日本一愛想が悪い大女将のいる銭湯、だった
その銭湯は、愛知県の一宮市という
名古屋から北へ車や電車で20分ほどの町にある。
一宮市は、喫茶店の「モーニング文化」と
皆大好きカレー屋「CoCo壱番屋」を生み出した素晴らしい町だ。
先日、私の地元である名古屋に帰省した際に、
祖父母の家がある一宮市も数年ぶりに訪問していた。
せっかくなので祖父母の家の近所にあった
【杉戸浴場】さんへ初めてお邪魔してきた。
杉戸浴場は、昔ながらの中央に番台があるタイプの銭湯で、入口も男女分かれている。
“日本一愛想の悪い大女将”がいるとは知らず、
私は、女性側の引き戸をガラガラとあけて入る。
入口から中に入るとすぐに番台があるのだが、
番台の大女将は一言も発さず、こちらを見向きもしなかった。
この時点で、少しおやっとなる。
大女将「500円ね。」
PayPay OKのステッカーが外に貼ってあったので、
私は「PayPayでお願いします」と言った。
大女将は「やりゃあいいがね。
(=やったらいいじゃない)」と言う。
ガッツリ名古屋弁、懐かしいいいい。
と思ったが、まあそんな呑気なことも言ってられない。
あたりを見回してみたが、PayPayのQRコードらしきものが見当たらない。
私「えっと、、何かQRコードとかありますか?」と聞く。
大女将「あん?そんなもん知らんわ。私そういうの聞いとらんから。」
私 (心の声:えええええええええええええ)
私「えっと、分かりました。」
現金の持ち合わせがあったので、現金で支払った。
脱衣所を覗いてみると、ドライヤーのコインタイマーが見えた。財布を確認してみる。
Oh… 10円玉が足りない…。
※町銭湯はドライヤー使用に「3分30円」など10円玉が必要なところが多い。
私「すみません、、あと、両替もお願いできますか。」と100円玉を差し出す。
大女将「んあ??なに??いくらに両替?」
私「あ、すみません、10円でお願いします。」
こええええええええええええええ。
こんな恐ろしい番台さんおるかね、と途方に暮れながらも、靴を脱いで、脱衣所へ向かう。
最初のお会計の時点で、小心者の私はドギマギしてしまい、サウナも入りたかったのに、
なんとサウナ料金を支払うのを忘れてしまった。
ああ、また大女将に話しかけなければ…
そこで私としたことが、テンパってしまい
裸足のまま土足ゾーンを歩いて番台へ向かおうとしてしまったのである…。
(通常だったらそんなことしませんと言い訳させてください…。)
土足ゾーンへ裸足で踏み入れて
2歩歩いたその瞬間、
大女将「裸足だめ!!!!!!!!他の人もおるのにどうするの?!」と怒られてしまった。
完全に私が悪い。が、もう心臓がドキドキだ。
しかし、ここの常連さんはとても優しい。
「こっちからも行けるよ〜(ニコニコ)」と
脱衣所側からも番台の大女将と話せることを教えてくれた。
砂が少しついてしまった足を払い、
脱衣所側から番台へ向かった。
私「すみません、、サウナも入りたいので払います。」とサウナ料金の100円玉を差し出す。
大女将「んああ??何??」
(聞こえなかったようだ)
私「サウナも入ります!!!!!!!!!」
大女将「はい、100円ね。」
千と千尋の「ここで働かせてください!!!」ばりに声を張って、何とかお会計を終わらせた。
浴室に向かう。
洗い場の常連さんも親切で、
「こっちの方(奥の方)があったかいから
こっちこやー(来なよ)」
「ボディソープここにあるよ」
などと声をかけてくださり素敵な時間を過ごした。
お風呂もサウナも水風呂もとても快適だった。
昔ながらの銭湯を思わせる、あっっつ〜い湯船。
サウナは女側でも98度で
アチアチカラカラのザ・昭和ストロング。
水風呂は、推定17度くらい。
ブクブクさせる装置もなくて私の一番好きなやつ。地下水掛け流しとのこと。
外気浴はないので、風呂椅子で休憩。
極楽。極楽。
脱衣所で着替えながら、
大女将の様子を観察してみる。
ほかの常連さんに対しても、
「あん。」とだけ
そっけない返事をしていたり、塩対応だ。
だけど地元の人達は
「また来るね〜(ニコニコ)」と去っていき、
愛されているのが分かる。
私は懲りずに、大女将との4回目の接触を
試みてコーヒー牛乳をゲットした。
だんだんお互いに慣れてきた模様で
今回はすんなりいった。よし。
関東ではめずらしい関牛乳のコーヒー牛乳。
さっぱり目で美味しかった。
帰る時には、「ありがとね。」と言われた。
もはや感動してしまった。
あれ、ツンデレマジック?
帰ってから杉戸浴場の公式Twitterを見てみたら「愛想よりも清潔がモットー」「日本一愛想が悪い風呂屋の女将」の文字があり、納得した。
(女将、入院しとったんか、大丈夫か)
Twitterのプロフィール文にある
「愛想より清潔」がモットー。
この潔さには逆に惚れてしまう。
お客に媚びを売らない感じが信用できる。
筋の通った商売をしているから
地元の常連さんにも愛されているし、
変なお客さんも寄りつかないのだろう。
一宮市では、他県の例に漏れず銭湯の閉店が続き、現在では杉戸浴場を含め2軒しか営業していない。
名古屋や一宮市に行く機会があったら、
名物の大女将に会いに行ってみてはいかがだろうか。
気をつけるべきことは「ハキハキと大きな声で受け答えをすること」と「裸足で土足ゾーンを歩かないこと」(普通やらない)だ。