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20人殺し《01》

二神(ふたがみ)村。
村名の由来は諸説ある。神社に祀った土着の神、御魂と荒魂を合祀しているからとも、
あるいは、古代に治めていた地方豪族の二見氏が訛って二神になったとも言われる。
ただ、一つ言えることは、おおかたの村民が、二大勢力である風神家か雷神家に経済的依存をしていることから、今では皆がなんとなくこれが村名の由来であると思っている節がある。

さて、もともとは風神家も雷神家もそのような姓を名乗っていたわけではない。互いにもとを辿れば二見氏に行きつく。それがいつの間にやら仲違いを起こし、一方が風神を名乗り、これに対抗してもう一方が雷神を名乗るようになったとか。古くから風神家は平野部を支配下におき、雷神家は山岳地を支配下においてきた。当然ながら勢力は農作物量で圧倒的優位に立つ平野部の風神家が影響力についても優位にあったが、最近では日本政府が打ち出したジャパンウッド、国産の材木を海外に売り出すブランディング施策が奏功し、林業経営が軌道に乗って急激に財をたくわえはじめた。

あるとき、風神の当主が、村民を次々に殺傷し自刃した。その数20人。村人は口々に20人殺しといって畏れた。しかしこれを見逃す雷神ではなかった。こんな所業は二見氏の荒魂が為せる業と言い出し、村の最も高台に二見神社を移築し二神神社として自ら宮司を務めるようになると、これまでの劣勢を多いに跳ね返すまでになった。
ところが、この20人殺し、前例があった。二見神社宮司が記録保管していた古文書から、この忌まわしい事件は、必ず200年に一度起きているというのである。当時勤めていた宮司の日記から明らかになったという。そして現宮司は発見してしまった。はからずも、今年はその200年目にあたる年になっていたのである。

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