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馬の耳に真珠

物心付いた時から右耳は聞こえなかった。
幼少期はこれと言って不便を感じたことはなかった。
プールに入れないくらいで、むしろ特別感があった。
聞こえてないまま過ぎていった。社会人になるまでは。

真珠腫性中耳炎という病をご存知だろうか。
耳の中に腫瘍ができる病気だ。
私は幼稚園入園前に発覚し、腫瘍と耳小骨を摘出した。
大きな大きな腫瘍だったらしい。
脳にダメージを与える直前だったそうだ。
症状やその頃の話は全部、両親や祖父母、先日定年退職された執刀医の先生から聞いた話だ。

今晩も自分語りをできたらいいな思ってます。
結城両生類です。音だけで名前を追加しました。
ツイキャスで優ぎん🐸(ユウギンカエルノカオ)と発音されるので合わせてみました。
何の生産性もない独り言。

3歳の秋、母が耳かきをして大きな大きな耳垢を取った。
しばらくして、耳から血が流れているのに気が付き病院にかけこんだらしい。
車で20分くらいの近くはない病院だ。
その日は木曜日で、開いてる病院を探したらしい。
母が運転できてよかった。

初診の町医者では中耳炎だが様子がおかしいと言われたそうだ。
薬で様子見ても引かないと、すぐに大学病院にまわしてくれた。
今でも半年に1回通っている大学病院だ。
即入院だったらしい。

4歳の誕生日は大学病院だった。
チョコケーキと自分の映る写真を見たことがある。
両親も泣いて喜んだそうだ。4年なんとか生きていてよかった。と。

翌月弟が産まれる。
つまり母は妊婦のまま入院付き添いをしていた。
母は昼間様子を見に来て、夜は父が様子を見に来て泊まる。
そんな日々を繰り返していたらしい。

唯一覚えている映像がある。
多分これは写真を見た記憶ではなくて、覚えてる記憶だと思う。
当時飼っていたゴールデンレトリバーを、祖父母が連れてきてくれたことだ。
何階建てが分からない高い病棟の真下、駐車場にミニチュアみたいな祖父母と犬。
窓の外を指差し「ほら、じーちゃんが連れてきてくれたよ」と父に言われた気がする。

手術を終えて、腫瘍と耳小骨(鼓膜と内耳を繋ぐ骨)を摘出。
耳の皮膚にはふとももの皮膚を移植。このメンテナンスで今でも通ってる。
耳の皮膚は、何もしなくても外に垢が流れるようになっているらしい。便利な皮膚だ。
ふとももの皮膚にはそんな機能ないので、経過観察が必要だったそうだ。

潜水は禁止。耳に水が入るとめまいが起こる。
耳の中の作りが違うので、冷えると良くないそうだ。
一度、治療で耳の中を洗浄したことがある。
ほんとに天地がひっくり返って、水の流れに合わせて急回転した。
私を殺すには沈めたら良さそうだ。絶対這い上がれない。

乗り物酔いもしやすくなるとも言われたそうだ。
耳のバランスがなんとかって。
パイロットにはなれないらしい。
でも車の後部座席って酔う時は酔うよね。
これはよくわからない。

鼓膜と聴覚器官が繋がってないので右耳は聞こえなくなった。
元から聞こえてなかったかもしれないとも言われたらしい。
それでも、入園式の前週に退院し間に合ったそうだ。

夏のプールの時期は暇だった。
幼稚園の頃は遊び場があって、ずっと一人で遊んでた。
小学中学は、水着忘れた子と一緒に見学だった。
公認でサボれるのは悪くなかった覚えがある。
潜水しなければいいので、町のプールへ行った記憶はある。
流れるプールに浮き輪で流されるだけ。
泳ぎ方なんて知らないし、落ちたら死ぬと思ってた。(洗浄したのは中学生)

高校生で初めてペナルティを課された。
プール入らない人は水泳のレポートを書くよう指示された。
本当にサボりで足りない人と同様の扱いだったのが不名誉だった記憶がある。
しかも、一度も泳いだことないのに何を書けばいいんだ!ってキレてた。
どう書いたか忘れたけど、ちゃんと評価してくれた。

大学生になって気がついたことがあった。
仲良くしてる人、みんな声大きい。
声小さい人を避けてた訳でもないけど、4年間で付き合い続けてた人は声が大きい人だけだった。
元演劇部、元剣道部、外まで声聞こえる単に大きい人。
自然と付き合いやすい人と付き合ってるのかなぁ。それもいいよねって思ってた。

社会人3年目になって、お喋りな部署に入った。
部署全体で会話が行き交うような平和な部署だった。
部署内のあちこちから声がでる。
口の動きが見えない相手と会話するって
片耳聞こえない人には難しい環境だったんだね。
自分が聞こえてないことが、分かってなかった。

ある日上司に呼び止められた。「確かな部署から聞いた話なんだけど…」
右耳聞こえてないんだってね。そう。入社前に健康診断があった。
そのデータを小耳に挟んだらしい。2年越しに回ってくるとは思ってなかった。

呼びかけへの反応がなかったり、笑えるオチについてこれてなかったり気になる点があったそうだ。


家に帰って、今までもそういうことがあったんじゃないかって考えさせられた。
身の回りに声の大きい人ばかりなのは、嫌な思いをさせた人が離れてったからなのかもしれない。
この頃は、特に仕事がうまく行ってなかったので病んだ。
ガンガンに圧かけられてたし、毎朝お腹痛めてた。
そんな中で気にしてなかった耳のこと。

上司から他のメンバーが無視されてると勘違いし始めてるから、伝えといたほうがいいと教えてもらった。
どう伝えたか忘れてしまったけど(まだ2年前なのに!)、今でも遊びに誘ってくれる上司が明るく返してくれたのが嬉しかったのは覚えてる。

右耳が聞こえないと、右から音がしてもわからない。
というよりかは、聴力が常人の半分って感じだろうか。
勿論聴力検査では右耳聴力無しになるんだけれど。
右側からの音も聞こえたりする。
先生に相談したことがある。
「右耳聞こえる気がするんですけど」
左耳で聞いたものを脳が判断してるのかも?
そんな感じの回答だった気がする。脳ってすごい。

口の動きが見えない現代。
対面でパーテーションに区切られる現代。
特にパーテーションは聞きにくい。みんなそうならもっとだ。
本当に生きづらい。働きづらい。
補聴器は、この20何年無しだから、バランス崩れて難しいと言われてるし。
早くパーテーションだけでも外れてほしいな。

また今日も2時間打ち続けて、日付変わった。
最後眠くなっちゃってるし、何が言いたいだったか。
また気が向いたら修正します。おやすみなさい。
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