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【タバコ vs お酒】どっちが悪いのか?

【概要】

今回は「お酒とタバコ、どっちが有害なのか」についてまとめたいと思います。

基本的にどちらも嗜好品ですので、私の個人的な意見としては、周りに迷惑にならない限り自由だと思います。が、タバコを吸う人はお酒の害に言及する傾向があり、お酒を飲む人はタバコの害を叩く傾向がありますね。またタバコの害は社会的にもよく取り沙汰されており、昔と比べるとタバコは吸いにくくなってきています。

果たしてお酒とタバコ、どちらが有害なのか?

色々な観点からまとめていきたいと思います。

  

目次

・健康被害による医療費負担

・依存症の重症度

・犯罪との関わり

・まとめ

    

【健康被害による医療費負担】

①お酒の医療費負担

アルコールは食道がんや胃がん、脂肪肝や肝硬変などさまざまな健康被害があることはみなさんご存知だと思います。その結果、患者さんは病院で治療を受けることになるわけですが、その結果生じる社会的な経済コストはどれくらいなのでしょうか?

少し古いデータですが、1987年のデータによると医療費は年間1兆957億円と試算されています。またアルコール乱用によって起こる本人の収入減などを含めれば、社会全体で6兆6000億円もの社会的コストに上ると試算されています(参考文献*1、*2)。

またアルコール依存症にうつ病が合併する確率は40%と言われています。ちなみにアルコール依存症の診断基準に合う人は人口の10−20%と見積もられており、うつ病の原因の一部にアルコール依存が疑われています(*4)

②タバコの医療費負担

タバコがさまざまなガンのリスクがあり、またCOPD(慢性閉塞性肺疾患)の主な原因となっていることが知られています。WHOの調査によると、今後COPDは世界の死因の主要な疾患になると類推されているほど恐ろしい病です(*3)。

喫煙による医療費は推定で1兆1669億円、受動喫煙では3233億円の社会的コストがかかっているそうです(2014年度)。

 

【依存症の重症度】

お酒もタバコも依存性物質ですね。ここでは定性的に、それぞれの依存症の症状を比較してみて、どちらが甚大な健康被害をもたらすのかを解説していきましょう。

①お酒への依存症・離脱症状

アルコールを長期間服用していると、当然さまざまな疾患にかかる可能性が高まるわけですが、かといって急にアルコールを止めると「離脱症状」というものが発生します。アルコールの離脱症状は、手の震え・自律神経症状・興奮状態などがありますが、最も恐ろしい離脱症状が幻覚・せん妄です。この幻覚・せん妄は日常生活を困難にしますし、興奮状態は破壊行動を引き起こし、最悪の場合自己や他人を傷害するおそれもあります。また振戦せん妄は死に至ることもあり、アルコールの離脱症状はタバコのそれとは比較にならないほど危険なものです(*4)。

②タバコへの依存症・離脱症状

タバコを長期間服用していると、前述の通りさまざまな疾患にかかる可能性が高まります。それではタバコを急に止めた場合に起こる離脱症状はどのようなものでしょう?タバコの離脱症状は食欲増進、イライラ、焦燥感、便秘などまったく大したことのない症状ばかりです。もちろんタバコへの精神依存は強いものですので、ご本人は精神的にはツラいでしょうが、アルコールの離脱症状とは違い、反社会的な行動に出ることはありません。

  

【犯罪とのかかわり】

①お酒と関連する事件

驚くべきことに、日本の犯罪統計によると、傷害事件の約40%は飲酒時に起こっていることが示されています。これは諸外国でも同じで、犯行時の酩酊率は30−40%であったと言われています(*4)。お酒は犯罪をも助長する危険な薬物なのですね。

②タバコと関連する事件

これは良く聞くことだと思いますが、タバコそのものというより「火の不始末」が原因による火災が挙げられます。最近はタバコを吸える場所も減っていますので、いくらか火の不始末は起こりにくくなっているとは思いますが、それでも火災の原因の一つとしてよく例示されます。

 

【まとめ】

①社会への医療費負担においては、タバコよりお酒のほうが3倍多い。

②依存・離脱症状においては、タバコの場合は軽微であるが、お酒は幻覚・興奮により犯罪を行う可能性やせん妄により最悪死に至る恐ろしいものである。

③犯罪・事件との関連においては、タバコの場合は火の不始末が原因による火災、お酒の場合は傷害事件の40%が飲酒時に起こっていることから犯罪を誘発する因子として想定すべきである。

以上になります。

こうまとめてみると明らかにアルコールの方が社会にとって害になっていますね。

お酒は百薬の長とも言われますが、あれは科学的に否定されています。下記過去記事にその科学論文の解説がありますのでご参照ください。

なぜタバコだけ厳しく取り締まられるのか分かりませんが、今後はお酒の取り締まりの方も、国民の健康のためには強化していくべきでしょうね。

それではまた次の記事で!


<参考文献>

*1:高野健人、中村桂子. 『アルコール関連問題の社会的費用』河野裕明 編『我が国のアルコール関連問題の現状』厚健出版. 81-89, 1993

*2:Nakamura et al (1993). The social cost of alcohol abuse in Japan. J Studies of Alcohol, 54:618-625.

*3:The top 10 causes of death (Report). WHO.(2014-04).

*4:岩波 明 著、『心に狂いが生じるときー精神科医の症例報告』、株式会社新潮社

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