【見落とす】
ボクはうっかり者だ。
色々と見落としてしまうことがある。
今までたくさんのものを見落としてきた。
ただ前へ進むことに必死になって。
ただ自分のことだけに必死になって。
ただ何かを見つけることに必死になって。
走って。走って。
ランニングマシンの上を、ずっと走っているようで。
ずっと変わらない景色を見ているようで。
焦りと苛立ちが押し寄せてきた。
そして。とうとう。
何も見つけられないボクは。
走るのをやめた。
ただ、トボトボ。トボトボと。
もう。歩けない。
そんなことを思った。
何も見つからない。
下を向きながら、ゆっくりと動く道を歩いた。
動いているかどうか分からない速度で。
こんな速さじゃ、景色なんて、変わりっこない。
深いため息とともに、ボクは顔を上げた。
「えっ」
なんだろう。この景色は。
辺りを見渡してみると、温かな光が輝いていた。
ボクはこんな道を走っていたのか?
ボクは何を見ていたんだ。
ボクは何を探していたんだ。
ボクは何を見落としていたんだ。
立ち止まり歩いて、初めて気づいた。
たくさんのモノを見落としてきたことに。
ボクは、その温かな光へ、そっと手を伸ばした。
これが。
ボクの。
探していたもので。
ボクの。
なりたいもの。
そんな気がした。
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