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真(まこと)
2021年6月20日 23:39
細い手首の内側に慎ましくまかれた腕時計が夕刻を指している。 白いヒールの足を組み替えては、朱くなり始めた空を見上げた。「由姫!」 後ろからの声に振り替えると、呼び出した本人がこちらにかけていた。周りを歩く人々が皆、すれ違いざまに振りかえる。真っ赤な包みを片手に、黒いタキシード姿を着た彼の姿は、まさに舞台俳優らしかった。 彼を追う視線の先で、明らかに似合わない自分に恥ずかしくなって安物のワ