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毎日400字小説「母になってはいけない人」

「これでJの愛を独り占めできる」と、印の浮き出た検査薬を当たりくじのように握りしめた愛奈は、一カ月後、浮気癖の治らない、というか、愛奈が多々ある浮気のうちの一つだった男に、ゴミ屑のように捨てられた。「この子が生まれたら変わるかもしれない」だんだん膨らんでいく腹を愛おし気に撫で暮らして九カ月、生まれたばかりの赤ん坊を抱いて、ストーカーまがいにつけ回して迫った復縁は、しかしもちろん叶わなかった。途方に暮れる愛奈を支えたのは我が子の笑顔だ。温泉を掘り当てたがごとく沸き上がる母性に加え、クズ男でも大好きだったJの遺伝子を持つ子供が、かわいくないはずはない。この子のためならなんだってできる。そうして身を粉にして働くうち、勤務先の風俗店の客と恋仲になった。優しくお金持ち、さらに子供をかわいがってくれるという奇跡的な男だった。愛奈は男をますます愛した結果、子供をベランダから放り投げた。我が子に嫉妬したのだった。

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