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夢と想像力

「もしあなたが、まだ存在しない製品を生み出すとしたら、どんなもの?」

私の勤めるアメリカの高校、Career Business クラスでの出来事。
出された課題は、まだ実在しない有形製品を自作するビジネスプランを4週間で作成するというもの。まず、製品の必要性から顧客層をしぼり、企業構成や資金の調達、宣伝方法を決定し、そのスケジュールを決めるなど。その日はまず製品名とロゴ作成。

私がサポートする生徒さん(中東より渡米2年目10年生、日本の高1)は一生懸命考えるになかなか現実から離れることができず、一向にアイデアがでない。

「存在するものを販売」という枠から「自分が制作する」

に移行するのに苦労している。いろんな角度からいろいろ質問するにも結局自分が使っている商品に至るの繰り返し。その姿を見て、自分もそんなには差がないのではないか、と思った。

「君の人生にとって大切なものは何?」

「お金。お金持ちになること。必死で一生懸命働くこと。」

「もし仕事をしなくても一生食べていけるとしたら、何が欲しい?」

と聞くと、複雑な笑みを浮かべた。

その笑みは、反面うれしそうで、反面恥ずかしそう、現実味が薄いので想像がつかないけど、そうなると嬉しい、といった感じの笑み。

そして一言、

「あり得ない。」

その後

「身分相応でない。」

ときた。彼には一般人には想像できないほどの複雑な背景がある。

私の中でも、背伸びした夢に対して「でも」という同じような反応をしているのに脳裏で気づく。

ここで躊躇してしまう人はかなり多いのではないのだろうか、と思った。
成績が良くなければ
いい学校を出ていなければ
資格や経験がなければ
環境や条件が整っていなければ
経験がなければ
と、その理由は果てしないだろう。

また、肯定的思考や、何かを取得しようとしている人は多いかもしれないが、実のところそれが本当に実現可能!と常に心から信じられる人はどのくらいいるのだろう。大志といえるくらいの大きな夢を持てる人はどのくらいいるのだろう。そして、それが育たない理由は、、、。私が立ち止まっている本当の理由は、、、。

いやいや、それはさておき、
現実に戻り、必要性が製品化した例え話として、今の若者がなくては生きられない携帯電話の話をする。ロータリーフォンから時間短縮のプッシュフォン、コードがなく移動しながら話せる自動車電話やコードレスフォン*。(*これには面白い実話あり。)(全部使ったことがあるのに今では全部死語なのが悲しい)電話回線を使わず、さらに相手も束縛しないテキスト機能や、音楽の保存機能が加わった携帯電話、さらにはインターネットにつながる現在のスマートフォン。

そんな例を聞くと彼は当たり前だよといい、将来は持たなくてもいい空間デジタルになるという。それはゲームやアニメの受け売り、全く想像力にかける。そしてそのアイデアはこの課題の役には立たず、落胆する彼。


新製品は「こうだったらいいのにな」という思いから始まる。些細に思えるちょっとした欲求、些細な希望。しかし、そんな微妙な考えを拾えるのはやはりもっとこころに余裕ができてからか。

そんな私たちの後ろで、アメリカ人の生徒たちは
「俺の会社で働くと億万長者にしてやるゾ」
「俺の説得力とお前のアイデアでブームが起きるぞ」
などと、大声で冗談がてらいかにも普通に語っているのである。

そんな考え方が手の届く範囲の環境にいる、ということに彼が気づいただけでも可能性が広がったと思った。

たくさんの生徒に可能性を語れる大人になりたい、自由に想像することを推奨する大人になりたい、想いを言葉にする大人になりたい。まずはこの子から。


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