年・・ そんなことを思い出しました。でもその白い雪ではなく予想外の雪でした。

この話が一番ロマンがあって好きでした。そう伊予原さんの小説はロマンという言葉がよく似合うと思った。地球上には人が作り出す事が出来ない自然や生き物の美しさが確かにある。

日が沈んだ後の空のグラデーションの変化。空を見上げたら冬の星座が煌いている。日常に追われて忘れているかもしれないけど、そんなことを思い出させてくれて癒されました。

各お話のタイトルもどれも好き。雪の結晶をあしらった白と銀の装画も美しいの。たくさん本を読んでいると、その辺りが好みだと中身も好きな場合が多いと発見。

「海へ還る日」「アルノーと檸檬」「玻璃(はり)を拾う」「十万年の西風」このタイトルだけで色々想像が膨らむ。

続編が出たらきっとまた読みたい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?