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たいまつ

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がんばる。生きる。寂滅。偏在。ぺったんこ。死んだ目で戦闘態勢。ばかばかしいお笑いを一席。はじける虚無。誤魔化せないのに、ぐっすり眠れることが罪悪感。都市の空気、軋む命。アイデンティティを繰り返し捨てるポイ捨て音。自分を人間だと思っていたら、いつまでも間の人にはなれない。花になれ。石になれ。植物になれ。人だとしても言葉も火も知らなかったときを思い出せ。宇宙はご丁寧にもカラフルなブラックホールたたえている。何もかも忘れることで思い出せ。そうしてはじめて人間のふりができる。やっと人間になれる。もっと主観と客観がないところに行け。不安な時代は何かに対しての言葉や態度ばかり溢れる。それは味のしない嘘だから退屈。世の中が悪くなっていくことの外側をなぞってはいるが、そのゲル状で不気味な音を立てている現実という内容を構成しているのは自分なのだという自覚ないならお粗末。ただの生身のおまえを見せてみろ。もっと光れ。星になれ。明治以降、日本は歴史が変わる言い訳として欧米的価値観を輸入し、ズッコケるのを繰り返した。世紀末には希望を持たないことの言い訳として神を取り違え、21世紀には責任を伴わないことの言い訳として多様性を持ち出した。そうして愛と自由が額面だけ利害のもとに踊る。血を出しながら。私は興味がない。おまえたちに。私はおまえたちに興味がない。昭和20年、終戦。近所の神社に集められた。ラジオから聞こえてきた玉音放送。はじめて聞いた天皇の声。テキ屋の親分たちが新宿に闇市を開いた。身寄りのない私は売春をして得たお金で、サツマイモと傷薬、それから米軍の放出品であるチョコレートを買った。江戸の差別とエコロジーを思い出す。弥生土器と縄文土器の焼き加減を思い出す。おさるさんだったときを思い出す。魚だったときを思い出す。プランクトンだったときを思い出す。宇宙が開闢したときを思い出す。ようやく未来から来たことを思い出せる。心なんて超えて、肉体なんて超える。自分なんていらない。だってみんな自分。ハロー、寂しいって。バイバイ、もう寂しくないよ。私どこにもいない。私ここにいる。芸能。文学。アート。玄人と素人は厳然とある。人を殺しかねないアウトローが武器を下ろし、喜劇や落語や漫才や歌をはじめる瞬間が好きだった。アイドル。人のふり。人でなし。人のあいだ。それはフィクション。それはお芝居。それは映画。わかりにくい《可愛い》をあなたに。これですべてが嘘になる。


http://morinokaigi.chu.jp/00/2020/07/11/0711-2/


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