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一緒に寝てくれる温もりとピースのタバコの匂い

同じ布団の中で面白そうに言う。

「悠は寝相が悪いからなぁ」

祖父の少し高めの声が耳に届く。照れ臭い。大人と同じ布団に入るのは、記憶の中でほとんどない。フランス式だったのかどうかは定かではないが、私の母は幼い子供と一緒に寝ることはなかった。母は子供嫌いを公言していたので、一緒に寝たいと思ったことは一度もない。

人と一緒に入る布団はこんなにも暖かくなるのか。

祖父は私の脚を両脚で挟む。祖父は真剣に

「これでじぃちゃん、蹴られんやろ」

と言った。私はくすくす笑いながら「蹴ってごめんね」と返したと思う。夜中に蹴ってしまっても、一緒に寝てくれると言う事実が、ただただ嬉しかった。

この記憶があるからだろう。私は過ごした日数は少なくても、生粋の「おじいちゃん子」だ。

何日滞在したかは全く覚えていないが、この日々の記憶はいつまでも色鮮やかだ。

祖父は久しぶりに会う孫を向けて、一緒にお風呂に入ってくれた。まだ生まれたばかりの従兄弟を泡で洗いながら、ニコニコしている祖父を見ているのも、弱い存在を一緒に大切にできるのが、自分であると思うだけで、頬がにやけてきた。

釣りに行くのに連れて行ってくれ、潮の香りを知る。

晩御飯は家族で食卓につく。祖父はご飯よりもおかずで晩酌。

いつもピースのタバコの匂いをさせて、顔をくしゃくしゃにして笑う。

今94歳の祖父は健在だ。しかし、新型コロナウイルスのことを考えると、会いに行くことができない。ワクチンを全国民が受けたら、会いにいけるだろうか。

次会う時もくしゃっとさせた顔を見たい。



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