見出し画像

毎日400字小説「中三の夜」

 塾の帰りに告白された。アニメの話が止まらなくて、別れ道の公園のところで自転車を止めてさんざん盛り上がり、「やべ、こんな時間」「ママからライン来てた」なんて、バタバタして、でも喉が渇いたので自販機でジュースを買い、一口飲んで落ち着いたところで言われた。「あのさ、付き合ってくれない?」
「え、どこ?」あたしは即答した。まんだらけ? アニメイト? ヨッシーが自分のジュースも開けず、微妙な顔で見てくるので、あーと気づいた。あーやっちゃった。ヨッシーは、両手で、卒業証書の筒でも持つみたいに缶を持って、もじもじしている。何で言っちゃうかなあ。あたしはかすかな怒りを覚える。大柄で、温厚なクマみたいなヨッシー。彼はあたしにとって、アニメの話が出来る相手であって、それ以上でもそれ以下でもなかった。
 気をつけてたのにな。あたしはジュースをもう一口、ぐびっと飲む。「ごめん」鼻の奥がツンとしたのを、炭酸のせいにした。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?