見出し画像

なんてマヌケづらで。なんてアホづらで。なんて幸せそうなツラだ。【半開き】

「目が半開きじゃん!」

教室の窓から撮った集合写真。
そこに写っているのは、目が半開きのボク。

なぜ半開きなのか?
それは、ボクにも分からない。

でも、これだけは覚えている。
この集合写真を撮る時、横でちょっかいを出してくるヤツがいたことを。

写真は『時』を切り取るとは、よく言ったモノだ。

ボクは、改めて目が半開きの集合写真を手に取る。

たしかに、
マヌケづらで
アホづらで
見ているこっちが、恥ずかしくなってしまう。

だけど、

なんともまぁ、幸せそうなツラだ。


「はぁ~い。今日は前から言っていた通り、クラスの集合写真を撮ります。お天気にも恵まれて、絶好の写真日和となっています。準備ができ次第、撮り始めますので、みんなは中庭に集合すること。」

「集合写真だって。どうすっかな。顔の角度は。」
お調子者のケントは、集合写真には、必要なさそうな、顔の角度について考えていた。

「ずっと残り続けるモノだからな。心してかかる必要があるな。」
自分探しにハマっているタケルは、身なりを整えていた。

「そうだよね。ずっと残っちゃうもんな。変な顔で写らないようにしなきゃ。」

「はらゆうの言う通りだな。しかし、どんな顔なら、ワタシたちは、納得いくのだろうか?この手のモノは、終わりがないように感じる。たとえ、何十枚と写真を撮ったとしても、そこに、『最高だ』と想えるモノが、果たしてできあるがるのだろうか。そうなると、変な顔でも、いいのではないか?そのほうが・・・」
自分探しのタケルは、自分の顔を見失っていた。

「とりあえず、笑えればよくない?」

「いや。写真に笑いは必要ないだろう。」

「チッ、チッ、チッ。それが必要なんだよな。」

「なんで」

「写真って何のために撮るんだと思う?」

「そりゃあ、学校のアルバムとかに載せるためだろ。」

「それは、学校サイドでしょ。こっちサイドは」

「こっちサイド。こっちサイドは・・・」

「切り取られた時を、大切にするためなんじゃね」

「大切にする?」

「そうそう。写真を見て『そう言えば。あんなことあったな』とか、自然と笑顔になる必要があるんじゃないか」

「言われてみると、そうかもしれない。」

「そう。だから、必要なんだ。笑いが。そして、思い出そう。その瞬間を」

「なんか。キャッチコピーみたいになってるな」

「どう。いける?」

「いけないな。」

「いけないかぁ」

そうして、ボクらは中庭に集まることになった。

「いやぁ。マジで天気いいな。」

「だね。」

「こんなに天気がいいと、なんか楽しくなっちゃうな」
中庭をウロチョロするケント。

「オナモミ、見つけた」
ニコニコしながら戻ってくるケント。

「オナモミ爆弾!」

ボクのズボンに引っ付くオナモミ。

「やったなぁ。」
ボクも、オナモミを探す。

そして、投げ合うボクら。

「はぁ~い。準備が整いましたので、今から写真撮影を始めま~す。」

なぜだろう。

写真撮影で外に出たはずなのに。

汗をかいているかボクらがいた。
息を切らしているボクらがいた。

あんなに、服を整えていたタケルも、服にオナモミをつけて。

呼吸を整えて、服についているオナモミを取った。

「それでは、撮りまーす。まずは、1回目でーす・・・はい。OKです。次に、2回目でーす・・・。ありがとうございます。以上で、終了です。」

ボクらの、写真撮影は終わった。

それから、数日が経った。

「この前撮った集合写真が出来ましたので、確認して下さい」

ボクらは、集合写真を見ることにした。

「目が半開きじゃ~ん」
思わず吹き出してしまった。

なんともマヌケづらで
なんともアホづらに
写るボクら。

そんなボクらのツラは、なんとも幸せそうだった。


今日も、ボクは、アホづらで写るかもしれない。


そんなアホづらが、何か大切なモノを思い出させてくれるから。

この記事が参加している募集

#スキしてみて

524,761件

あなたの「クスリ」が見たい。 はい。自己満足です。 頂いたサポートは、ニヤニヤしながら喜びます。 そして、「クスリ」を探すために使います。